保存期間ギリギリの缶飯で割りばしが折れた
「上手く流された気がする」
ホムラ国のとある港町にて。
新大陸を目指すための大型船を前に、どうしてこうなったと考えるカオルさん。
地獄から逃げた先にも地獄しかねえのさ(某黒い剣士)
「貴方がごねると私の仕事が増えるので大人しく流されといてください」
「酷い!?」
一方物資の確認しつつ無慈悲に本音ぶっちゃけるローマンさん。
皇帝陛下に押し付けたはずの日本からの輸入保存食の管理について丸投げ帰されたのでちょっとご機嫌斜めです(自業自得)。
航海についていくわけでもないので、いくら管理を徹底するように通達しても後から員数揃わなくて問題になるやつです。
ちなみに某有名なパック系のお米は加熱しなくても食べられますが、実は加熱してない状態だとでんぷんが人間には消化できない状態なのでおススメできません。
「カオルー! 網の用意してもらえた?」
「伝えてはおいたけど」
「用意しましたよ。注文通りに同行する人魚さんと同じ数と予備も一応用意はしましたが、漁にでも使うのですか?」
網と言えば漁ですが、人魚が網を使って魚をとるのかと首を傾げながら聞くローマンさん。
やったらやったで周囲の魚を根こそぎとってしまいそうです。
「ううん。泳ぐのに飽きたら船にひっかけてハンモック代わりにするの」
「それでいいのか人魚」
船にひっかけた網で運ばれる人魚。
はたから見たら捕獲されたようにしか見えません。
あと船の速度によっては網が凄い食い込みそうです。
「本当に大丈夫かこいつら」
「まあうち(フィッツガルド)はほぼ出資だけで船員の殆どはホムラの人間で武士の人も多いので、極限状態にでもならない限り規律は守られるかと」
「武士と一言に行ってもピンキリなんだよなあ」
戦国時代の戦ってえげつないのもあるなあと思ってたら、時代を遡るほどに修羅と化す武士とかいうバーサーカー。
一体ホムラ国の武士が日本基準でどの時代の武士に相当するのか注目が集まります。
なお以前告った相手の首を軽率に落とそうとする猫耳女子高生侍。
「アンカーも輸送していますので、転移魔術の使用に問題がないようならこちらからも定期的に人員と物資は派遣します」
「問題ないと良いなあ」
それ絶対問題出るやつじゃんとは本当にそうなりそうなので言わないカオルさん。
しかし予想通りにというか、船のアンカーを目的地に転移魔術を使ったところ、目的地座標が魔術が発動した瞬間に設定されていたため既に船が通過した海に着水することになった憐れな実験参加者たち。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「船と言えばカレーだけどある意味密室でカレー食べるとかテロでは?」
「観光ではないのですから全員食べるのはカレーでしょう」
職場でカレーを食べるカレーテロについて思いを馳せるアマテラス様と、仕事で船乗ってるような人間のメニューが一人一人違うわけがないだろうとつっこむツクヨミ様。
あとたまに勘違いされていますが、海自はともかく自衛隊全体がそんな毎週のようにカレー食ってるわけではありません。
「自衛隊のレーションは美味しいって聞くけど実際美味しいの?」
「恐らくは。客観的な情報としては、カンボジアでPKO参加国を集めて戦闘糧食コンテストというものが行われましたが、そこで自衛隊のレーションが一位になったそうです」
「なんでPKOでそんなコンテストやってんの」
私にも分からん。
でも実際パック飯の中にはカレーは勿論のこと親子丼やハンバーグなどもあり種類は豊富で、一般のレトルトと遜色ない味です。
ちなみにたまに「自衛隊が被災地で冷たいご飯食べてる!」とか言われていますが、パック飯の類は水を入れたら発熱する加熱材とセットになってるので、余程急いでいて忘れたとかでない限り冷たい飯ばっかり食ってるわけではありません。
「へー便利そう。それって一般人でも買ったりできるの?」
「今は一般用に向けてパッケージだけ変えたものが販売されていますね。逆に言えば一般向けでないものが出回っていたら転売品なので手を出さない方が無難です。まあ最近は『転売禁止』と書かれているそうですが」
実は地味に定期的に問題になっている自衛隊員による戦闘糧食の転売事件。
転売は言語道断ですが実際食べきれなくて余るレーションも多いので処分に困るケースも。
「へー、セット販売もあるんだ。あ、クッキーまでついてる」
「加熱材も別売りされていますね」
早速購入してみようかと調べてみるアマテラス様と、割と興味があったらしく一緒に覗き込んでるツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。