多分みんなもうゆるキャラだと思ってる
「他の大陸に魔族っておるん?」
「いきなりどうしたの」
魔王様の御座す魔王城にて。
最近魔界の主要事業となっている宅配業務の報告書を見ていた魔王様が不意に何か言い出して、ミラーカさんが訝し気に聞き返しています。
魔界の主要事業が宅配業務ってもうこれ分かんねえな。
「いや新しい大陸が発見されたらしいんやけど。そこで魔族っぽい何かが問題起こしたら何故か私らのせいにしそうな奴らがおるやん。誰とは言わんけど」
「そうね。誰とは言わないけど」
相も変わらず定期的に魔王城攻略に乗り込んでくる量産型勇者たち。
でも攻略してる本人たちも面白トラップに夢中になってて依頼された本来の目的忘れてます。
「まあ流石に無理があると思うわよ。現に魔界関係ない魔物が何かやらかしても私たちのせいにされてないでしょう」
「ああ、確かにその辺りは結構理解あるねえ。まあ実際竜王山の竜とか完全に管轄外やし制圧もできんからこっちのせいにされても困るけど」
実は魔界の魔族も手出しを控えてる竜王山。
そんなところに単身で殴り込みをかける人間がいるらしい(複数)。
「あとミラーカとか親父さんって新大陸まで飛んでいける?」
「私たちが何なのか忘れてない魔王様」
唐突な魔王様の問いに呆れながら返すミラーカさん。
一般的に吸血鬼は流水が苦手なので、海の上もダメだとされることが多かったりします。
つまりグラウゼさんが自力で飛んでいかないにしても転移魔術の座標をうっかり新大陸とかにしたら、初登場で焼かれた時みたいにのたうち回りながら飛んでいきます。
「なんで新大陸までなのよ」
「いやウェッターハーンのお嬢さんから新大陸まで空輸できる魔族おらんかなあて聞かれたんやけど」
「それなりに大きくて体力のあるグリフォンあたりなら行けるんじゃないかしら」
ミィナさんに乗せられて新大陸まで事業拡大する気満々な魔王様。
というか飛んでいける魔族が居るならフィッツガルドとホムラが危険をおかして航海する必要性が薄れるのでは……?
か、海運が有効な場面もあるから航路の開拓はどのみち有用だから。
今日も魔界は平和です。
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一方高天原。
「これ異世界で私よりヤタガラスの名前が売れてない?」
「カ……カァ」
ヤタガラス様をシンボルにした魔界の宅配事業を見て漏らすアマテラス様に「いやそんなことありませんよ」と言ったかどうかは定かではありませんが返事をするヤタガラス様。
何度も無茶ぶりされているのに扱いがおざなりにならない健気な態度です。
「実際売れてますね」
しかしその気遣いを粉砕する流石のツクヨミ様。
実際現代日本でも広報にゆるキャラが有効なのは確かで大量発生してるので仕方ありません。
「いっそ私がゆるキャラに……?」
「何を血迷っているんですか。いや探せば居そうなのが日本ですが」
そう思い「ゆるキャラ アマテラス」で検索したところ、ゆるキャラという名の全くゆるくない特撮の怪人みたいなマスコットキャラクターがトップに出てきた件。
一瞬検索ブレかと思いましたが、間違いなくゆるキャラとしてとあるグランプリに登録されていました。
ゆるキャラとは……?
一応名前の漢字の読み方がそれっぽいだけで正式な読み方は公開されてないので、多分アマテラス様とは関係ありません。
「ヤタガラスが元ネタになっているゆるキャラは居ますし可愛いのが多いですね」
「おのれヤタガラス」
「カァッ!?」
人間が勝手にやってることなのに何故かアマテラス様に嫉妬され困惑の声をあげるヤタガラス様。
カラスよく見ると結構可愛いからね。でもゴミ置き場あさるのは勘弁な。
今日も高天原は平和です。