前世の記憶がとか妄想したことない人だけ石を投げなさい
「なんだこの状況」
普段なら余計なことは言わないようにしているものの、思わずつぶやいてしまったカガトくん。
「さて。久しぶりですね加賀くん」
「なんだ。またあんまり家に帰ってないのか安達さん」
正面に座るのは、家主な安達くんと外務大臣な柳楽くん。
狐と狸による突然の面接にカガトくんも「俺なんかやった!?」ビビりまくっています。
「おぬしらカガトが怯えるからその胡散臭い笑みをやめい」
一方一応は師匠としての自覚があるのか、保護者としてカガトくんの隣に座りおっさん二人の態度を非難するリィンベルさん。
これにはカガトくんも女性恐怖症がやわらぎ「師匠……」と尊敬の目を向けています。
新たな脅威を前に恐怖を忘れたとも言う。
「まあそれほど緊張せずとも。来年度からカガトくんが通う学校についての簡単な説明ですよ」
「え? そんなことをわざわざ直接」
「おまえさんはちょいと特殊な立場だからなあ。あんまり情報が漏れないようにしたいわけだ」
フィッツガルド側が「おう。こいつはもううちの身内やで」と主張しまくるせいで、日本人なのに扱いが地味に面倒になっているカガトくん。
というか実際ヴィルヘルミナさんの臣下だし本人も続けるつもりなので、国籍は日本だけどほぼ完全にフィッツガルド側の人間です。
本人がその辺りの事情に疎く全く自覚がありませんが。
「とりあえず以前まで貴方も面識があるローマンさんたちが通っていた学校なので、教師や生徒も異常事態には耐性があります」
「異常事態」
「あと警護の人間がつくが、基本は視界に入らないだろうからおまえさんは気にしなくていい」
「警護」
耳慣れない単語が続出し、順調に上がっていくカガトくんのストレスメーター。
でも対応としては妥当なので文句の言いようもありません。
「……助けて師匠」
「そうじゃぞ。いざとなれば魔術で身を守れるこやつにそれほど警護はいらんから監視程度でいいじゃろう」
「違うそうじゃない」
リィンベルさんに助けを求めてみたものの、明後日の方向に出される助言。
もうおまえは一般人じゃない諦めろん。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「でも学校に居たら突然テロリストが襲ってきて撃退とか誰しも一度は考えるよね」
「学校行ったことないのに何故そんなことを考えたんですか」
何か言い出したアマテラス様と冷静につっこむツクヨミ様。
一部の人が黒歴史に悶絶するのでやめてさしあげろ。
「でも最近は物騒になってきたしあながち的外れな考えでもないんじゃない」
「まあ一部の発展途上国では学校がテロリストに襲撃され生徒が全員誘拐される騒ぎも起きていますが」
「ごめんなさい」
「何故謝るんですか?」
軽い気持ちで言ってみたことが実際起きていたと知り思わず謝るアマテラス様。
流石に銃火器で武装した集団とか教師ではどうしようもありません。
「まあ日本ではそんな集団は早々出てこないでしょうし、最近では刺股の講習を学校や銀行などの職員が受けることも多いそうですね」
「ええ。刺股にそこまで制圧力あるの?」
「基本は複数人で押さえつけるものですし、連携して催涙スプレーなどで威嚇するそうです。戦いは数です姉上」
「いやそりゃそうだろうけど」
そもそもの目的は警察が来るまでの時間稼ぎなので、積極的に不審者に突撃するのは控えましょう。
状況にもよりますが一番いいのは逃がし逃げることです。
「むしろあの魔術師の子って小心者だから心配するなら過剰防衛の方じゃない?」
「まあその方面を心配しての警護でもあるのでしょう」
警護(やりすぎ防止)。
今日も高天原は平和です。