腕立てが辛い人は膝をついた状態から始めよう
「うーん」
メルディア王国の王宮の食堂にて。
グラタンを食べながら何やら考え込んでいるオネエ。
オネエが悩んだりしてたら配下の騎士たちが我先にと話を聞きに来そうなものですが、オネエは本当に悩んでいるときは表には出さず、目に見えて悩んでるのは大抵くだらないことだと知れ渡っているので放置しています。
「やあユキ。何を悩んでいるんだい」
一方くっだらねえことで悩んでいるであろうことを熟知していながら、プリン片手に暇つぶしに絡んでいくハインツ王子。
最近食堂で堂々とプリン食ってる姿が頻繁に目撃されているので、一部からプリン王子とか呼ばれ始めていたりしますが本人は知りません。
英訳したらプリンスプリン。
「ちょっと殿下ったらまたプリン?」
「休憩だよ。頭を使うと甘いものが欲しくなるだろう。それで何を悩んでいるんだい」
「最近竜王がソフトタッチしてくるようになったのよね」
「ソフトタッチ」
なんか竜王に付属する動詞としては不似合いなものが飛び出し思わず口に出すハインツ王子。
そもそもそんな頻繁に竜王に会いに行ってんのかよというつっこみは今更なのでしません。
「なんかこう。犬が飼い主をうっかり怪我させちゃった後みたいな慎重さを感じるのよね」
「犬て。でもそれだけ相手がユキを傷つけまいとしているということだろう。何か出会い頭にやらかしたとか」
「記憶にないわねえ。大体私だってそれなりに頑丈なんだから、ちょっとやそっとじゃ傷付かないのに」
そう言うオネエですが、流石のオネエも竜王に全力で攻撃されたら致命傷はもらいます。
それでも普通なら高速で車両にぶつかった人体みたいにバラバラになるので、オネエの耐久力はおかしいですが。
「まあ少しは慣れてきたってことだし、このまま懐かないかしら」
「なんか最初と目的が変わってないかい?」
供物捧げて信仰対象にしようという話だったはずが、いつの間にか目的が餌付けになっているオネエ。
餌やってたら愛着湧くからね。仕方ないね。
今日も異世界は平和です。
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一方日本。
「ふっふっふ」
安達家のリビングにて。
隠居宣言しながらも体を鍛えることはやめず、逆立ち腕立て伏せをしているグライオスさん。
いつもなら筋トレは外でやるのですが、今日は大雨なので仕方なく室内トレーニングです。
逆に言えば横殴りの雨で窓も開けられないのに熱気と汗をまき散らすというテロ行為です。
せめて自室でやれ。
「……今ならあの白銀の竜に一矢報いることができる気がする」
「間違いなく気のせいじゃから彼方に戻っても喧嘩売りに行くのはやめい」
未だに竜王を殴ることを諦めていないグライオスさん(ソフトタッチの元凶)と、呆れながら止めるリィンベルさん。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「ツクヨミI字バランスできる?」
「仮にできるとして誰得なんですかそれは」
PC眺めながら何か言い出したアマテラス様につっこむツクヨミ様。
つっこむツクヨミ様と書くとつっこみ様と誤読しそうになりますが、大体合ってるので深く気にしてはいけません。
「いや最近ネットでI字バランスが流行ってるみたいだから、ここは神々の威厳を見せつけるために参戦すべきかなと」
「逆に威厳が駄々下がりすると思うのですが。それに私やスサノオがやるよりも姉上がやる方が目に優しいのでは?」
「私の関節がそんなにやわらかいわけがないでしょう!」
「いや威張って言われましても」
実演しようとしたものの、足が半分も上がってない上に膝が直角に曲がっているアマテラス様を残念そうな目で見るツクヨミ様。
実際I字バランスは体操選手などが普段から訓練をつんでいて初めてできるものなので、安易に真似するのはやめましょう。
下手すると色々ヤバいものが切れます。
「スサノオならオオクニヌシに踵落としをくりだしていたので出来るでしょうが」
「ムキムキマッチョのI字バランスって需要あるの?」
あるかないかと言えば多分ある国日本。
今日も高天原は平和です。