インド人もびっくり
「あ、店長。ちょっと日本に行って来るので休暇もらえますか?」
「なんて?」
ドワーフ王国にある飲食店にて。
店員兼料理人見習いなデンケンさんからの突然の休暇申請に、ジュウゾウさんも意味が分からず思わず聞き返しています。
「いえねえ。日本と交渉を進めるにあたり人手が足りないそうですが、あまり陛下の下から信用できる人間を離すと足元をすくわれそうなので、年寄りが冷や水差しに行こうかと」
「やめて! 平和な片田舎の店で都会の物騒な政治問題を暴露しないで!」
「なんで乱暴された生娘みたいな口調になってんだい」
デンケンさんの言葉に両手で顔を覆いながら叫ぶジュウゾウさんと呆れるバーラさん。
根っからの小市民だからね。仕方ないね。
「あと知り合いのお気に入りが厄介ごとに巻き込まれないか確認しておきたいんですよね。いずれ娘になると思ってたんですが、そちらの縁が切れても親友の娘には変わりありませんし」
「さらりとドロドロした貴族特有の人間関係が!?」
「アッハッハ」と笑いながら言っているデンケンさんですが、ジュウゾウさんの方は一体どんな修羅場が発生したんだと慄いています。
ちなみにその修羅場になった二人ですが、現在「まだこの国の人間なのだからきびきび働きなさい!」「えー?」と割と仲良くやっています。
「まあやることやったらすぐ帰ってきますよ。僕がこの店にいるのは、馬鹿な貴族が好き勝手しないための抑止力的な意味もありますし」
「初耳なんですが!?」
そうは言うものの、そういえば話が通じない貴族らしき人たちが来ると、デンケンさんがこそっと話をして追い返してくれてたなあと今更気付くジュウゾウさん。
ちなみにデンケンさんの手があいてない時は、偶然居合わせたメルディアの騎士たちがやんわりと牽制したり、オネエが出撃したりしています。
「いろんな人に支えられてるんだねえ、この店」
「ソウデスネー」
バーラさんに綺麗にまとめられたものの、そもそもタダの店になんでそんな頻繁に脅威がやってくるんだよとダメージを受けるジュウゾウさん。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「インドに進出したカレー店結構好評らしいね」
「やはりインドのものとは別物なのがよかったのでしょうか」
インドにおける日本カレーチェーン店の評判を見て、我が事のように嬉しそうなアマテラス様と冷静に分析するツクヨミ様。
ちなみにインドの事情に考慮し、やはり牛肉と豚肉は使用していないそうです。
「まあ日本にだってインド人の店結構あるもんね。味覚的にはそれほど差異がないのかな」
「ああ。日本にあるインド料理店をやっているのは、殆どがインド人ではなくてネパール人ですよ」
「なん……だと?」
今までインド人だと思っていた人たちがインド人じゃなかったと知り驚くアマテラス様。
嘘やん。店内の装飾とかめっちゃインドやん。
「え? 何でネパール人?」
「ネパールからインドに料理修行に行く人が多いそうですよ」
「いやそれはそれとして何でインド人は日本に来ないの?」
「詳しくは知りませんがカースト制度のせいだとか。海外に出られるのは上位カーストの人間だけですが、その海外に出られる上位カーストの人間はわざわざ他国に出稼ぎで料理店開いたりしないそうです」
「ああ。それがあったか」
そういえばそんなものあったなあと思いだすアマテラス様。
実際インドにおけるカーストのあり方は、日本人にはちょっと想像しきれないくらい厳格で厚い壁です。
「本来なら学校で学園カーストとか気軽に引用できるもんじゃないよね」
「引用するも何も姉上は学校に行ったことなんてないでしょう」
しみじみとした様子で何か言ってるアマテラス様とつっこむツクヨミ様。
今日も高天原は平和です。




