暑すぎて蚊がいない
「鬱だ……」
「君面倒臭いね」
フィッツガルド帝国の帝都のとある喫茶店にて。
何故か落ち込んでいる様子のカガトくんと紅茶飲みながらアップルパイに舌鼓をうつローマンさん。
ちなみにアップルパイは主にアメリカで人気のある料理ですが、歴史自体は古く中世時代頃にはイギリスなどでポピュラーなデザートだったそうです。
美味しいけど市販のやつ何であんな生地がぽろぽろ落ちるん?
「ついに日本に帰ることになったというのに、何が不満なんだい?」
「……お嬢様と離れ離れに」
「そこかよ」
最近友情すら感じ始めてたカガトくんがそこまでヴィルヘルミナに依存していたとは思わずつっこんでしまうローマンさん。
でも実際カガトくんが完全に女性不信に陥らず踏みとどまったのはヴィルヘルミナさんの功績が大きいです。
「まあ確かにヴィルヘルミナはいい女だけれどね。そこまで心酔するとは物好きだね」
「……実はローマンさんがお嬢様に恥をかかせたと聞いて毎日呪ってました」
「うん。それ君がやると洒落にならないからね?」
魔術師から呪われていたと聞き、もしかして日本に行ってから散々だったのはそのせいかと一瞬思ったものの、いやアレは自業自得だと考え直すローマンさん。
オイ、こいつ隙がなくなってるぞ誰だ。
「考え方を変えなよ。離れている間に自分を磨いて惚れさせるとか」
「え? 俺に惚れるお嬢様とか解釈違いです」
「君面倒臭いな」
ヴィルヘルミナさんを神聖視しすぎて拗らせちゃってるカガトくん。
ヴィルヘルミナさんが聞いたらいつもの凛とした空気をかなぐり捨てて崩れ落ちるかもしれません。
「いや。真面目に距離とった方がいいと思うよ君たち。いくらなんでも依存しすぎだ」
「お嬢様が居ない人生なんて死んだ方がマシです!」
「ダメだこいつ」
早く何とかしないと。
そう判断し、日本に戻らせたらカウンセリングを一刻も早く受けさせるよう要請する決意をしたローマンさん。
コメディーだからスルーされてるけど精神状態ヤバい子だからね。仕方ないね。
今日も異世界は平和です。
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一方高天原。
「夏休みが終わってしまうー」
「いや夏休みとかないでしょう高天原」
畳の上で転がりながら何か言ってるアマテラス様とつっこむツクヨミ様。
神様は年中無休ですが神様なので問題ありません。
あと仮に夏休みがあったらこのアマテラス様は間違いなく宿題をため込みます。
「それにほとんどの学校では、休校分を取り戻すために既に新学期が始まってるか補助学習をしてますよ」
「こんなに暑いのに?」
「下手に外で遊ばせるよりはいいのでは。最近の猛暑の影響で学校にもエアコンを設置するよう働きかけがありましたし」
「え? 高天原学校より遅れてたの?」
ちなみに去年の九月時点で普通教室に限定したエアコン設置率は八割ほどですが、予定では2020年までにほぼすべての県で設置率が80%から100%を達成するそうです。
……羨ましい。
「ちなみに元々設置率が高い都道府県は東京など比較的財政に余裕がある県が多かったそうです」
「何それ世知辛い」
やはり世の中金なのかとある種の真理に辿り着くアマテラス様。
そういえば高天原に設置したエアコン買う金どっから出て来たんだとか、そもそも人間界で使う金を神様がどうやって稼いでんだとか細かいことを考えてはいけません。
きっと神社にエアコン奉納した家電業界の人とかいたんです
と冗談で書いた後に調べてみたら、本当に神社にエアコン奉納した企業が居たという事実(神社の空調用)。
今日も高天原は平和です。