やめられない止まらない
「ただいま帰ったでー」
「おかえりなさいませ」
魔界にて。
里帰りを終えて戻ってきた魔王様と、頭がないけど頭を下げるデュラハンさん。
「やれやれ。やっと戻ったか」
そして相変わらず「魔王代理」の看板ぶら下げて猫まみれになっていたグラウゼさん。
なお魔王様の里帰り中にトラップを突破し、猫まみれな魔王代理というレア映像を拝めた冒険者は出ませんでした。
「グラウゼもありがとね。お土産にCHI〇ちゅーる買ってきた」
「それはありがたいがとても足りないだろう」
「大丈夫。120個入りを5個買ってきた」
「むしろ120個入りを買う一般家庭は存在するのか?」
目の前にでんと積み上げられる箱を見ながら言うグラウゼさんですが、実際売ってるのだから仕方ありません。
一応賞味期限は二年ほどあるので一日一本の消費でも余裕で間に合います。
「いやーそれにしても。私普通の人間やなかったんやねえ」
「何を今更」
「いやこうデータとして突き付けられたら納得せざるを得ないというか」
ちなみにその突き付けられたデータというのは「何で見た目からして人間じゃないのにデータは人間なんだよぉ!?」という現代科学の敗北を記したものです。
あまりにも異常がなさすぎるのが異常という理不尽に、医者や学者たちは泣き、魔王様も納得するしかありませんでした。
「というかグラウゼとかはどうなん? 吸血鬼って元人間とかの場合もあるけど」
「私たちは生まれながらに吸血鬼なので闇の眷属や精霊に近いな」
「何それカッコいい」
そういう意味では、この作品の吸血鬼はアンデッド(死にぞこない)というよりはイモータル(不死者)に近い存在です。
まあ吸血鬼は民間伝承が多すぎて設定ブレブレなのでこまけぇこたぁいいんだよ。
「グラウゼ日本におったのに健康診断とか受けんかったん?」
「私は逆に人間とデータが違い過ぎて『どこが基準だよ!?』と理不尽な罵声をあびたのだが」
「あーうん。理不尽やな」
おまえの存在が理不尽だよとは言わずに、むしろその罵声浴びせた医者よく無事だったなと思う魔王様。
今日も魔界は平和です。
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一方高天原。
「ち〇ーるって食いつき良すぎない? 何かヤバいもんとか入ってない?」
「何かヤバいものが入っていたら販売停止されていますよ」
ち〇ーるを差し出すアマテラス様と、それを物凄い勢いで舐め倒すぶち。
その普段とは違い過ぎる様子に、アマテラス様も喜ぶより先に心配になってきたようです。
「実際姉上と同じような心配をした消費者から問い合わせがあり、成分分析などが行われているんですよ。結果は何か薬物が入っているわけでなければ、塩分などが過多なわけでもなく、マタタビも入っていません」
「じゃあ何でこんなに反応いいの?」
「美味しいからではとしか」
そんな会話をしている二柱をよそに、食べ終わるとしれっと踵をかえして去っていくぶち。
最早貴様に用はないと言わんばかりです。
「あくまでもおやつなので、過剰摂取にならないよう注意する必要はありますが」
「でもぶちってたまに自分で鳥やら何やら狩ってくるから栄養バランス整えようにも……」
「そういえばそうでしたね」
高天原でも自重せず狩りをするので最近神猫化している疑惑が出ているぶち。
今日も高天原は平和です。