秋の幸まとめて炊き込みご飯
魔王城。
本来なら魔王様がいる魔界の中心ですが、現在は魔王様が里帰り中なので魔王城なのに魔王が居ません。
そのため風雲魔王城へ挑戦する冒険者もいなくなるかと思われましたが、もはや目的が魔王討伐ではなくトラップ突破になっているので今日も元気に冒険者たちは阿鼻叫喚しています。
「それで何故私が魔王代行なのだ」
その魔王城の玉座の間にて。
魔王様が本来座る玉座の横に、ちょっと派手めな椅子を置き「魔王代行」と書かれたプラカードを首から下げて座っているグラウゼさん。
何故自分が魔王代行なのかと疑問に思う前に今の恰好に疑問を持つべきですが、日本で角が削れて丸くなるついでに色々落としてきたのですんなり受け入れてしまっています。
なお仮にプラカードがなかったとしても膝の上やら頭の上やら肩の上に猫が乗り猫塗れ状態なので威厳はありません。
「幹部の中から選ぶと序列など問題が発生しますので」
そしてそんなグラウゼさんの疑問に答えるデュラハンさん。
監視していたマサトくんが日本に帰ったので無事に魔界へと帰還。ストレス源から解放されたため以前より生き生きとしています。
「これでも私は隠居した身だぞ。それに一時的な代行にそれほど神経質になる必要はあるまい」
「それはそうなのですが」
グラウゼさんの言葉に言葉を濁すデュラハンさんですが、ぶっちゃけ上位の幹部の中でもデュラハンさんはどちらかというと補佐タイプ。ミラーカさんは黙っていれば有能だけど愉快犯。サイクロプスさんは脳筋と、見事にトップの代行をできそうな魔材がいなかっただけだったりします。
デュラハンさんは頑張れば行けそうですが、まだ胃壁の修復が終わってないので見送られました。
「まったく実力主義を否定するつもりはないがその実力の内実が偏っていては意味がない。私も後進の教育に力を貸すべきか」
「それもよろしいかと」
足元にすり寄ってきた黒猫を抱き上げながら言うグラウゼさんに「やった仕事が減るぜ」と思いつつも顔には出さない流石のデュラハンさん。
今日も魔界は平和です。
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一方高天原。
「食欲の秋だから焼き芋食べたい」
「秋じゃなくても何かしら食べてるでしょう姉上は」
アマテラス様の言葉につっこみつつも以前と同じように懐から焼き芋を取り出すツクヨミ様。
ツクヨミ様秋には焼き芋を懐に常備している説。
「それに秋といえばスポーツの秋というのもあるでしょう。体育の日も十月ですし」
「あーでも芸術もあるし読書もって何で秋ばっかりみんな活動的になるの?」
「今まさに暑さから解放された姉上が活動的になっているでしょう」
「なるほど!」
ツクヨミ様の言葉に素直に納得するアマテラス様。
ちなみにスポーツ、芸術、読書などが秋に適していると言われ始めたのはそれぞれ別のきっかけがあるのですが、詳しく書くのは面倒くさいので各自で調べてください。
……いやマジで一つだけならともかく全部説明するとか長くてむりぃ。
「まあ食欲の秋もなんとなく分かるよね。実りが多い時期だし」
「それもありますが。夏が終わり体調が戻るとか、気温が下がり基礎代謝が上がるとか、冬に備えて体が栄養を欲するとか食べる側の都合もあるとされていますね」
「つまり秋に食べまくるのは必然だった?」
「その必然を良しとするならバランスを取るために冬の食事を減らしてもよろしいですか?」
「この飽食の時代に季節で食べる量変えるとかナンセンスだよね!」
冬は冬で美味しいもんあるのに減らすとか鬼かよという言葉は引っ込めて前言撤回するアマテラス様。
今日も高天原は平和です。