貧乏神を押し付け合ってリアルファイト
「……むう?」
日本の安達家にて。
リビングで問題集を広げ何やら悩んでいる未来の警察官なマカミさん。
余程悩んでいるのか耳は垂れ下がりもふもふ尻尾が忙しなく動き回っています。
「どうしたんですかマカミさん」
「エルテか。いや、この数学の問題なのだが」
そんなマカミさんを発見し質問する学校帰りのエルテさん。
どうやらマカミさんは警察官の試験に備えて勉強していたようですが。
「すすむくんの徒歩での移動速度が時速1300キロメートルになるのだが、人間の子供がそんな速度で移動することは可能なのだろうか」
「子供じゃなくても不可能ですから計算ミスを疑いましょうよ」
ものすごく下らないことを真面目に考えていたマカミさんにつっこむエルテさん。
人間が生身で音速を越えたらどう考えても死にます。
一応成層圏からパラシュートでダイビングし落下速度が音速を越えても着地に成功した事例はありますが、宇宙服を着ていたからこその成功でありどっかの聖闘士でもない限り死にます。
「もしかしてマカミさん数学苦手ですか?」
「ああ。ただ覚えればいいだけのものと違って計算というのになれていないからな」
そういうマカミさんですが、まったく馴染みがないであろう地理やら歴史を覚えるだけで済むと言ってのけるあたり地頭の良さが伺えます。
桃太郎〇鉄がなければ即死(赤点)だった。
「私はむしろ歴史に出てくる人名とかまったく頭に入って来ないんですけど」
「そうか? 一度聞けば大体は覚えられるが」
「どんな頭してるんですか」
得意分野の違い故に互いが理解できないマカミさんとエルテさん。
今日も日本は平和です。
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一方高天原。
「数学って社会に出て何の役に立つの?」
「勉強嫌いの学生の言い訳みたいな発言をしないでください」
アマテラス様の発言を嗜めるツクヨミ様。
実際神様に数学が必要なのかはそれこそ神のみぞ知るので分かりません。
「世の中何がどう繋がっていて役に立つか分からないものですよ。例えばシャーロックホームズというお話がありますね」
「ああ、名探偵の」
「彼の推理の肝は数学や化学に基いた科学捜査です」
「マジで!?」
世界一有名な探偵と言っていいホームズですが、彼の推理は足跡の歩幅から身長を予測したり灰を調べて煙草の銘柄を突き止めたりと正に科学捜査の先駆けともいえる手法だったりします。
さらに驚くべき点は、ホームズの話が書かれた時代にはまだ科学捜査というものは確立されておらず、むしろホームズを参考にして科学捜査が発展したとすら言われていることです。
創作の探偵だからと言ってピ〇ゴラスイッチみたいな事件ばかり解決してるわけではないのです。
「得た知識に意味があるかどうかは本人にそれを使う意思があるかどうかだと思いますよ。勘というのは無意識に経験から判断しているとも言われていますし、知識が多くて困ることはありません」
「だからツクヨミは無駄に知識が多いんだね」
「明日から私は姉上の疑問には何も答えないので自分で調べてください」
「ごめんなさい!?」
にっこり笑顔で言い放つツクヨミ様を見て「やべえこれ静かにマジギレしてる」と察して慌てて謝るアマテラス様。
今日も高天原は平和です。