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汗をかくって素晴らしい

 ケロス共和国のとある田舎村。

 最近エルフたちが大量に移住してきて大統領のカルモさんが頭を抱えているその村にて、久しぶりにキレちまったフィデスさんに連行されたダークエルフたちが集まり何やら話し合っていました。


「とにかく、このままでは駄目だ」

『そうだなー』


 集まった数十人のダークエルフたちの前で、そう言って苛立たし気に机を叩くリーダーらしき若者のダークエルフ。

 それに何人かが頷き、何人かは上の空で対応しています。


「って、やる気あるのかおまえら?」

「いや。やる気はあるんだけど。俺この後隣の家の子に一緒に食事でもどうかって誘われてるんで先に帰っていい?」

「やるきねえじゃねえか!?」


 どうでもよさそうに言う他より髪が短めで体格もいい体育会系っぽいダークエルフにつっこむリーダー。

 やる気なんて自己申告でしか分からないのであてにしてはいけません。


「マジか!? おまえそれデートじゃないのか!?」

「ばっか。おまえ相手はまだ二十歳くらいの子供だぞ」

「その二十歳というのが人間基準か俺たち基準かで今後のおまえへの対応が変わるわけだが」

「子供だ子供! なんか懐かれてんだよ!」

「聞けよ!?」


 しかしリーダーそっちのけで、食事に誘われたイケメンダークエルフを質問攻めにする他のダークエルフたち。

 みんな若いからね。仕方ないね。


「とにかく! このままでは俺たちの復讐という目的が果たせない!」

「え? まだやる気だったのアレ?」

「てっきりもう諦めたのかと」

「なんでだよ!?」


 他のダークエルフたちに驚かれ逆に驚くリーダー。

 どうやら他のダークエルフたちは外の世界に出て人間たちに交じって農業やってる間に、復讐とかどうでもよくなったようです。


「一度始めたことは最後までやれってばっちゃんが言ってただろうが!」

「おまえさあ。いい加減婆ちゃん離れしろよ」

「もういい大人なんだからさあ」

「何で俺が聞き分け悪いみたいになってんの!?」


 そして一人でいきってるリーダーを優しく諭すダークエルフたち。

 優しさは時に人を傷つけるのでもう少し言葉を選んでさしあげろ。


「じゃあ俺もう行くから」

「俺も。今日はさっさと風呂入りたい」

「そういやエルフの若いのが一人風呂覗きで捕まったってよ」

「マジかよ。あいつら頭固いと思ってたのに案外やるな」

「待てよ!」


 そして話は終わったとばかりに部屋から出て行くダークエルフたち。

 なんかもうここまで来るとリーダーが可哀想になってきます。


「……」


 仲間へと伸ばしていた手をだらりと垂らし、項垂れるリーダー。

 背中に哀愁が漂っています。


「あれ? さっきまで人がたくさんいたような気がしたんですけど」


 そしてそこに現れる農業少女アスカさん。

 リーダー逃げて!


「っ、何の用だ」

「いえ。大した用事ではないんですけど」

「なら気安く話しかけるな!」


 気落ちした顔を見られまいと、アスカさんに背を向けて拒絶するリーダー。

 そんなリーダーにアスカさんは不思議そうな顔をしながらも、気にせず話し続けます。


「カレーを作りすぎたので一緒に食べてくれる人いないかなあと。ちゃんとエルフの人も食べられるように作ったので」

「よし。すぐ行こう」


 しかしカレーを食わしてくれると聞いて即座に態度を変えるリーダー。

 エルフにはちょろいやつしか居ないのか。


「やっぱりみんなカレー好きですよねー」

「ああ。あの料理は大地の恵みがつまっていると言っても過言ではない」


 そう言いながらうっきうきでアスカさんに付いていくリーダー。

 ちなみにアスカさんは相手がエルフだろうとダークエルフだろうと気軽に話しかけるので、実は密かに人気があったりするのですが。

 この件のせいで「リーダーが抜け駆けした」とまたしても孤立しかねない状況に追い込まれたのは別の話。


 今日も異世界は平和です。



 一方高天原。


「伯母上に相談があってきたのですが」


 スサノオ様の娘婿であり国津神の代表格とも言えるオオクニヌシ様が、頭を下げながらそう言いました。


「え? 相談? 何かな?」


 一方珍しく頼られてすっごい嬉しそうなアマテラス様。

 隣でツクヨミ様が生温かい視線を向けています。


「義父上をどうにか大人しくさせられないかと」

「無理だね!」


 相談内容を聞き即座に満面の笑みで言い放つアマテラス様。

 多分日本全国の誰に聞いても同じ回答しか得られないと思います。


「伯母上の言うことなら少しは聞くのでは?」

「聞くなら私は岩戸に籠ってないよ」


 高天原で暴れたことばかりが有名なスサノオ様ですが、その時アマテラス様も最初は弟のフォローをしていたのです。

 しかしスサノオ様はそんなアマテラス様の気遣いを粉砕し狼藉三昧。

 そりゃ岩戸にも籠もります。


「え? でもこの前お母さんに〆られてたよね。もう立ち直ってるの?」

「この間の続きをやるぞと組み伏せられて義父上が下を脱ごうとしたところでスセリに殴られていました」


アッー!


「スサノオも無駄にバイタリティがありますね」

「私なら一週間ぐらい凹むよあれ」


 末弟の無駄なメンタルの強さに呆れるアマテラス様とツクヨミ様。

 末っ子だから仕方ありません。


「でもスセリちゃんが止めればちゃんと言うことは聞くんでしょう? あとクシナダちゃん」

「止まることは止まるんですが、その後『よくもスセリを』と拗ねて報復に来るんですよ」

「めんどくせぇっ!?」


 告げ口したらそれを理由にまた来る。まんまいじめっ子な行動に呆れるアマテラス様。


「オーディンからグレイプニル借りて来て拘束しておこうか」

「スサノオなら力技で脱出しそうで恐いですね」


 そんなわけないじゃんと言おうとしたアマテラス様ですが、ある意味主人公補正のようなものがかかっているスサノオ様ならやりかねないと思い何も言えませんでした。

 今日も高天原は平和です。

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