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休んでたら勝手に決められている委員会

「というわけで、異世界間の門を開く魔法はほぼ実用化できました」

「そうかい。ご苦労だったね」


 フィッツガルド帝国帝都の皇帝陛下の執務室にて、やっと面倒ごとから解放されたと言わんばかりの笑顔でカガトくんが報告をしていました。


「ずいぶんと嬉しそうだねカガト」

「それはもう。やっと肩の荷が下りたってもんですよ」


 そもそもカガトくんは元はただの学生であり、根は小市民なツッコミ担当です。

 補佐程度ならまだしも凄いプロジェクトの責任者やらされるとか、学校行事で実行委員決めるときに誰も手を上げなくて終わらない終わりの会が開催されても絶対手を上げないカガトくんには精神的負担が大きすぎたのです。


「それと褒美としてお願いがあるんですが」

「おっ、君にしては珍しいね。なんだい」


 いつもなら褒賞上乗せにしようとしても「それを理由に次の無茶ぶりもってくるんでしょ!?」と完全警戒状態のカガトくんからのお願い。

 これには皇帝陛下も自分の器をかけて応えてやらねばなるまいと乗り気です。


「異世界召喚者の返還が始まったら俺を一番に帰らせてください」

「うん。無理だね」

「アハハ、そうですかあ……ハファッ!?」


 てっきり承諾されると思ったらあっさり拒否されて、驚きすぎたカガトくんの右の鼻の穴から鼻水が出ました。


「な、何でですか!? 俺今まで身を粉にして帝国のために働いてきたじゃないですか!? なんなら日本にこの帝国ブラックだって訴えますよ!」

「いやそれ割とマジで洒落にならないから勘弁してくれないかな!」


 これから友好関係を築きたい国相手に、この国他国の人間奴隷のように扱う鬼畜ですぜとかたれこまれたら関係悪化は確実です。

 でも実際人使いの荒さは日本人もビックリなブラックなのでカガトくんの訴えは割と正当です。


「いや、君が謙虚という名の小心者なのは今更だけど、もっと自分の立場理解してくれないかな」

「ただの学生です」

「寝言は寝て言おうか」


 この期に及んで自分がやったことの凄さが分かっていないカガトくんに、珍しく皇帝陛下から真っ当なつっこみが入りました。


「あのだね。現状君が一番異世界の門に詳しいし、万が一何かあったときの対処のために一番にするわけにはいかないくらい

分かるだろう。というか分かってくれ頼むから」

「だから他の人にも使えるように改良を」

「それでも一番対処ができるのは開発者の君だろう。あと異世界の門を開くなんてとんでも魔術を教えられる人間は少ないんだよ危険性的に」

「……」


 どうやら自分の置かれている立場がようやく分かったらしく、無言で固まるカガトくん。

 それを見てようやく納得してくれたかと安堵した皇帝陛下でしたが、次の瞬間カガトくんが爆発しました。


「……もうやだあっ!? 疲れたよ働きたくねえよ俺学生だよ何で厄介ごとバッカ背負わされるの何も考えずに友達と馬鹿やりたいよ、うわーん!?」

「……」


 泣いてます。ガチ泣きです。

 いい歳こいた男子が頭抱えて恥も外聞もなく泣き叫んでます。

 これには皇帝陛下も予想外ですな硬直状態です。


「何ですのこの叫び声は!? カガトどうしましたの!」

「うがあああっ!」

「ああ! 落ち着きなさい! 私ですわカガト!」


 しかしここでヴィルヘルミナさん登場。

 泣き叫んでるカガトくんを見てドン引きも硬直もせずになだめにかかるあたり流石です。


「何なんですの陛下!? カガトがストレス耐久試験に失敗した実験動物みたいになってますわよ!」

「いや比喩としてそんなものが出てくる君が何なんだ」

「うわーん!」


 ヴィルヘルミナさんが来てとりあえず大人しくはなったものの泣き続けるカガトくんとカオスな執務室。

 外国の日本人観光客の取り扱いマニュアルで「ときどき安心させる必要がある」とか小動物扱いされている日本人の我慢強いけど繊細とかいう面倒くさい習性は伊達ではないのです。


 ちなみにカガトくんはしばらくしてから正気に戻りましたが恥ずかしすぎて狸寝入りに移行。

 その後ヴィルヘルミナさんに優しくケアされたので、また無駄に皇帝陛下への好感度が下がってヴィルヘルミナさんへの忠誠度が上がりました。


 今日も異世界は平和です。

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