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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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水の都というロマン

 アルジェント公国。

 最近人魚とマッチョが棲みつき始めて有名になってきているこの国ですが、相変わらず財政はいっぱいいっぱいで宗主国であるメルディアにおんぶだっことなっています。

 というか人魚事業を始めて財政再建を成せたとしても「おまえいいもんもってんじゃねえか」とメルディアに持ってかれるのは目に見えていましたが、いつの間にか騎士の位を押し付けられていたカオルさんが抑止力となり何とか均衡を保っています。

 なお一連の流れにカオルさんは一切関与してないどころか自分が騎士になってるのも知らないので、オネエに「やるわね」と褒められましたが何で褒められたのか本人分かっていません。


「ふー。今日も大漁だな」


 そして相変わらず色々と間違ってる素潜り漁をしているカオルさん。

 漁果を乗せた小舟を漕いで自宅へと向かいます。


「しかしここも変な村になったな」


 そう零しながら、以前はあばら家のような家しかなかった村の姿を眺めるカオルさん。

 ウェッターハーン商会の援助を受けて開発の進んだ村は、区画整理され立派な石材建築の家が立ち並ぶ、ちょっとオサレな街へと生まれ変わり始めています。

 さらに特徴的なのは大公閣下が「人魚にも住みよい町づくりを」と張り切った結果、道と同じ規模と密度で水路が張り巡らされている点です。


 そんなの人間には使いづらいんじゃないかと思われそうですが、街のどこでも舟運ができるのは発展途上で大量の物資が生きかうこの村では便利ですし、今カオルさんがやっているように小舟に乗ったまま家まで帰れるので意外に好評です。

 ちなみに後日村の様子を見に来たガルディアの王妃殿下が「ヴェネツィアじゃねーか!」とつっこんだのは言うまでもありません。


「ただいまー」


 そうして小舟を自宅近くに繋ぎ、慣れ親しんだ我が家へと帰るカオルさん。


「おかえりなさい」


 そんなカオルさんを出迎える性格はともかく見た目は美人な人魚――ではなく、くたびれた中年のおっさん。


「帰れ」

「いや何で居るのかとか聞いてくださいよ!?」


 笑顔で言い放つカオルさんと涙目で縋りつく大公さん。

 仲がよさそうで何よりです。


「アンタが俺のとこに来るのって、何か厄介ごとが起きた時ばっかじゃないですか」

「だって他に頼れる人がいないんだから仕方ないじゃないですか! 何なら娘あげますから!」

「いらないっつってんでしょうが!?」


 どうやらまだ国を娘ごとカオルさんにあげることを諦めてなかったらしい大公さん。

 でもこんな戦国ゲーにおける足利家並につんでる国を貰うほどカオルさんも酔狂ではありません。


「いや、今日はカオルさんにプレゼントをしにきただけですから」

「娘をとか言ったら蹴りだしますよ」


 縋りついてくるおっさんを何とか引きはがし着席させ話を進めるカオルさん。

 大公さんが国主なのに威厳の欠片もありませんが、もうそういうキャラなので仕方ありません。


「どうぞ。爵位と領地です」

「お約束!?」


 国内で重要人物になっちゃった人を国に縛り付ける建前炸裂。

 土地とか貰っても、実は収入より納める税金の方が高かったりするので注意しましょう。


「いや本当に建前。建前でいいですからこの村の管理者をあなたということにしておきたいんですよ」

「あー、またメルディアの王子から横やりでも入ったんですか」


 話を聞いていて大体のことを察するカオルさん。

 割とやりたい放題フリーダムなハインツ王子ですが、配下のオネエは主君が道を外れたら反逆も辞さない系忠臣だと分かっているので、オネエの友人であるカオルさんには特に強く出られないのです。


「じゃあ名前を貸すだけで、特に何かしなくちゃいけないわけじゃないんですね?」

「ええそれはもう。細かいことは私がやりますので」


 完全に立場とやってることが逆になっていますが、大公さんはむしろ誰かの下についた方が実力を発揮するタイプなのかもしれません。


「分かりました。じゃあ貰うだけ貰っときます」

「ありがとうございます。このお礼は必ず致しますので」

「いや、いいですよ」


 このままではお礼を貰ってくれたお礼をとエンドレスお礼が続きそうなので、丁重にお断りをいれるカオルさん。

 それにちょっと残念そうな顔をしながら大公さんは帰っていきました。


「ねーカオル話し終わったー?」

「……居たのか」


 そして大公さんが帰るなり、隣の部屋のドアをもたれるように開けてべちゃんと床に着地するディレットさん。

 そしてそのままずりずりとカオルさんのそばへと移動しています。


「何か大事そうな話だったから、隠れて待ってたんだけど」

「おまえそんな配慮できたのか」


 この食う気はあるが空気は読めない人魚がそんな気遣いをしていたとは思わず、意外そうに言うカオルさん。

 普段が普段だから仕方ありません。


「ひどーい。夕食だって今日は私が準備手伝ったんだからね!」

「悪い悪い。じゃあ飯にするか」


 そう言ってぷりぷりと怒っているディレットさんをしれっと横抱きにしてリビングへと移動するカオルさん。

 今日も異世界は平和です。

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