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烏と兎(眉間)

「……」

「……」


 魔界にある魔王様の御座す魔王城。

 その魔王城の玉座の間にて、何か唐突に現れた三本足の烏を見て、魔王様はつっこむこともできずにお見合い状態に陥っていました。


「……(プルプル)」

「……」

「……(ブワッ)」

「泣いた!?」


 鳴いたのではなく泣きました。

 え? 烏って泣くの!? 烏は山に!?

 そんな風に大混乱しつつもなだめにかかる魔王様。


「えーと、多分やけどヤタガラス様やよな? 何かアマテラス様に伝言でも頼まれたん?」

「……(ふるふる)」

「えー……じゃあ何の用?」

「……(ブワッ)」

「ちょ、うさぎさーん! 助けてうさぎさーん!?」


 再び泣き始めるヤタガラス様を見て、同じ動物系神様なシロウサギに助けを求める魔王様。


「呼ばれて飛び出て!」


 そしてその助けに求めてどっかで聞いたことのあるフレーズを叫びながら現れるシロウサギ。

 若者どころか作者の同年代のおっさんどもも分からない絶妙な古さっぷりです。


「どうしたんですか魔王様……あっ」

「うん。何を察したん今?」

「さっきミラーカさんが珍しく真顔で出口に向けて全力疾走してたんです」

「なるほど」


 どうやらミラーカさんはヤタガラス様(太陽)の接近を感知して、いつもの余裕綽々なキャラを投げ捨てて逃走したようです。

 一見無様ですが、父親とは比べ物にならない危機回避っぷりです。


「じゃあやっぱりこの子ヤタガラス様やな。会話ができんからうさぎさん呼んだんやけど」

「なるほど。じゃあ失礼して」


 魔王様に説明されヤタガラス様と話し始めるシロウサギ。

 ちなみに太陽には烏。月には兎がいるという逸話から、烏兎と書いて月日や歳月を表したりします。


「ヤタガラスさんどうしました?」

「……カ……カァー……」

「え? 普通に鳴くの?」

「ぶぅぶぅ?」

「鳴くの!?」


 シロウサギのまさかの鳴き声につっこむ魔王様。

 兎の鳴き声ってどんなだっけと聞かれても思い浮かばない人は多いでしょうが、なんというか「ぶー」というか「ぎー」というか、とにかくそんな名状しがたき声で鳴くことは鳴きます。

 山でうっかり野兎でも捕まえようものなら「ギーギーギャー!」と断末魔の声のような叫びをあげてこちらのイメージを崩壊させてくるので注意しましょう。


「アマテラス様に運送事業のイメージキャラクターにしてもらってこいって無茶ぶりされたらしいです」

「え? 何? 宅配最大手に喧嘩売りに行けと?」


 それ以前に太陽の化身を魔界主導の事業でイメージキャラクターに使うのも問題があります。

 魔界には当然のようにアンデッド系の魔物もいるので、ヤタガラス様が近づいたら溶けます。

 あのミラーカさんですら素で逃げ出すのですからその威力が知れるでしょう。


 ちなみにトラップ担当のスケルトンさんは「あれー? 何か俺煙出てね?」と思いながらも監視を続行しています。

 種族的には下位ですが、本人のレベルが高いので割と平気なのです。


「うーん。まあイメージキャラクター作るのはいいかもなあ。分かった。ヤタガラス様使わせてもらうわ」

「!」

「ありがとうございますって言ってます」

「うん。それは何となく分かった」


 魔王様の承認を受けて嬉しそうに翼を羽ばたかせるヤタガラス様。

 でもよく考えたらマイナスがゼロになっただけで自分は何も得しないことに気付き、太陽じゃなくて月の化身あたりに鞍替えできないかと真面目に検討し始めるのでした。

 今日も魔界は平和です。

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