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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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水戸黄門ばりのお約束

 ドワーフ王国にある日本人が経営する食事処。

 各国の要人が集まる会議でのシェフという大任から解き放たれ、ジュウゾウさんが爽やかな笑顔で料理を作っているその店は、今日も多くのドワーフで賑わっています。


「おーい! カレーのおかわり頼む!」

「こっちはフライ盛り合わせだ!」

「お好み焼きの追加おくれー!」


 そして一度着席したら最後。満足するまで帰らないドワーフたちは次々と追加注文をしていきます。


「はいただいま!」


 そしてそんな店の中でドワーフたちの注文に応えているのは、店主のジュウゾウさんではなく小洒落た髭をたくわえた男性です。

 それなりに若い様にも見えますが、髭の貫禄のせいかそれなりに歳をとっているようにも見え、いまいち年齢がハッキリしません。


「店長。カレーとフライの盛り合わせ、それにお好み焼き追加です」

「了解。デンケンさん。オムライスできたからお持ちしてください」

「分かりました」


 このデンケンさんと呼ばれている男性は、ラーズ陛下に特別に滞在許可をもらってジュウゾウさんに弟子入りにきた料理人です。

 ガルディアやメルディアが誰を送るかと人材を吟味している中、待ってましたとばかりにフィッツガルドから送り込まれてきた精鋭なのです。

 料理の下ごしらえは安心して任せられるレベルな上に、注文はきちんとメモをとったり会計もミスなくこなしたりと、ただの料理人ではなくそれなりに教養があることもうかがえます。


「しかも愛想もいいんだよね。もっとプライドの高い『料理以外のことをやらせるな』ってのが来るかと思ってたんだけど」

「ハハッ。もしそんな人が来たらラーズさんに泣きつくしかなかったですね」


 そんなデンケンさんを横目に包丁をふるうバーラさん。

 あまりにジュウゾウさんが忙しそうなので、最近では食事時のラッシュのヘルプをしているのです。

 ジュウゾウさんが髭について悩んでいる間に、着実にそのパーソナルスペースを侵食しています。


「なんじゃ貴様ら!」

「ん? また喧嘩かい?」

「いえ。……もっと厄介みたいですね」


 突然聞こえてきた怒号につられてジュウゾウさんたちが厨房から顔を出すと、そこには帯剣した騎士らしき護衛を引き連れた、いかにも貴族ですといった風体の男が居ました。


「ええい! どけドワーフ共! わしを誰だと思っている!」


 知らんがな。

 その場に居た全員がそう思いましたが、実際に口に出したら面倒くさいことになるのが確実なので口をつぐみました。


「またお貴族様かい」

「みたいですね。ちょっと行ってきます」

「気をつけなよ」


 少しずつ有名になっているジュウゾウさんのお店ですが、そのせいかたまにこうしてフィッツガルドやメルディアの貴族が来店することもあります。

 ほとんどの場合は、わざわざこんな場末の店まで来るもの好きだけあり、身分をひけらかしたりせずお忍びで来るのですが、たまーにこういう空気の読めない貴族(バカ)が来てしまうのです。


 メルディアの屈強な騎士たちが居合わせた場合は少し大人しくなるのですが、残念ながら今日のお客はドワーフの人たちしかおらず、偉そうなおっさんはノリにノリまくっています。


「申し訳ございません。ただいま満席でして、しばらくお……」

「だったらドワーフたちをどければよかろう」

「……」


 説明している最中に遮られて、ジュウゾウさんの目から光が消えました。

「ああめんどうくせえ」と口に出さなくても目がものを言いまくってます。


「ジュウゾウ。わしら食い終わったからすぐどくよ」

「ああ。申し訳ありません」

「いいよいいよ。また夜に来させてもらうからの」

「ごちそうさん」


 いじめられているジュウゾウさんを見かねたのか、テーブル席に座っていたドワーフたちが残っていた酒を一気に飲み干して席を立ちます。


「ふん。さっさと片付けろ」

「……しばらくお待ちください」


 そしてその席に乱暴に座るおっさんと、笑顔で対応するジュウゾウさん。

 徐々にドワーフたちが殺気立ち、護衛の騎士たちが居心地悪そうにしています。


「ご注文は?」

「カレーとやらを持ってこい」

「かしこまりました」


 普段ならここで何か付け合わせや飲み物はいらないかと聞くのですが、今のジュウゾウさんにそんな余裕もなく淡々と注文を受けます。

 ドワーフたちも、このままなら大丈夫かと視線を戻し料理を食べ始めたのですが――。


「ついでだ。薄汚いドワーフどもを全員追い出せ」

『……』


 やりました。やりやがりました。

 相手は貴族ですが、人間の国と正式な国交を持っておらず、人間の身分制度なんぞ知ったこっちゃないドワーフには通じません。

 ドワーフたちが一斉にガタっと席を立ち、護衛の騎士たちが「やっちまったなあ!」とばかりに天を仰いでいます。


「お客様。そこまでにしてもらえますか」

「ああん? 何だ貴さ……」


 とても貴族とは思えないような声を出すおっさんでしたが、声をかけてきた店員――デンケンさんを見て言葉に詰まり固まりました。


「で、デンケンこ……」

「はいストップ。ちょっとお話しよろしいですかね。……ロンベルク卿」


 笑顔でおっさんの肩を叩くデンケンさんですが、目が笑ってません。

「逆らったらどうなるか分かってんだろうなアアン?」と目が語っています。


「店長。休憩入りまーす」

「あ、ハイ。どうぞ」

「ち、違うのです。これは違うのですー!?」


 そのままデンケンさんに引きずられて店から出ていくおっさんと、追いかける護衛の騎士たち。

 残されたジュウゾウさんとドワーフたちは呆けながらそれを見送ります。


「……デンケン候とデンケン公どっちだろうね」

「……どっちも上から数えた方が早いじゃないですか」


 一連の光景を見て、デンケンさんの正体を大体察したジュウゾウさんとバーラさん。

 一応後にデンケンさんに聞いてみたのですが「僕は気にしませんけど、店長聞いちゃって大丈夫ですか?」と言われたのでなかったことにしました。

 今日も異世界は平和です。


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