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覇道のトリニティ ~異世界の戦国を制した自衛官たち、世界の果てまで征く~  作者: ゆらゆら


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第七話:黒のスカウト作戦 ~忍(諜報員)を金とメシと尊厳で買収せよ~


「近衛……お前、今度は忍び(忍者)まで横取りする気か?」


二条御所に隣接する織田軍の仮設司令部。三宅輝は、目の前に並べられた大量の「黒い束」を検分しながら、頭を抱えた。


そこにあったのは、新開発された高通気性・難燃性の暗色迷彩服、夜間暗視能力を高めるビタミンA(豚レバーとサツマイモ)を極限まで縮小濃縮した「新・黒色兵糧丸」、そして軽量で静音性に優れた超硬質サバイバルナイフと鉤縄であった。


「三宅班長! 『情報は命』です! 近代戦における勝敗の八割は、交戦前に完了している情報戦インテリジェンスで決まります!」


近衛聡子は、サバイバルナイフの刃を光にかざしながら熱弁を振るった。


「戦国時代の忍びというのは、各家でどのような扱いを受けていると思いますか? 『忍びの者は人間ではない』『使い捨てのいぬ』として冷遇され、報酬はスズメの涙、任務で死んでも犬死に扱い……! 圧倒的なブラック労働環境(劣悪な待遇)なんです!」


「……確かにね」


安藤一馬が、消毒綿で医療器具を磨きながら頷いた。


「当時の忍びの死亡率は異常に高いです。毒殺、刺殺、そして何より過酷な任務による栄養失調と感染症。それなのに、大名たちは彼らを『影』として蔑み、正当な対価を支払っていません。これは労働環境として極めて異常ですし、人間の尊厳を著しく損なっています」


聡子はニヤリと凶悪な笑みを浮かべ、サバイバルナイフを机に突き立てた。


「だからこそ! 我が織田家は『忍びの超絶・厚遇買収作戦ヘッドハンティング』を断行します! 高額な固定給(毎月の給料保証)、完全出来高制のボーナス、手厚い労災保険、美味しい高タンパクなご飯、そして何より『国家の重要機関(陸上自衛隊で言う『情報科』および『特殊作戦群』の諜報部門)』としての尊厳と地位を与えるのです!」


「なるほどな……」


三宅が口元を緩めた。


「他家で虐げられている優秀なスパイや工作員たちを、圧倒的な『待遇とメシと報酬』で根こそぎヘッドハンティングする。相手の情報を遮断(目と耳を潰す)しつつ、こっちの情報網を世界規模に広げるってわけか」


「その通りです! これぞ『戦国・情報覇権ドクリトン』! 武田の『三ツ谷』も、伊賀・甲賀の抜け忍も、上杉の『軒猿』も、すべて我が織田家の『陸自情報科・戦国支部』へ引き抜きます!」



その頃、甲斐国(山梨県)・躑躅ヶ崎館つつじがさきやかた


甲斐の虎・武田信玄のもとには、異様な報告が相次いで届いていた。


「報告! 駿河(静岡県)に潜入させていた我が三ツ谷(武田の忍び組織)の『黒影』が……消息を絶ちました!」

「報告! 越後(新潟県)の動きを探らせていた『飛加藤』の配下三名が、織田の領地へ足を踏み入れたまま戻って参りませぬ!」


「……何だと?」


信玄は重厚な面持ちで眉をひそめた。


「殺されたのか? 捕らえられたのか?」


「それが……分からぬのです! 殺された形跡も、戦った痕跡すらございませぬ。ただ……『織田の配下になれば、毎月米三石と金貨が与えられ、毎日豚肉とジャガイモの温かい汁物が喰える』という妙な文を書き残し、消え失せた者にございます……!」


「な……何だと!?」


信玄のみならず、重臣の山県昌景や高坂昌信らも耳を疑った。


忍びといえば、主家に命を捧げ、影として死ぬのが常識。それが、金と手厚い給料、そして「美味い飯」につられてあっさりと敵へ寝返ったというのだ。


「馬鹿な……! 忍びごときに金を払い、米を与えるだと!? 織田信長は何を考えておるのだ!」


山県昌景が怒りに震えたが、彼らはまだ理解していなかった。


忍びとて、血の通った人間なのだ。家族がおり、胃袋があり、病にかかれば苦しい。他家で「捨て駒」として扱われてきた彼らにとって、織田家が提示した条件は、まさに天から差し伸べられた蜘蛛の糸であった。



京都・二条御所の地下に設置された『織田家中央情報本部(CIAならぬODA)』。


そこには、全国から集まってきた数百名の忍びたちが、整然と並んでいた。


彼らの顔からは、かつて暗闇で怯えていた忍び特有の「陰惨さ」が消え、ビシッと仕立てられた黒の高機能迷彩服を纏い、背筋をピンと伸ばしていた。


聡子が壇上に立ち、マイク(巨大なメガホン)を手に叫んだ。


「新入隊員の諸君! ようこそ、織田家中央情報本部へ!」


「「「ハッ!!」」」


「諸君らに命じる! 過去の主家に対する義理などすべて捨てよ! 諸君らは今日から『使い捨ての影』ではない! 我が織田軍の『最重要情報将校』である!」


聡子は黒い手帳(職員証)を一人ひとりに手渡していく。


「我が織田家は諸君らの働きを正当に評価する! 敵の配置図一つで金貨五枚! 敵大名の密書入手で金貨二十枚! 家族の医療費は全額我が家が負担し、万が一殉職した場合は遺族に終身手当を支給する! さらに……本日の夕食は、安藤二曹特製の『特上・豚カツカレーとジャガイモポタージュ』だ!」


「おおぉぉぉっ!!!」


忍びたちから、地鳴りのような歓声が上がった。


「本当に……本当に毎日こんな温かいお飯が喰えて、金までいただけるのですか……?」


元・甲賀忍びの頭領格の男が、涙を流しながら安藤から受け取った「豚カツカレー」をかじり取った。サクサクの衣、ジューシーな肉汁、そして濃厚なカレーの味が舌の上に広がる。


「う、美味い……! こんな美味いものを食べたのは生まれて初めてだ……! わしらは……わしらは今まで、冷えた干し飯と塩の塊だけで命をかけていたというのに……!」


「そうです」


安藤が優しく肩をたたいた。


「命をかけて情報を集める皆さんが、粗末に扱われていいはずがないんです。しっかりと栄養を摂り、体調を整えてください。怪我や病気があれば、すぐに僕の救護所へ来てくださいね」


「あ、安藤様……! お頭……いや、将軍様! わしらはこの命、織田家と皆様のために捧げまする! 武田でも上杉でも、毛利でも……へその緒の中身まで暴いてご覧にいれます!」


忍びたちの「エンゲージメント(忠誠心)」は、爆発的な高まりを見せていた。


恐怖や脅迫で縛られたスパイは簡単に裏切るが、「圧倒的な待遇・尊厳・美味しい飯」で結ばれた諜報員は、世界最強の忠誠心を発揮するのだ。



それからの数ヶ月間、全国の戦国大名たちは「極限の情報不全ブラックアウト」に陥った。


「報告! 越後の上杉様のもとへ送った忍びが、全員織田へ引き抜かれました!」

「報告! 相模(神奈川県)の北条の『風魔一党』の半数が、手厚い報酬に惹かれて織田の諜報部へ移籍いたしました!」

「な……何だと!? 風魔まで買収されたというのか!?」


日本中の忍びネットワークが、織田家の潤沢な「尾張ブランドマネー」と「最高級の待遇」によって、根こそぎ吸い上げられていったのだ。


逆に、織田家中央情報本部のデスクには、全国の動きがリアルタイムで集約されていた。


聡子、三宅、安藤、そして信長の前には、日本全国の立体地形模型ジオラマが広げられていた。そこには、各国の大名の兵力配置、兵糧の備蓄量、武将たちの健康状態や家庭の悩み、果ては「今夜の夕食の献立」までが、ピンで詳細に記録されていた。


「すごいな……」


信長は、模型の上に立てられた無数のピンを見つめ、思わず感嘆の声を漏らした。


「武田信玄がいつどこで咳をしたか、上杉謙信がどの寺で酒を飲んでいるかまで、すべて手取るように分かるぞ……!」


「これが『情報優勢インフォメーション・ドミナンス』です、信長様!」


聡子がニヤリと笑う。


「敵の忍びをすべて買収したことで、敵はこちらの動きを一切探れません。一方、こちらは敵の喉元に無数の『目と耳』を配置しています。相手が動く前に、その動向を完全に予測し、待ち伏せすることができるのです!」


三宅がサバイバルナイフで模型の一点を突いた。


「信長様。甲斐の武田信玄が、我が方の『情報遮断』に耐えかね、焦って駿河・遠江(静岡県)へ進軍を開始しました。『三方ヶみかたがはら』方面へ向かっています」


「ほう……信玄が動いたか」


信長は冷徹な笑みを浮かべた。


史実(現代の歴史)における「三方ヶ原の戦い」では、織田・徳川連合軍は武田信玄の圧倒的な騎兵戦術の前に大敗を喫することになっていた。


しかし、現在の状況はまるで異なっていた。


武田軍の進撃ルート、兵力、兵糧の残高、さらには信玄自身の「持病(肺結核および胃の悪化)」の進行度まで、安藤の率いる忍び衛生部隊によって完全に把握されていたのだ。



遠江・三方ヶ原の大地。


甲斐の虎・武田信玄は、黒塗りの馬上で烈火のごとく怒りを燃やしていた。


「ええい! 物見は何をしておる! 徳川と織田の陣立てはどうなっておるのだ!?」


「は、ははっ! それが……前方に送った忍びが誰一人として戻って参りませぬ! 織田の『黒い甲冑を着た謎の兵』にことごとく捕捉され、買収されている模様にございます!」


「目潰しに遭ったも同然ではないか!」


信玄は激しい咳き込みをみせた。口元をぬぐった懐紙に、赤い血が滲む。


信玄の体調は限界に達していた。だからこそ、焦って遠江への侵攻を強行したのだ。相手の情報を断たれ、暗闇の中を突き進むような恐怖。


「ええい、構わん! 我が武田の騎兵隊は天下無双! 目の前の敵を蹴散らせばそれで済むこと! 全軍、突撃ぃぃっ!」


「「「オォォォォォッ!!!」」」


「赤備え」で知られる山県昌景の最強騎兵隊が、地響きを立てて三方ヶ原の台地を駆け抜けた。風のように速く、侵略すること火のごとく。武田伝統の突撃である。


しかし——。


彼らが突き進んだ先で待っていたのは、戦国時代の常識を根底から砕く「現代的防衛陣地」であった。



「敵騎兵隊、突撃を開始! 距離、八百!」


三方ヶ原の丘の上に築かれた織田・徳川合同陣地。


そこには、三宅輝の指導のもとで構築された『対騎兵・多層防御陣地』が展開されていた。


最前線には、伸縮自在の鉄線に鋭いトゲを取り付けた『三重有刺鉄線網(じゅうあつの鉄条網)』が何重にも張り巡らされていた。その手前の地中には、黒色火薬と鉄屑を詰め込み、踏むと圧力がかかって爆発する『対人・対馬・圧力式地雷(簡易マイン)』が大量に埋設されている。


さらに、その後方にはトレンチ(壕)に身を隠した三千の歩兵隊が、新開発された「三脚付き連射式重火縄銃」を構えて待機していた。


「武田の騎兵隊……来るぞ!」


徳川家康が、青ざめた顔で馬上で震えていた。史実通りであれば恐怖で逃げ出すところだが、その隣に立つ聡子と三宅の余裕に満ちた表情を見て、なんとか思いとどまっていた。


「徳川様、安心してください」


聡子が双眼鏡を覗きながら冷徹に告げた。


「馬の突撃力というのは、障害物がなく、一直線に走れる時にのみ威力を発揮します。……障害物だらけの地獄へようこそ、です!」


「距離、三百! ……地雷原に突入!」


三宅の合図とともに、三方ヶ原の地面が爆発した。


——ドカァァァン! ドカカンッ! ドカァァァンッ!!


「ヒヒヒィィィンッ!?」

「ぐわぁぁぁっ! 地面が爆発したぞ! 馬の足が吹き飛んだ!」


最前列の赤備え騎兵隊が、地中に埋められた地雷の爆発により一瞬でなぎ倒された。後ろから続く騎兵たちも、爆発の煙と水柱に驚いた馬がパニックを起こし、将折り重なって転倒する。


「な……なんだあの爆発は!? 罠か! 迂回せよ! 左右へ迂回せよ!」


山県昌景が叫び、左右の迂回路へ馬を向けた。


しかし、そこに待っていたのは……幾重にも張り巡らされた「有刺鉄線網」であった。


「な、なんだこの鉄の糸は!? 馬の脚に絡みついて解けん!」

「痛ぇっ! 刺が刺さって解けないぞ!」


鋭い刺が馬の足や兵士の皮膚に食い込み、走れば走るほど絡みつく。武田自慢の「疾風迅雷の突撃力」は、完全にゼロへと殺された。


「敵騎兵隊、完璧に足止め(ピン留め)完了!」


聡子がサバイバルナイフを高く掲げた。


「全砲撃小隊、および重火縄銃大隊! 交叉射撃……放てぇぇぇっ!」


——ドドドドドドドドドンッ!!!!!


地響きのような連続斉射。


有刺鉄線と地雷原に足をとられ、身動きの取れなくなった武田の精鋭騎兵隊に向かって、雨のような鉛弾が降り注いだ。


「ぐああぁぁっ!」

「山県様! アカン、全滅します! 撤退を……!」


かつて「天下無双」と恐れられた武田の赤備えが、刀を交えることすらできず、ただ一方的に殲滅されていく。


「バカな……バカな……! 我が騎兵隊が……我が誇る赤備えが……!」


後方でその光景を見ていた信玄は、血を吐いて倒れ込んだ。


情報(忍び)を奪われ、暗闇の中で誘導され、現代の「陣地防衛戦術」の前に完膚なまでに打ちのめされたのだ。



「信玄様……! お引きくだされ! これ以上の戦いは全滅にございます!」


家臣たちに抱えられ、武田軍は壊滅的な打撃を受けて甲斐へと撤退していった。


しかし、聡子と安藤は、逃げる武田軍をただ追い詰めることはしなかった。


「安藤二曹、例の『ドローン(ならぬ高所観察気球)』から落としたメッセージの散布を!」


「了解です!」


安藤が気球から散布させたのは、大量の「ビラ」であった。


そこに書かれていたのは、武田の兵士たちに対する『投降と治療の勧め』であった。


『武田の兵士諸君! 無駄な戦いで死ぬな! 織田家へ降伏すれば、怪我は無料で治し、ポテトカレーと豚汁を腹いっぱい食べさせる! 命を大切にせよ!』


このビラを見た武田の足軽や傷病兵たちは、次々と武器を捨てて織田軍の陣地へと歩み寄ってきた。


「助けてくれ……腹が減って動けんのだ……」

「足を怪我した……治してくれるというのは本当か……?」


安藤率いる衛生隊が即座に出動し、負傷した武田の兵士たちに消毒と包帯、そして温かいカレーを振る舞った。


「う……美味い……! 美味すぎる……!」

「信玄様は『死んで恩を返せ』と言ったが……織田の殿様は『生きて飯を喰え』と言ってくださる……!」


この圧倒的な「人道と補給の差」を見せつけられた武田軍の兵士たちは、二度と織田家と戦う意欲を失った。


数日後、甲斐へ戻った武田信玄は、病状の悪化と精神的ショックにより、静かにその生涯を閉じた。


甲斐・信濃の武田家は、合戦による流血ではなく、「情報の遮断」「圧倒的陣地火力」そして「敵兵への圧倒的厚遇(カレーと医療)」という、自衛官三人衆の三段階作戦によって、完全に解体・吸収されたのである。



数週間後。京都・二条御所。


信長は、新しく織田家の中央情報部(ODA)の長官に就任した聡子と、忍びたちの頭領格になった男たちから報告を受けていた。


「信長様。甲斐・信濃の平定、完了いたしました。武田の旧家臣や忍びたちは、我が織田家の『手厚い俸給と衛生制度』に歓喜し、全員が忠誠を誓っております」


「ふ……見事だ、近衛」


信長は、豪華な椅子に身をもたせ、満足げに目を細めた。


「忍びという『影』を、金とメシと尊厳で買収し、敵の目と耳を潰す。そして、その情報をもって敵を完膚なまでに叩きのめし、最後は優しさ(補給と医療)で胃袋と心を奪う……。貴様らのやることは、どこまでも徹底しておるな」


「これが現代の『ハイブリッド戦争(情報・心理・経済・軍事の複合戦)』です!」


聡子は誇らしげに敬礼した。


「情報を制する者が、戦を制す! これにより、東国の脅威(武田)は完全に消滅しました! 次のターゲットは……越後の『上杉謙信』、そして西国の『毛利元就』です!」


安藤が手帳を開いて補足した。


「上杉謙信様に対しては、すでに『越後の厳しい冬を乗り切るための特製ジャガイモスープと防寒具』のサンプルを忍び経由で届けてあります。『義』を重んじる謙信様も、領民が飢えずに冬を越せるこの提案には、深く心を動かされているようです」


三宅も笑った。


「戦わずして勝つ。……これが一番のサバイバルだからな」


信長は立ち上がり、巨大な世界地図を見つめた。


「うむ。東国が治まり、京が固まった。……近衛、安藤、三宅!」


「ハッ!」


「次は『海』だ! 堺と博多の港をさらに拡大し、我が織田家の『巨大鉄甲船(黒船)艦隊』を建造せよ! 日本を一つにまとめ上げ、そのまま南蛮、そして明国へと漕ぎ出すぞ!」


了解アイアイサー!!」


情報を制し、忍びを味方に付け、飢えと病を撲滅した自衛官三人衆。


彼らの導く「織田帝国」の勢いは、もはや日本という枠組みを遥かに超え、世界の歴史そのものを塗り替える大航海へと加速していくのだった。

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