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【改稿作業中】クロ殿下と剣聖ヴェイセル  作者: 夕凪 瓊紗.com
番外編集

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【74】side:たんたん副隊長とシュテルン公爵


――――side:たんたん


副隊長として隊員たちの稽古の相手をし、ザックさんの補佐として書類作業にいそしむ。そしてマティアス隊長に稽古と称され叩きのめされ(多分きっと愛の鞭。ザックさんの何倍……何百倍もやばい)、何故か銀髪の女騎士シルヴィーと食堂で後宮で過ごすクロ殿下とイヴ姫様の話題で盛り上がる。

至極忙しい日々を過ごして早2週間が過ぎた。俺は巡回のさなか因縁のある男と遭遇してしまった。そう、王都騎士隊入隊試験で俺が吹っ飛ばした……ホープだった。


「何故……貴様がここにっ!」

コイツ、俺を認識してしかも敵意まで向けてくるとはスキル的な問題か、本質的な問題か。例えばシルヴィーのような。彼女は俺の気配察知に長けたスキル・ジョブを持つわけではなかった。それは多分彼女の本質的な部分で何か長けているものがあるのだと思う。それともそれまでに憎悪が深いとか……?ただ俺が試験で勝っただけなのに……?それほどまでに試験で負けたのが悔しかったのか。


王都騎士隊の制服を見る限り、コイツは見事入隊を果たし、俺は落ちている以上コイツの方が恵まれているような気がするのだが。


腕章を見る限り当然コイツは見習い、俺は近衛騎士隊副隊長。立場はまるで違うし、俺の方が偉いのだがそこらへんのひがみか。


「裏切り者のタイタン一族が!」

ん……?コイツ、北方の辺境タイタンのことを知っている。さらに裏切り者ってどういうことだ?


「ここにスパイがいるぞ!身分を偽り、シュテルン公爵家にあだなす裏切り者の売国奴!」

……はい?何!?身分なんて何一つ偽っていないしシュテルン公爵家にあだなすって何だよ!まぁ実家とは仲が悪いけど、別に謀反なんて起こす気もないだろう。さらに売国奴って、俺がいつエストレラを売ったんだ!?


するとホープの目が怪しく光り、周りにいた見習い騎士や教官と思われし年上の騎士たちが一斉に俺を取り囲んだ。


「裏切り者!」

「スパイ野郎!覚悟!」

「シュテルン公爵家にあだなす巨人どもの手先!」


「く……っ」

逃げ出すのなら簡単だし、トーナメントにホープに負けた見習いたちを倒すのは簡単だ。教官もマティアス隊長に比べれば多分へったくれもない。けどらあのホープの目。実家が反逆者にされかねない状況を無視して逃げるのは……っ。


「いつタイタン家がシュテルン公爵家にあだなした?」

凛とした鋭い声が響く。いつの間にか俺の方に歩いて来るオリーヴ色のメガネの貴人に皆道を開けていく。その人が俺の隣に立つとホープは目を見開いた。


「タイタン家は昔からシュテルン公爵家の治めるシュテルン州に属し、今もその一部として州税もきっちり治めている」

その人をタイタン領主邸で見かけたことがある。俺がいることに気付いた兄さんが俺を急いで部屋に引っ張っていったけど。その人は繰り返し頭を下げていた。


「彼らが我がシュテルン公爵家にあだなしたことなど一度もない。かつてのシュテルン公爵がタイタン領を疎外し、タイタン祭壇を祭壇とは認めず、その上徴兵を推し進めた時もだ」

それは確か先王統治時代のことだったはずだ。


「彼らは領民のために尽くし、領民を守るために戦った勇敢な種族だ。シュテルン州を預かる主として巨人族への侮辱は許さん」

そう、タイタン領は巨人族の長が治める領土だ。一般的な人族も暮らしているが人族の亜種とされる巨人族が多くを占める。彼らはその名の通り人族よりも大柄で背も高く、力も強い。流れ者の冒険者でもなければ彼らはタイタン領を出ることは少なく、ほかのエストレラ国内でも王都でも見かけたことはなかった。


「しゅ、シュテルン公爵閣下……」

俺たちを取り囲むひとりがそう呟く。

この人はタイタン領の属するシュテルン州を治めるエリック・フォン・シュテルン公爵だった。


「ですが……そいつは国害です!タイタン家は今も虎視眈々とシュテルン公爵家にあだなそうとしています。その証拠に奴らは州会合にも顔を出さず、シュテルン公爵家に頭も垂れないではありませんか!」

ホープの目がまた怪しく光る。


「そいつを捕らえ、拷問する許可を!」

多分、あの目はいけない!俺はシュテルン公爵の前に出ようとするが、公爵がそれを止める。


「無駄だ……私にその目は効かん」

「……そんなっ」

鮮やかな手つきでシュテルン公爵がメガネを外し、その鋭い眼光を向けると、ホープの怪しく光った目がぴしぴしと石化していく。


「あああぁぁぁぁっっ!!!」

「ふん。まがい物の魔眼などこんなものか……」

ホープが跪いたその瞬間、近衛騎士隊がなだれ込みホープを拘束する。


「王都騎士隊……お前たちも事情を聞かせてもらうぞ。どうせ魔眼に操られただけだろうがな……」

王都騎士隊の面々もあの時のように我に返ったようで素直に従っている。そしてシュテルン公爵がゆっくりと口を開く。


「……先日、シュテルン公爵家からある宣言がなされた。シュテルン州にはタイタン領などという領地はない……とな」

「……それは……っ」

「もちろんすぐに撤回し、そのような伝令を回した貴族は罷免した。まさかその子息もこの件に絡んでいるとはな……」

その子息がホープってことか。


「奴らは未だ裏で使徒とつながっていた。それゆえあの偽物の魔眼を手に入れたのだろう」

使徒……星の使徒のことか。先代シュテルン公爵は星の使徒と裏でつながっていたらしい。尤も今の公爵に代替わりしてからは関係をきっぱり絶ったらしいが、まだ残党がいたらしい。


「公爵閣下、彼の魔眼とは……」

ハッとする。シュテルン公爵に忍び寄る影……!反射的に体が動きその影をすかさず暗器で仕留める。


「公爵閣下……こちらは危険です。どうぞ中へ」

「……あぁ」

後始末を部下たちに任せ、俺はシュテルン公爵を屋内へと促す。


※※※


場所を移せば、シュテルン公爵が口を開く。


「ノーキ……いやマティアスがゴーシュと行った分析によると、あの魔眼は妬みや嫉みで発動し、その対象を貶めるために周りを洗脳する厄介な代物だ」

それを一瞬で石化させた公爵は一体……?というか今この人、マティアス隊長のことをノーキンって言いかけなかったか。ついでに今名前が一緒に出たゴーシュ様とは王配の1人である魔法士庁長官のことだろう。


「お前は先ほど俺のことを庇ったな」

「王族の皆さまをお守りするのが任務ですので」

シュテルン公爵であり、女王陛下の王配である彼もまた俺の守護する対象の一人だ。


「……俺を怨んではいないのか?お前はタイタン家の出身だろう」

「シュテルン公爵家とタイタン家の間には遺恨があります。けれどその元凶は公爵閣下ではありません。シュテルン公爵家は好いてはいませんが、

公爵閣下には借りがありますから。公爵閣下を怨んでいるものは少ないと思います」

でなければ両親たちや兄たちが城内にまで招くはずがない。領内に入ろうとした時点で門前払いを喰らうだろう。


「それに、私は先ほどの公爵閣下の御言葉はとても嬉しかったです。貴方がシュテルン公爵閣下でよかった。そして閣下を守るお役目を預かることができ光栄です」

「……そうか」

シュテルン公爵閣下は顔を背け、静かにそう言った。


……?


何故だろう。


いつも難しい顔をしている公爵の顔が何となく嬉しそうに見える……?


――――こうして、先の騒動から暫くして新人隊員が入った。入ったのだが……。


「というわけで、直々にたんたん副隊長の補佐に立候補してきた有望な新人だ。ちゃんと面倒みろよ、じゃ!」

と颯爽と去っていくマティアス隊長。ちょ……っ!行かないでください隊長!2人にしないで!俺はふいっとその場を後にしたかったのだが。その鋭い眼光から逃れられず、しぶしぶ目の前の巨躯の男を見る。


「な……何しに来たの……兄さん」

「お前が一人王都に行ったと言うから探しに来たんだ。レイ」

そう、それはタイタン領を出立する前に俺が逃げ去った巨人族の兄であった。


金色の髪、アメジストの瞳を持つ兄オーヴェは巨人族らしく体格がよく、そして身長も高い。


「どうして……ここが……」

「数週間前、シュテルン公爵家から御触れが出されたという。その内容はタイタン領はシュテルン州であらずという内容だった」

まさかタイタン領までその御触れが届いていたとは。


「あの、兄さん、それは……っ」

シュテルン公爵の本意ではありません。そう言おうとしたのだが……。


「その件でシュテルン公爵が直接タイタン領に謝罪に来た」

そっかシュテルン公爵が。そういうところが受け入れられている理由なのかもしれない。


「その時シュテルン公爵からお前のことを聞いた」

……こ……公爵!!!


「シュテルン公爵がとても感謝していた」

感謝されているのは嬉しいな。


「しかし弟はまだ半人前なので、俺が来ることになった」

「はい……?」

「お前はまだ16歳だ。当然だろう。飯の支度は、身支度は?何から何まで足りないことだらけだからな!」

いや……それならクラリッサ姉さんあたりに来てほしかった。


「その……えっと……まぁ、ありがとう……ごめんなさい」

「うむ、わかればいいのだ。わっはっは!」

今更だけど……マティアス隊長って何となくタイタン領の兄さんたちに似てるかも……と思った。



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