第773話 クロ殿下とスバル殿下と精霊たちの裁定
―――南部連合王国青嵐県スバルの小領地集落
スバルの小領地に戻った俺たちは、
早速、精霊たちに許可を求めに青嵐大祭壇へ向かった。
「・・・ということで、
シズカちゃんととろきさんを仲間として迎えたいんだけど・・・いいかな?」
「いいんじゃないか?ウチにはジェルミーもいるしな」
と、土の精霊・イングヴェルがおいなりさんを頬張りながら告げる。
そうとう気に入ったみたいだ。うん、気持ちはわかる。
「うん、スイランさんもいる」
と、木の精霊・ハスキさんも微笑む。
因みにハスキさんは、南部連合王国のピリ辛香辛料を混ぜた
おいなりさんを頬張っている。
相変わらずの激辛好きである。
南部連合王国は米も有名だが、
味付けにはピリ辛香辛料が割とメジャーなのである。
「ん」
破壊の精霊・玻凛さんは五目おいなりさんを頬張りながら頷いてくれる。
「なのれす~」
縁結びの精霊・ウララちゃんも五目おいなりさんを幸せそうに頬張り、
口元についた米粒を玻凛さんに取ってもらっていた。
エストレラ王国に本祭壇がある精霊たちはもちろんすぐに賛成してくれた。
・・・問題は、エストレラ王国外の精霊たち。
『仲間なのれす~!』
森の精せいなるもり支部隊たち・・・
セラちゃん、セリちゃん、セイくんは大歓迎のようだ。
「うむ、良いのではないか?ふわもふ仲間もいるのぢゃ」
そうだね、さっすがふわもふ狐耳しっぽ(6本)の雷の精霊・エレン!
そこ、わかってるぅっ!
「私も・・・睡魔・・・とろき、ふわもふ好き」
と、シズカちゃんがウララちゃんからおいなりさんを受け取って、
舌鼓をうちながら頷いてくれる。
『なんとっ!!』
ついつい、エレンとハモってしまった。シズカちゃんも分かるこだったとは・・・
いい子だ。シズカちゃんの頭をなでなで。
するとあどけない目で見上げて来て、思わずキュンと来てしまった。
お次は風の精霊バニーさんだが・・・
「・・・ま、いいんじゃない?
あんたも御子様ね・・・変わってなくて、安心したわ」
あれ・・・割とすんなり?
「俺は、クロですけどね」
「なら、御子様よ。例え生まれ変わっても、
あのこたちに救いの手を差し伸べるのは、御子様だけだもの」
「そんなことは無いと思うけど・・・
クララさんも、スバルも、カロクさんもすっかり仲良しだよ?」
ダンジョンからの帰り道で、皆すっかり意気投合した気がする。
「そう言うことじゃなくって・・・
んもう・・・だから、皆あのこたちと一緒にいてもいいと思えるのよ。
もっと御子様の自覚を持ちなさいな」
「えっと・・・それは・・・?」
・・・どう言うことだろう?
と、ヴェイセルを見上げると・・・
「まぁ、クロは大鬼の御子さまとは違うけど・・・
分かりやすく言えば、今は人族の御子様ってところかも」
とヴェイセル。
俺も、御子様と同じように
そう思われてるって・・・ことなのかな・・・?
「そんなところも、愛される一因なんだろうね」
「それ、何かわかるっす」
「えぇ、私も」
「そうだな」
「ね」
「ん」
皆、一様に!!?
まぁ、よくわからないけど・・・
あとひとり・・・嵐の精霊・ローレインさんは・・・
ローレインさんの方を、恐る恐る見ると、とても優しい表情をしていた。
「ありがとう、御子よ」
そう、ローレインさんが微笑んだ。
ローレインさんは、彼ら彼女らがこの地で産まれ、
そしてシズカちゃんととろきさんが再び眠っていたことを知っていたんだろうか・・・?
まぁ、この地に根付いている精霊のような気がするし・・・
知っていて、ふたりがひとびとに受け入れられるよう
優しく見守ってくれていたのかもしれない。
「・・・ううん、こちらこそ。
シズカちゃんととろきさんを、よろしくお願いします!」
―――
そして、その後青嵐県は、見事ダンジョン都市としても発達し、
ダンジョンボスはとろきさんがシズカちゃんとふたりで一緒に務めているそうだ。
最初はふたりの姿に驚く探索者たちだったと言うが、
あどけないシズカちゃんのかわいさに人気に火がついたらしく、
静かで厳正なとろきさんもひそかに人気な
ダンジョンボスとなっているらしい。
農業のみならず、観光、ダンジョン経営業の面でも、
南部連合王国で着々と発展したそうで・・・
白雲県のダンジョン都市は、
すっかり閑古鳥が鳴くようになってしまったそうな・・・。
というか、周り、全部スバルと仲良し県。
白雲県・・・いつの間にか孤立していた。
今後は、白雲県が他県と和解することを願いながら、
青嵐県の更なる発展を願うのだった。




