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【改稿作業中】クロ殿下と剣聖ヴェイセル  作者: 夕凪 瓊紗.com
シルヴァリー共和国編

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それぞれの後日譚(ミシェルとソフィア編)


―――シルヴァリー共和国とある宿屋


「お帰りなさい!お姉ちゃん」


「ただいま、ソフィア」


「今日の依頼はどうだった?」


「ばっちりよ。報酬もたくさんもらった。

だから・・・ソフィアも無理して、ここで働かなくてもいいのに・・・」


「ううん、お姉ちゃんにばかり頼っていられないもの!私も頑張るっ!!」


「そうさ、ミシェルちゃん。ソフィアちゃんは今や、ウチの看板娘なんだからね」


「おかみさん・・・ありがとうございます」


「はっはっは、遠慮するんじゃないよ」


「全く、シルヴァリー共和国に来たての頃は、何も知らなくてどうなることかと思いきや、

すっかり立派な勇者になったな、ミシェル」


「はい。これも全て、何も知らないまま来てしまった、

私たち姉妹を拾ってくれた、おかみさんと親父さんのおかげです」

かつて、互いに罪を犯し、復讐しようとした光の勇者と和解し、

そして、己の罪を許され、シルヴァリー共和国へ旅立ったミシェルとソフィア。


これからは、本当の、本来の自分たちの人生が始まる・・・

だが、何も知らない異郷の地に、

2人は立ちすくみ、どこを目指せばいいのか、

どうやって食べて行けばいいのか・・・

そして住む場所は・・・?

何も知らない場所で途方に暮れていたところを、

冒険者たちがよく利用する宿屋のおかみさんと親父さんが助けてくれ、

無一文だった自分たちに出世払いでいいと宿屋の一室を貸してくれたのだ。

もと冒険者だという親父さんの案内で、

ミシェルは無事冒険者となり、冒険者家業で稼げるようになった。

そして、ソフィアはせめてものお役に立ちたいと、

宿屋のお仕事を手伝い始め、今や宿屋の看板娘として、

荒くれものの多い冒険者たちにも大人気なのだ。


全くソフィアは・・・

しかし、自分でも内心驚いたのだが、ソフィアはとても社交的で、

ひとと話すのが好きな子なのだと知った・・・


そして、自分は、案外冒険者に向いている・・・と、

最近ランクも上げ、ひしひしと感じている。


「しかし、最初見た時は驚いたが・・・

すっかり逞しくなったもんだなぁ、ミシェル」

親父さんが、私の頭をぽんぽんと撫でてくる。


確かに・・・今までは太陽の呪いを恐れるソフィアと共に、

ソフィアのために同じような黒装束に身を包み、

太陽の光を一切合切遮断してきた・・・


だが、シルヴァリー共和国に来てからは、

黒装束は冒険者の邪魔になる・・・と、

親父さんに専用の冒険者装束を揃えてもらい、

マントにシルヴァリー共和国の気候に合わせた薄手で身軽ながら、

強度や強化魔法が付与された冒険者装束と、

部分鎧のあしらわれた格好をしている。


そのせいか、シルヴァリー共和国の燦燦と輝く太陽の恩恵を受けた私の肌は、

すっかり小麦色に、今までの色のない白い髪が嘘のように、

キレイな金髪に染まっていた。

今まで憎まれ、怨まれていると思っていた、太陽の日差し・・・

しかし、浴びてみると、今までの憎しみも怨みも浄化してくれるように、

温かに私たちに降り注いだ・・・


そして、ソフィアも・・・

今までは太陽の光を恐れていたものの、

呪いから解放された彼女は、

温かく、優しいおひさまの恵みを浴びて・・・

いや・・・むしろ南国のシルヴァリー共和国の

照り付けるような光をうんと浴びた彼女も、

小麦色とまではいかないが、

血色のよい肌に、薄い金色の髪へと変化していた。

そんな外見も、冒険者たちに人気が出ているのだが。


「・・・親父さん、久しぶり」

と、そこへ、新たな冒険者が宿屋の飲み処に現れる。

シルヴァリー共和国の“雑種”と呼ばれる獣人族の青年で、

狼耳しっぽに似ているが、耳の先端にはざんばらな毛が生えており、

狼種・・・とは少し違うようだ。


「おぉ!シュアンじゃないか!久しぶりだなぁ!」

どうやら、シュアンさんと言うらしい・・・


「いらっしゃいませ!」

そこで、ソフィアもシュアンさんに声をかける。


「・・・この子は?新しい給仕を雇ったのか?」


「はっはっは!別嬪さんだろ?ウチの看板娘だ」


「へぇ・・・シュアンだ・・・よろしく」


「はい!ソフィアです!」


「お~い、ミシェルも来な!」

親父さんが呼ぶので、私もシュアンに駆け寄ると・・・


「双子・・・か?」


「えぇ・・・ソフィアの双子の姉・ミシェルです」

軽くぺこりと挨拶をする。


「君は・・・冒険者か?」

恐らく、私の装備を見て、判断したのだろう。


「あなたも・・・ですか?」

それにしては、身軽な格好をしている・・・

黒いノースリーブのタートルネックに、すらりとした黒いズボン・・・

腰にはマジックバックのようなものを身に着けているが・・・

冒険者・・・と言うには装備が控えめ・・・?


「あぁ、こいつぁ、シュアン。SS級冒険者だ」

え・・・えすえす・・・級?

世界に5人しかいないという、最上級ランクの冒険者!

かつて出会った、エストレラ王国の剣聖、赤髪のヴェイセルと同じ・・・

確かその中に、シュアンさん・・・と言う名前のひとがいたような・・・


「やめれ・・・今日はただの冒険者として、久々に顔を見せに来ただけだ」


「つーても、ギルドで会った時に気軽に話しかけて、

ウチのミシェルが変な目で見られたら困んだろ?」

“ウチ”の・・・そう、親父さんに言ってもらえるのは、何だか嬉しい・・・

思えば、私たち姉妹には、“両親”がいなかった・・・


かつて、復讐心に苛まれ、家族、一族の仇だと、

光の勇者に復讐しようとしていた・・・

けれど、彼らは、かつての血族の彼らは、

家族・・・のようなものとは違ったのだと思う・・・

私たちは、呪われた血を受け継いでしまった・・・

そのことで、父も、母も、私たちを腫物のように、

呪われた子だと忌み嫌った・・・

そして、兄も、姉も、親戚たちも・・・

それでも、彼らを復讐のまま殺した光の勇者を恨み、

仇を討とうとしたのは・・・愛されたかったから・・・


血族でありながら、太陽の精霊の祝福を受けた裏切り者の光の勇者を討てば、

血族たちの仇である光の勇者を討てば・・・

褒めてもらえる・・・

家族の一員として迎え入れてもらえる・・・

愛してもらえる・・・


私たちが、愛されたという証が欲しかったから・・・

なのではないかと、今では思う・・・


でも、私にとって本当の家族と呼べる存在は、妹のソフィア。

そして、ソフィアしかいなかった・・・

だけど今は、まるで親父さんとおかみさんが、

私たちの両親代わりのようで・・・


「あの、シュアンさんは、親父さんたちと親しいのですね・・・

SS級冒険者なのに・・・どうして?」

と、ソフィア。


「ははは、まぁ、俺はA級どまりだったけどな・・・

だけど、コイツがまだ素人の時に色々と面倒見てやったのは、俺よ」

と、親父さんが誇らしげに告げる。


「全く、シュアンがSS級冒険者に上り詰めた時は、驚いたけどね」

と、おかみさん。


「ん・・・田舎から出てきた俺に・・・出世払いでいいと、

部屋を出してくれた・・・」

私たちと・・・同じ・・・?


「おうよ!だから今でも、たまに顔見せついでに、

飲み代を置いてってくれるってことさ」


「それじゃぁ、私たちの先輩ですね」

と、ソフィアが微笑む。


「・・・お前たちも?」

と、シュアンさんが親父さんとおかみさんを見ると、

親父さんはいつもの笑みを浮かべ、おかみさんが苦笑していた。


「困ってるときゃぁ、お互い様だろ?」


「・・・ん、まぁ・・・だからこそ・・・だな」


「全く、このひとは・・・」

おかみさんは呆れ気味だったが・・・


「でも、かわいい娘がふたりもできて、あたしゃぁ、嬉しいよ」


「・・・おかみさん!」

ソフィアは感極まったように、おかみさんに抱き着き、

おかみさんも優しくソフィアを撫でている。


「よし、ミシェルも来るか!?」

と、唐突に親父さんが告げ、驚いていると、

次の瞬間、シュアンさんとおかみさん双方から、

こら、と怒られていた。


全く・・・相変わらずなんだから。


「はっはっは!そうだ、冒険者のクエスト、終わったんだろ?

ミシェルも賄い、食べてきな」


「はい、親父さん」


「因みにシュアンもな」


「強制なのか?」


「先輩として、冒険者のいろはを色々教えてやってくれ、俺の自慢の娘にな!」

他人である私たちを“娘”と呼んでくれる親父さんとおかみさんに、

初めて“両親”と呼べるひとを見つけたような・・・そんな気がした・・・


そして、私はシュアンさんと卓についたのだが・・・


「はい、お姉ちゃん、シュアンさん!」


「これは・・・」

ソフィアが出してきたのは、シルヴァリー共和国おなじみの、

カレーとチャパティという、

ナンのようだが、フライパンで焼き上げる薄いパンのようなもの・・・

これはいつもの事なのだが・・・

いつも親父さんが仕込んでいるカレーと、何となく違うような・・・


「気が付いた?今日は私がカレーを煮込んでみたの!親父さんからも及第点!」


「・・・ソフィアの・・・」


「いつも頑張ってくれるお姉ちゃんへのお礼!

あと、シュアンさんへも、お姉ちゃんをよろしく、ってことで!」


「ちょ・・・ソフィアったら・・・

シュアンさんはSS級冒険者で・・・私なんかとは・・・」


「・・・別に構わない・・・」


「シュアンさんまで・・・えと・・・私、まだまだ新米で・・・」


「だが・・・同じ宿屋出身だから」


「・・・は・・・はい、よろしくお願いします!」

ソフィアお手製のカレーをチャパティと食べながら、

シュアンさんと冒険者の話をする傍ら・・・


「そう言えば・・・アイツに様子を見て来てくれと頼まれたな・・・」


「あいつ・・・?」


「・・・ヴェイセル」

その名前に、私はハッと息を飲む・・・

そう言えば、ヴェイセルもシュアンさんと同じSS級冒険者・・・

知り合いであっても、なんらおかしくはないのだ・・・

かつて私が犯した罪を思い出して、ついつい俯いてしまったのだが・・・


「元気でやっているようで・・・安心した」


「・・・シュアンさん・・・」


「君が立ち直っているようなら、これを渡してくれと頼まれた」


シュアンさんがマジックバックから取り出したのは、

腰ベルトが付いた小さなポーチだった。


「これ・・・」


「ヴェイセルお手製のマジックポーチだ。冒険者家業をして行くにあたって、

なにかと役に・・・立つからな・・・」


「そんな・・・っ!新米冒険者には、とても手が出ない・・・」

マジックバックの類は、高級品だ。

SS級冒険者ともなれば、当たり前のように持っているが、

私のような新米冒険者に手が出せるようなものではない・・・

そんな高価なものを・・・


「どうして・・・?」

私は、たくさん、たくさん迷惑をかけた・・・

身勝手な理由で、身勝手な復讐で、

ヴェイセルの・・・主や、その親友たちに、

光の勇者たちに・・・迷惑をかけたのに・・・


「先輩冒険者からの・・・餞別?あと・・・同じ双子友だちだから・・・

何か助けになりたいと・・・クロ殿下が・・・

そしたら、ヴェイセルが・・・これを・・・役に立つだろうとな」


「あ・・・私・・・」

私・・・は・・・たくさん迷惑をかけたのに・・・

それなのに、双子友だちと言ってくれる、

エストレラ王国の優しい王子殿下・・・

そして、剣聖ヴェイセル・・・


「私も・・・ありがとうと・・・伝えたいです・・・」


「君が冒険者として活躍すれば、あいつの耳にも入る。

たまにシルヴァリー共和国でも依頼を請け負うからな・・・」


「恩返しに・・・なるでしょうか・・・」


「あぁ・・・もちろん」


「そうだぜ!クロ殿下はチームクロム族仲間だもんね、うぇいっ!」

「ソフィアちゃんちょーかわゆす!ナンパしていい?わふっ!」

「ねぇねぇ、ミシェルちゃんはどのわふたんが一番好き?わぉんっ!」

と、突然目の前に現れた、3種類の狼種・・・シュアンさんのような

雑種も混じっているが・・・の青年たち・・・


「お前ら・・・やがまし!」

シュアンさんにすかさず叱られていたが・・・


「あの・・・この方たちは?」


「・・・ん・・・金属精霊ズ」


「精霊様・・・!」

直に見るなど・・・滅多にない・・・

もちろん、祭壇に行けばお会いできるかもしれないが・・・


「でも、やがましぃから・・・」


『ひどいぜシュアン~~~っ!ちょいわふわふしょんぼりっ!!』


「ふ・・・ふふふ・・・」


「お姉ちゃん・・・?」

何故かソフィアが意外そうな顔をしていた。


「ミシェルちゃん、笑うと超かわいいねっ!胸キュンっ!」

3にん組の精霊のうち、緑の毛並みの碧狼族風の青年が告げてくる。


私が・・・


あ・・・私・・・いつの間にこんな風に笑えるようになっていたんだ・・・


そして、ソフィアがいきなり抱き着いて来る。


「ちょ・・・っ!?ソフィア!?」


「お姉ちゃん、私、幸せだよ。今、とっても幸せなの!」


「・・・ソフィア・・・」


「2人で一緒に、今度こそ・・・一緒に生きようね」


「うん・・・そうだね・・・ソフィア」

私たち双子の姉妹は、そう、胸に誓ったのであった。


そして、いつの間にか周りから拍手が響き、

いつも宿屋に顔を出す冒険者たちが、

私たちを祝福するように拍手を送ってくれていた。


「よっしゃ!今日はシュアンのおごりで飲むぞ!」


「いいな!じゃんじゃんついでくれ!」

いきなり、そう言いだす冒険者たちに・・・


「いや・・・勝手に決めんでねぇ」

と、シュアンさんが呟いていたが、先ほどの3にんの精霊たちがそこに加わり、

飲み処は、いつもの冒険者たちの笑顔にあふれていた。


シュアンさんも、まんざらでもないようで、

その光景を微笑ましくも呆れながら見やりながら、

お酒を口にしていた。


そして、冒険者たちに飲み処の即席ステージに招待されてしまった私は、

ソフィアと楽しく踊りながら、冒険者たちに祝福されながら、

これからも、ソフィアと一緒に、生きていくのだ・・・




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