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アンドロメダと天の川  作者: 津辻真咲
13/18

それぞれの躍動(きもち)

13.それぞれの躍動きもち



ちなみに植物PLANTへ入り遅れた人たち。彼らは、警察機械の簡易機械に乗せられ、少しの慣性力に揺られていた。

「大丈夫かな? みんな」

マス・ディーアは、心配そうに首をかしげた。

「大丈夫ではないだろう。この宇宙コロニーの防犯は完璧だ」

リーカガは、自身のプログラミングに絶対の自信がある。

「ですよね」

真黒疎斗は少し諦めている様子だった。

「黙人」

「どうかしましたか?」

自身を呼ぶ声に、黙人はリーテ・ィュを見る。

「僕たち、やっぱり連れていかれるんだろうか?」

「えぇ、警察機械本部に」

黙人は冷静に答える。

「そうだよね」

リーテ・ィュは斜め右下に視線を落として、落ち込む。

「ぼ、僕まで!?」

真黒疎斗は、おろおろする。

「一緒にいたでしょ?」

瀬井霜は、瞳を閉じて静かにしていた。

「はい」

 真黒疎斗は、諦めて返事をした。

 すると。

突然、サイレンが鳴り響いた。

「え!?」

マス・ディーアは、白い壁に所々に設置されている緊急灯が点灯し始めたのを見上げた。

「やっぱり、見つかったか」

リーカガは、当然だというかのように自身のプログラムの完璧さに満足していた。

「早いなぁ」

真黒疎斗は、そう言って、それに感心していた。

「よく、こんな時に」

なぜこの宇宙コロニーのプログラムの完璧さに感嘆しているんだと瀬井霜は呆れた。

 そんな六人のやり取りを気にすることなく聞き流しながら、警察機械たちは、彼らを警察機械本部へと連行していた。



 人類側 植物PLANT。

「見つかったの!?」

「そのようだな」

壁のスピーカーから鳴る、大音量のサイレンに焦る冬華に対して、諒は、もう時間の問題であるような事に気付き始めていた。

「行くぞ」

湯木解は冬華の手を引き、走り出した。

四人はライ麦畑を走っていく。赤色灯が点滅していた。そして、サイレンも鳴り響いている。

――だんだん、迫って来る!!

後ろを振り向くと、警察機械たちが追いかけてきていた。

「何」

警察機械の簡易警備機械たちが先頭を走っていた湯木解の行く手を塞ぐ。

――どうしよう。

冬華たちは、追い詰められた。

すると、後ろから来た諒の後姿が見えた。

――え?

諒は、強硬手段に出た。走ってきた事をいいことに、そのままの勢いで簡易警備機械を蹴り飛ばす。

「先に行け!!」

冬華と湯木解を逃がす。が、しかし。

「待て」

「え」

諒は、先へ行こうとするトハクの右肩を捕まえる。

「せめて、お前は残る」

「はい」

トハクは、頑張る事にした。


「報告します。残り二人」

「了解」

弐戸の報告後、濠洲敬治は通話回線を閉じた。



冬華たち、二人はひたすら走る。

――追ってこない。このまま、出口へ行……。

湯木解が気付いた時には、電子音が出口の扉から鳴り響いていた。それは、異常を知らせる簡易的なアラームだった。

――ダメだ!! 警察機械がここまで!!

湯木解と冬華のたどり着いた扉を、警察機械の弐戸の部下たちが外側から鍵を物理的に、こじ開けようとしていた。警察機械は、湯木解の使っている作業棒で阻止した、デジタルによるドアの開閉を諦めたのだ。

――仕方ない、検査室だ。

「少し戻るぞ」

再び、走る。

検査室が見えてきた。すると、湯木解は首から下げていたパスカードを手に取る。

電子音が一回。そして、扉が開いた。二人は急いで中へ。すると、扉は二人の入室後、素早く閉じた。

――ここまで来れば、大丈夫だろう。

「大丈夫か?」

湯木解は、冬華の方へ視線をやった。

「うん」

そこには、走ってきた向こうを見つめて、親友を心配する冬華がいた。

 ……。

「心配なのか?」

「……」

冬華は、しゃがみこんで涙を溜める。そんな彼女の顔を湯木解は覗き込む。

――涙。光の反射が増えていく。宇宙みたいだ。

 ……。

「はぁー」

湯木解は溜め息をつきながら、壁にもたれて座った。

「風」

そして、ぽつりと一言つぶやいた。

「風?」

その言葉に冬華は、顔を上げる。

「向こうでお前が、苦笑していた時の会話」

それを聞くと、冬華は再び俯いた。

「諒に話したの、地球時代の時。自由じゃないよって」

「……」

「どう思う?」

冬華は、湯木解を見つめて尋ねてきた。

「あいつも、同じ意見か?」

湯木解は、冬華とこの宇宙コロニーへやって来た諒の事が気になっていた。

「うん。私の意見を尊重してくれる、親友」

――親友ねぇー。なんか、ずりぃ。

湯木解は、腕組みをして目線をそらした。

「?」

冬華は、そんな湯木解の方を見た。

――困る。これが仕事仲間(=機械たち)の言っていた、躍動か?

湯木解は、右手で顔を少し隠した。




「〈躍動〉なの?」

トハクは、諒へ尋ねた。

諒とトハクの二人は、先に検査室へ隠れていた。間一髪で警察機械たちをまいていたのだ。周りには、倒された警察機械の簡易警備機械が少しながら横たわっていた。

「そう思うけど?」

「?」

「躍動の理由は、もう見つけたし」

諒は、動揺する事もなく、壁にもたれてトハクの問いに答えた。

「それで!?」

「言う訳ないだろ」

諒は、バッサリと問いをかわした。


……。

すると四人は、目が合ってしまった。

……。


「いるなら、いると、言えーーー!!」

もしかして、今までの会話が聞かれていたんじゃないかと思った湯木解は思わず叫んでいた。

すると、サイレンが響いた。

……。

「見つかったみたい」

冬華は、再びスピーカーを見上げる。

――どうするんだよ。

この状況に、諒は困り果てた。


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