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アンドロメダと天の川  作者: 津辻真咲
12/18

地球時代の機械(なかま)

12.地球時代の機械なかま



突然の電子音で静かな空間が揺らぐ。

――メール。

オーストラリア連邦出身のオセアニア州代表である機械の男子、アーズ・ロークスの元に、ドイツ連邦共和国出身の欧州代表である機械の女子、シーラ・ルコ・エンスターズからメールが届いた。


《アジア地区の宇宙コロニーを見つけた。その他の宇宙コロニーの対応をよろしく》


――了解。

 彼は、淡い躍動きもちを人工知能の中でエンドレスリピートで巡らせていた。彼は、言葉というより感覚で思考するので、プランク単位系で大量の情報を処理できる。

しかし、彼は自分の躍動に実直すぎて、〈考えずに行動〉が主なパターンになっているので、この永遠のループに気付かないでいた。

「どうしたんだ、アーズ?」

そんな彼の様子に気付いた、親友のレート・リーフは話しかけた。

「あ、いや、大丈夫」

「そうか」

彼は簡単な回答しかしなかったが、レート・リーフはほっぺを上げる。

「それで、欧州地区から連絡がありました。アジア地区を見つけたそうです」

「分かった」

重要な連絡はきちんと敬語で伝える彼に、レート・リーフは、ほっぺを上げたまま。

「それで、僕たちはこの座標112で待つそうです」

「分かりました」

必要事項を聞いたレート・リーフは、作業へ取り掛かった。一方、アーズ・ロークスは、ふと視線を移動させた。

――あの隣の宇宙コロニーは、一体。

そして、強化ガラスの窓の外を見ながら、目を輝かせた。



人類・アンドロメダ生命体 宇宙コロニー内。

湯木解を先頭に、皆はひたすら走る。

――ここを曲がれば、人類側植物PLANT!!

角を曲がると、人類の等身大の普通のゲートがあった。スタッフ用だ。

湯木解がパスカードをかざし、扉を開けた。

「早く入れ!!」

数人入る。そして、扉が閉まった。次の瞬間。


警察機械の簡易警備機械たちが、その閉まった扉に次々と衝突してきた。それを見て、湯木解は冬華たちを自分の後ろへとかばった。

 ……。

白煙が少し上がり、扉が変形していた。そして、その扉の向こう側、廊下の方では、壁内の収納機械たちが変形したドアの修理へと作業を始めていた。

「濠洲敬治。四人、植物PLANTへ逃げ込みました」

「分かった。報告ありがとう」

アンドロメダ側担当の濠洲敬治は、人類側担当の弐戸にことの通話回線を閉じた。



人類側植物PLANT内。

――ここは。

「辺り一面、緑色……」

――まるで、地球の資料室。

「あ」

冬華が声を上げる。しかし、PLANT内に入れた人物たちも同じ事を考えていた。


《自分たち四人しかいない!!》


「管理人工知能の二人と、人類側エリアの二人、アンドロメダ側の方、そして、黙人ですね」

トハクは、未だに変形している扉の方を見て言った。

――マス・ディーア、リーカガ・久我、真黒疎斗、瀬井霜、リーテ・ィュ、そして、久崎黙人。

諒は、扉を見つめているトハクと冬華の二人を黙視していた。

「行くぞ」

その声に三人は、振り返る。それを確認もしないで湯木解は、緑色のまだ若いライ麦の中の細い通り道をかき分けるように進んでいった。それを見て冬華たちは、辺りを見渡しながら、湯木解のあとをついて行く。



「どなたですか?」

すると、ある一人の若い人類の男性が姿を現した。

「じじぃ」

「うるせーよ」

湯木解の一言に彼は、鋭く反論する。

「幼なじみですか?」

「んなわけねぇーだろ」

二人は、質問をした冬華の方へ振り返って、必死に否定した。

「俺のじぃちゃん」

 ……。

皆、なぜか無言になった。

「何だよ?」

湯木解はその反応に困っている様子だった。

「何か、双子みたいですね」

再び冬華は、能天気に和んでいた。

――こいつ、何で驚いて欲しかったんだろう?

諒は、少し戸惑った。

湯木解の考え(=人類が不老不死になっている事を知らないだろう…と、自身の祖父は自身の外見とあまり変わりないように見えているだろう…)に。

「じじぃ、こいつらの事助ける?」

「お前、そんな事している暇があったら、働けよ。やっと修理員になったんだから」

「ゔ……」

湯木解は自身の祖父である、湯木積ゆき つもるの言葉に何も言えなかった。

「なので、私が助けます」

祖父は、きっぱりと言う。

「おいー!!」

湯木解は、祖父の湯木積の言動に少し声を大きくして、言い返した。

「それで君たちは、何があったのですか?」

孫をからかっているのかは定かではないが、彼は湯木解を無視。

「あの全システムへの攻撃要請の時の侵入者だよ」

湯木解は、祖父に説明をする。

「あぁ、そうだったのか。大変だったなぁー」

祖父は、目を少し大きくして驚いた。すると。

「こっち来いよ。植物PLANTのもう一つの出入り口へ案内するよ」

湯木解はそう言って、冬華の右手を引く。

「え、あ……、ありがと」

冬華は、強引に手を引かれて少し戸惑う。

――ほほぅ、そういう解釈でいいのかな。あいつ、私に似て強引だなぁー。

湯木積は、少し微笑むと、孫の言動に対しての嬉しさを胸に、仕事へと戻った。



 冬華たちは、緑色のPLANT内を歩いていく。

「辺り一面、ライ麦?」

冬華は尋ねる。

「まぁな」

「ここも風って吹くの?」

再び、尋ねる。

「あぁ、人工風が必要に応じてな」

「そっか」

彼女は、なぜか苦笑した。

「?」

――何か、隠してる。

湯木解は、苦笑の理由を尋ねなかった。そして緑の中、四人は歩いていく。

――風、か……。

諒は、表情を険しくした。



地球時代 資料室。

「ねぇねぇ」

「何だ?」

諒は、冬華の方を見る。

「この物語に〈風になりたい〉って書いてあるよ?」

「だから?」

「何で?」

「〈自由〉だからだろ?」

「何で?」

「え?」

「決められたコースしか通れないよ? 大気に合わせて」

「……」

「自由じゃないじゃん」


自由は、思考に宿る。信念に宿る。個々の意志に宿る。


全ては、自由を勝ち取る為。電波の主も。機械も。生命体も。




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