人類側エリアの機械たち
11.人類側エリアの機械たち
「あのー、どこへ行くの?」
「まだ、アンドロメダ側のエリアにはたくさんの警察機械がいるから一旦人類側の機械エリア内で移動していましょう」
マス・ディーアが先頭を行く。
「そっか」
冬華は納得して答えた。
「……」
――何でついて来てるんだ?
諒は、湯木解の方を見て思っていた。
「お前、まさか俺が何でいるんだと思っているだろう」
湯木解は眉をひそめる。
「あぁ」
諒は鋭く相槌をうつ。
「お前らが破壊されないようにだよ」
「本当!?」
湯木解がそう答えるや否や、冬華は目を輝かせて二人の方へ振り返る。
「……」
――何でお前嬉しそうなんだよ。
諒は、少し苛立った。すると、それを一番後ろからじぃ~っと見ていたリーカガが一本調子で言い放つ。
「何でお前、苛立ってるの?」
「何」
返す言葉に戸惑った諒をリーカガは黙って見ていた。
「……」
そして、諒はそのまま黙って立ち尽くした。
「みんなー 置いて行くよー」
だいぶ差の開いた、遠くからマス・ディーアが皆を呼ぼうと叫んでいた。
「お前ら、いい加減にしろよ」
湯木解は、そう言って二人を置いて先に進む。
「行きますよー」
冬華も振り返り、手を振る。
それに態度で答えるかのようにリーカガは平然と歩き出す。
――ちっ。
諒は動揺して、少し後ろで足を止めていた。彼は感情、特に苛立ちを隠すのが得意である。なので、今回は不意を突かれたようだった。しかし、これが何の動揺かに気付くのに、時間はかからない筈である。
冬華たちは、ひたすら歩く。すると、冬華はある事に気づく。
――あれ? この辺りって。
「こんにちは」
――やっぱり。
諒は右手を顔に当てる。考えが的中。
「あ!! 管理人工知能さん、こんにちは」
清掃専門に特化した機械である、瀬井霜は笑顔であいさつをした。
冬華たちは、どうやら自分たちが最初に侵入してきたエリアにまで戻って来たようだ。
「こんにちは」
マス・ディーアは社交的に笑顔で答えた。
「はじめまして」
一方、リーカガはやっぱり真顔だった。
――末端機械たちとは初対面か。それもそうか。人工知能なんて数十億っているからな。
諒は、一番後ろから眺めていた。
「瀬井霜さーん!! もう一度床の掃除して下さーい!!」
「あ!!」
冬華たちがそちらへ振り向くと、遠くから真黒疎斗が走って来るのが見えた。すると彼は、こちらに近づくにつれ、足を止めていく。
「……1秒が、プランク時間だ……」
彼はマス・ディーアを見て固まる。
――どういう思考回路だよ。
瀬井霜は、横目で真黒疎斗を見て呆れた。
「へぇー」
諒と湯木解は、並んで同じような事を思っていた。
「どういう意味ですか?」
マス・ディーアはきょとんとしている。
「あ、何でもないです」
真黒疎斗は顔を赤くして、下を向いてしまった。
すると、突然、電子音が数回鳴った。マス・ディーアとリーカガの二人は、驚いた様子で情報端末に目を向けた。
「どうしたの?」
冬華が問う。
「この通路が新しく、検問へ向かう警察機械の通過地点になった」
リーカガが坦々と話す。
「どうしようか?」
マス・ディーアはリーカガの方を見て、視線で意見を求めながらも、自分も考え込んだ。
「あの、それなら僕のいる小型シャトル専用ゲートへ来る?」
「?」
マス・ディーアは真黒疎斗の方を見た。
「僕のいる所ならいざという時、小型シャトルを使って逃げられるし、そのまま反対のアンドロメダ側の小型シャトル専用ゲートまで行けるよ?」
「よし、それにしよう!!」
仁王立ちで腕組みをしたリーカガに続いて、冬華は笑顔で右手を上げた。
そんな中、湯木解は少し遠くから元気な冬華を見て微笑んだ。
皆は白い廊下を歩いていく。
「……」
冬華は、たどり着いた小型シャトル専用ゲートを見上げた。すると、先導していた真黒疎斗は右手の内蔵型のパスカードをかざした。
電子音の後に扉が開いた。
……。
しかし、皆、その光景に愕然とした。
そこには警察機械の簡易警備機械がたくさん敷き詰まっていた。サイレンと共に、簡易警備機械のランプが回る。
――ちっ。
諒は、表情を険しくした。
「みんな、こっちだ!!」
湯木解が一番後ろから呼びかけた。
「え!?」
振り返る冬華の右手を掴み、湯木解は走り出した。
――どうして、バレたんだろう?
マス・ディーアは走りながら考えていた。すると、リーカガの方から電子音がした。そして、そちらを見る。
「きっと小鳥遊長官のせいだな。シャットダウンした情報セクターの機械たちを復旧させたのだろう」
「どこへ逃げるの!?」
自分の手を引く湯木解に冬華は尋ねた。
「いいから、来い」
そのあとを皆も走ってついて来る。警察機械たちが後ろへ迫って来ていた。
――もうすぐ、人類側の植物PLANT。
地球アジア地区 宇宙コロニー内。
「ねぇ、晴嵐」
「どうしましたか?」
家入夏季の呼び声に、晴嵐凍空は立体映像で姿を現した。
「向こうに宇宙コロニーがいくつか見えるよ」
家入夏季は巨大な強化ガラスの展望台から、外の宇宙空間に浮遊している宇宙コロニー群を指差した。
「え?」
晴嵐凍空は監視カメラで目視した。
「本当だ」
――一体、どこの宇宙コロニー?
すると、電子音が響く。
――この電波は!!
「どんな内容でしたか?」
夕陽・ウォーレンは少し近づいて尋ねてきた。それに、晴嵐凍空は信じられない程の低い確率の〈偶然〉に戸惑いながら答えた。
「天の川銀河太陽系第3惑星地球出身だそうです」
皆も驚いた。アジア地区以外の宇宙コロニーからの電波だったのだ。
「でも、何で?」
「だって、私たち、おおぐま座の宇宙生命体さんたちの技術でこの人類の宇宙コロニーに追いついたんだよ?」
皆が一斉に質問してきた。
「それは、送られてきた電波に記載されていました」
少し静かになった皆に晴嵐凍空が答える。
「宇宙座標表で追跡をしていたら、私たちのアジア地区の宇宙コロニーが再び太陽系の近くまで戻って来ていたそうです。きっと、この宇宙ステーションとあの人類のいる宇宙コロニーの2機が、この宇宙で自然に発生した小さなワームホールでワープをしていたとのことです」
皆は、驚き気味で近くの仲間たちと顔を見合す。
「そうでしたか。でも、これからどうするのですか? 冬華と諒はあの人類のいる宇宙コロニーにいますし、その宇宙コロニーからは攻撃を受けるから近づけませんし。もしかしたら、欧州地区やその他の地区の宇宙コロニーもこれ以上近づいてきたら、私たちのように攻撃されてしまうかもしれません」
夕陽・ウォーレンは、とても心配しているようだった
「確かに、それはなんとしても避けないとね」
家入夏季はそう言い、考え込んだ。
地球欧州地区 宇宙コロニー内。
「やっと見つけた、冬華」




