淀んだ校舎(保健室)
目を開けるとそこはボクの部屋ではなかった。
ここは……学校?
ボクの通っていた学校だろうか?だがそれにしてはやけに暗くてジメジメしており、息がつまりそうなほど空気が淀んでいた。ボクは起き上って、キョロキョロとあたりを見回す。どうやらボクはベッドに寝かされていたらしい。ここには、ボクが寝ていたものも合わせて3台のベッドがあった。そのほかには、何かの薬品が入った棚や、体重計などがある。おそらくここはどこかの学校の保健室なのだろうと推測できた。
ボクは、ボクの現状を整理してみる。確か、ボクの部屋に生首があって、それがしゃべって……
さらに詳しく思い出して状況を整理してみようとしたが、あの時の情景がフラッシュバックして恐怖のあまり悲鳴をあげてしまいそうになった。これ以上やってもしんどいだけだと思ったので、思い出すのはやめにしておくことにした。
何もすることが無いので部屋でボーっとしていると、不意に、廊下からパタパタと足音が聞こえてきた。こっちに近づいてきていた。一体何なのかは分からないが、とりあえずボクは布団に隠れることにした。ガラガラガラと音がして扉が開かれた。そして、遠慮がちで囁くような声がした。
「ケイ君~?起きてる~?」
聞いたことのある声だった。この声の主は……
「ひい……らぎ?」
ボクは布団から顔を出してみる。そこにいたのは間違いなく行方不明になったはずのボクの幼馴染、柊彩乃だった。
「よかった。ケイ君、気がついたんだね。私、心配したんだよ?」
そう言って柊はうれしそうにニコニコ笑っていた。ここ数日の恐怖や心配が一気に安堵に変わるような柔らかい笑顔だった。
「柊、ボクたちに一体何があったんだ?」
「ごめんね、私にもよく分からないの。私は、その……生首を……見つけて、気づいたらここにいたの。ケイ君も?」
よほど思い出したくなかったのだろう、柊はしかめっ面でうつむいて、そして蚊の鳴くような小さな声でそう言った。
ボクは返事をするかわりに小さく頷く。言葉にしてしまうとボクまで思い出してしまいそうだった。
「じゃあさ柊、ここっていったいどこなんだ?」
「ごめんねケイ君、それもよく分からなくて……ケータイの地図で調べようにもここ圏外だし。」
つまりは分からないことだらけということらしい。
「あっ、でもねケイ君、この学校の名前なら分かるよ!さっき廊下のポスターで見たの。確か『陽陰学園』って書いてあったよ!」
陰陽学園。
ボクたちが住んでいた界隈では聞いたことのない名前の学校だった。どこか遠くの学校だろうか?他の生徒は?先生は?
まだまだ疑問だらけだが、柊にこれ以上何か聞いても何も得られるものはなさそうだった。それよりも校内を探索してみた方が得るものが多そうである。
「なぁ柊……」
と口を開きかけたところで、突然部屋の中に設置されていたスピーカーから声が聞こえてきた。
「あー、テステステス。んん!えー、現在この陽陰学園にお集まりの少年少女諸君、早急に学園の第一体育館に集合しやがれくだサイ。」