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淀んだ校舎(体育館) 其の一

ボクと柊が第一体育館に着いた時には、既に数名の先客があった。そのうち二人は見たことのある顔だった。

「渚!空!」

2人はそろって「よぉ」と手を挙げて返した。

ボクは2人の元へ駆け寄った。

「柊もそうだけどみんな突然行方不明になって心配してたんだぞ?」

「いやぁ、あらゆることに関して無関心でめんどくさいとしか思わないヨミに心配してもらえるなんて光栄だよ。」

空は相変わらずのニヤニヤ顔で応える。このニヤニヤ顔を久しぶりに見たような気がしてなんだがほっとしたような気分になった。

その後も4人でとりとめもない話をした。まぁ当然ながら4人の再開?であるこの時に、生首を見つけてしまった時のことを聞くような野暮は誰もしなかった。


やがて体育館には11人が集まった。誰もかれも見たような顔だった。というのもどうやら全員ボクと同じ高校の関係者らしい。中にはなんとボクらの担任の麻乃先生もいた。大人が一人でもいてくれることは何というかすごく頼もしかった。それがたとえ普段全く頼りない麻乃先生であっても。だがこうなるとさっきの放送の少年少女諸君というセリフは一体何だったのだろう?

麻乃先生は少女って年齢じゃ…………あっ……

指摘しちゃいけないような、これには触れちゃいけないような気がするのでスルーすることにしよう。


「せっかくだしみんな自己紹介でもしましょうか!」

麻乃先生の一声で、それぞれ自己紹介をすることになった。


最初に自己紹介したのは華奢で色白で、オドオドした様子の女の子だった。みつあみのおさげにメガネといういかにも地味、といった見た目だ。

「えぇっと、わたっ、わたし!伊集院撫子(いじゅういん なでしこ)っていいます!1年です!よっ、よろひくお願いしますっ!」

人前で話すのが苦手なのか、伊集院撫子と名乗った一年生は噛みっ噛みで、話終わった後は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「すいません、この子人前で話すのが苦手なもんで。あっ、私は若宮琴乃(わかみや ことの)っていいます。この子とは同じクラスなんです。イイ子なので悪く思わないであげてください。」

と、快活そうな女の子がすかさずフォローを入れた。肩まであるウェーブのかかった栗色の髪が特徴の、快活そうでありながら、ふわっとした雰囲気を纏った女の子である。フォローを入れた後「みなさんよろしくお願いしますね。」と言って丁寧に頭を下げた。

次はいかにもスポーツ少年といった感じのガタイのいい男子だった。

「オレ、1年の縁田紅兵(えにしだ こうへい)っす!よろしくっす!あっ、オレのことは気軽に紅平って呼んでほしいっす!」

そう言ってにっこりと微笑んだ。さわやかなスポーツマンという印象を抱かざるをえないような笑みだった。

その後は、渚、空、柊、ボクの順で適当に自己紹介をした。

ボクの自己紹介の後に出てきたのは3年の女の先輩だった。かなり小柄で童顔な、中学生のような見た目の先輩だった。

「3年の桐生麻夜(きりゅう まや)と申しますわ。以後お見知りおきをよろしくお願いいたしますわ。」

なんだか、しゃべり方がいかにもお嬢様といったような感じだった。家がお金持だったりするのだろうか?そんなことを考えているともう次が自己紹介を始めた。

「しょ、小生は青木蓮也(あおき れんや)というでごじゃる。デュフ、デュフフフフ。」

小太りで背の低くてメガネを掛けていて、チェックのシャツをジーパンにインした、外見からしてアブナい人だった。喋りを聞いて確信した。この人かなりのヲタだ……


「さて、私で最後ね。」

そう言って最後の一人が一歩前へ進み出た。その顔はボクにも見たことがある顔だった。長い黒髪で、キリッとした目をしていて、整った顔立ちだ。

「なぁ柊、あの人ってさ、たしか生徒会長だったよな?」

ボクが柊に小声で訊くと柊が応えるより先に答えが返ってきた。

「その通りよ、黄泉川君?だったかしら?よろしくね。他の皆さんも、よろしくお願いします。」

そう言って全員微笑みかけた。彼女の笑みからは気品のようなモノがあふれ出ているように感じた。


「ところで私たち、体育館に来たのはいいですけどどうしたらいいんでしょう?」

全員の自己紹介が終わった後にそう切り出したのは一年の若宮さんだった。

「そう言えばそうだな、まぁ今しばらく待てってことじゃねぇの?どう思います?会長さん?」

そんなことを言いながら空は相変わらずのニヤニヤ顔だ。

「そうね、そんなところでしょうね。」

会長さんは腕組みをしながらそう答えた。



その直後、誰もいなかったはずの、体育館のステージの方から突如声が聞こえた。


「いやぁ、ミナサマ、お待たせしてスイマセン。」


そいつは唐突に、体育館のステージ上に現れたのだった。


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