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Another View 柊彩乃編



私は走った。逃げるように。

そして3階のトイレの個室に駆け込んだ。


いったい何から逃げてるの?


――――ケイ君から


なぜ?


――――返事を聞くのが、ケイ君との今の関係が崩れるのが怖かったから


そうだ、私はケイ君に私の思いを告げてしまったんだ。絶対に言わないと決めていたはずなのに。ハァハァと息が切れて胸が苦しいのはきっとここまで走ってきたことだけが原因ではないのだろう。きっと自分の気持ちを口に出した恥ずかしさと後悔からきているものだろう。


そういえば私はいつからケイ君のことが好きだったんだろう?

私は心を落ち着けて昔のことを考えてみる。

確かケイ君と初めて会ったのは幼稚園だった気がする。昔からカッコよくて、誰かがいじめられていたら絶対に助けるみたいな強い正義感があった。今だって、『何をするにもやる気が出ない』なんていって無関心キャラを演じているけれど私は知ってる。ケイ君は今でも、誰よりも正義感に溢れていて、困っている人を放っておけない人間だってことを。そういえば、無関心キャラを演じるようになったころから、ケイ君よく病院に行ってたなぁ…なんの病院かは知らないんだけど……って今はどうでもいいか。


私はその後もしばらく昔懐かしい記憶の海に浸っていた。


―――結局いつからケイ君のことが好きだったのかは分からないぁ……


考えた挙句にでた答えはそれだった。まぁ、いつから好きだったのか分からないくらい好きということにしておこう。


しばらく考え事をしていたら気持ちもすっきりしてきた。ここまできて私はケイ君を置いてけぼりにしてきたことを思い出した。心配性なケイ君のことだから、きっと私を探しているだろう。早くケイ君のところに戻らなきゃ。


私はふぅっと一息ついて個室のドアを開けた。


その刹那だった。



『みーつっけた!』



その声と同時に私の胸に鋭い痛みが走った。


「カッ……ハッ…………」


うまく呼吸ができずに口からは声にならない声が漏れた。叫んで助けを呼ぼうとするが声が出ない。ただただ情けなく口をパクパクと動かすことしかできなかった。


意識が薄れていく。視界が真っ暗になり右も左も分からず音も聞こえない。遠のく意識の中、私は最期までケイ君が大好きだった。


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