第7話 俺、スパルタの二段階目に突入しました。さて、どうしましょう?
あの後、フツルギは爆笑していたが、それも5秒ほどで収まった。
そしてその日の夜。
「み、皆さん、お待たせしました!」
夕食を準備していたアリスが、トレイに美味しそうなメニューをのせてやって来た。
「お、うまそうだな」
俺は、持ってこられた料理を見て、そう呟く。
「ありがとうございます!」
その料理とは、みんな大好き、カレーライスなのだけれどね。
いや、ほんと美味しかったんだ。冷蔵庫の中のあれやこれ、調味料棚のあれやこれの何をどう使えば、このような仕上がりになるのか、予想ができない。はたまた、調理法に違いがあるのだろうか。
母親は、次から調理をアリスに任せることにしたのであった。
翌日。
「───''jisqca marniram''!」
(魔法言語訳:───消化する火球!)
いつも通り、フツルギのスパルタ教育を受けていた俺は、今日始めて、消化する火球の発動を成功させた。
しかし、そのあとに襲ってきた倦怠感で、その場に崩れ落ち、喜ぶ気力がなくなる。
「はぁ。やっとか」
フツルギは、これでやっとか。とため息をつき、右手をなにやら動かすと、赤い液体の入った、形の特徴的なビンを俺に渡す。
「何、これ?」
「MPポット。飲んだら魔力が回復する。全快したら、使用する魔力を効率化して出来るように工夫してみろ」
「どうやって?」
俺がそう聞くと、後ろからアリスがやって来て、こう言った。
「魔力を効率化するもっとも適切な方法をお探しですか?」
「ん、ああ。いまいち、魔力を効率化するっていう意味がわからない」
肩をすくめる俺に、彼女は説明を始めた。
魔力を効率化するとは、使用する魔力量を小さくするだけではない。
小さなエネルギーで、どれ程強力な業を行うか。
それが大事なのである。
いらない情報を削減して、その事で魔法の『意味』を単純化させる。
これが、魔力を効率化するということ。
「───つまりですね、ジスカ・マーニラムの場合ですと、こうなります」
彼女はそう言うと、スペル詠唱を開始する。
「''jisqca marniram''」
(魔法言語訳:消化する火球)
アリスが唱え終わると、山が一つ、巨大な炎の球に消えていき、その球も消えていった。
ジスカ・マーニラムが、発動していたのだ。
「そして、さらに効率化するなら...」
フツルギがいつの間にか修復した山が、彼女の指弾と同時に、一瞬燃えて消えた。
「お見事だよ、アリス。...ほら、一記もチャレンジする!」
(無理だろ、おかしすぎるだろ!?6小節あったのに、それを指弾とか1小節で終わらせるとか、普通無理だろ!?)
俺は、アリスの規格外さに、尻餅をつくのであった。