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「ねえ〜、見た? 今朝方に登城した人!」

「えっ、どんな人?」

「天使様みたいなイケメン神官! 本当に目の保養だったわ」


 昼休み。使用人用の食堂は実に姦しい。

 今は侍女の休憩時間だから尚更だ。テーブルの上にそれぞれサンドイッチや果物を並べ、噂話に花を咲かせている。

 王室事務官の私もそんな彼女たちの輪に入れてもらい、話を聞きながらサンドイッチをかじっていた。


「……お疲れ様です……」


 と、そこに暗い雰囲気の侍女がまたひとり入ってきた。

 彼女の雰囲気に誰もが目を丸くし、慌てて彼女の席を空けて彼女のことを囲う。


「どうしたのよ、マルーシャ。元気ないじゃない」

「何かあった?」

「彼が……また浮気を……」


 マルーシャが涙声でそう口を開くと、周りの侍女たちは察したように頷いた。


「またぁ? あいつも本当に懲りないわね」

「仕方ないわよ、男ってみんなそう。やんなっちゃうわよねえ。で、今度はどこの誰?」

「……繁華街の花屋の子で……」

「あーーー、あの! しょうもないわねえ。あの女、どこの男にもそうやってるって見抜けないのかしら」

「後腐れなく遊ぶにはいいのかもしれないけど、病気をもらってきたら嫌よねえ」


 ボロボロと泣き出すマルーシャの背中を軽く叩き、侍女が口々にさえずる。

 明るい声音は慰めているんだか、話のタネにしているのか判別はつかない。あるいは両方なのだろう。

 何せマルーシャの旦那の浮気は今回が初めてではなく、過去にも何度もあったことだ。


「もう、私どうしていいかわからなくて……」

「あー、ほら泣かない! もったいないわよ、あんな男のために泣くなんて」

「もうさ、いっそ引っ叩いてやったら? “あんたみたいな浮気者には愛想がつきました”って」

「ほら、レティシア、他人事みたいに座ってないであんたからも言ってやんなさい」


 不意に私に話が振られる。

 急なことに私は食べていたサンドイッチを咽せそうになって、慌ててサンドイッチを飲み下した。


「いや、何で私が……」

「だってあんた経験者じゃない」

「卒業パーティーで婚約者ぶん殴って婚約破棄を突きつけた女!」

「ちょっと、またその話!? やめてくださいよ!」

「え〜? 先輩、その話何ですか〜?」

「あ、そっか。あんた新人だから知らないのね」


 私が慌てて止めるも、彼女たちは止まらない。

 でもこれもいつもの流れだ。私も制すのは諦めて、ため息をつく。


「この子ねえ、貴族学院で優秀な成績を取ったの。首席よ、首席。おかげさまで王室事務官の推薦もらっちゃって。でもこの子の婚約者はねえ、この子のそんな成功を喜べない小さい男だったのよ」


 年嵩の侍女の言葉に私も当時のことを思い出す。

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