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「ちょっと待った」
クラックさんが話しだそうとしたところで、私は止めた。
黎月もポンッと元のサイズに戻って、私の隣に座り込む。
「あ、ですが・・・」
「今はまだ話さなくていいよ。私は厄介ごとがあるかどうか知りたかっただけだから」
せっかくの旅の前にネタバレするのはあまり好きじゃない。
にしても眠いな・・・。ああ、黎月のもふもふしてたからか。相変わらずベッドにさせてもらっている黎月の毛並みは、少し気温の下がったこの季節にも程よい暖かさで安眠へと誘ってくれる。
「ふあぁ・・・。とりあえず私はもう寝るよ、じゃあね」
なんか怒涛な一日だったな。もういいや、今日はこのままここで寝よう。部屋へ帰るのがめんどい。
ぽすっと体を後ろに倒し、黎月の白い毛並みに埋もれながら目を閉じた。
***
スー・・・、スー・・・、
目の前で寝てしまったシエル殿を見ながら、頭を悩ませる。
シエル殿が一体何を考えているのかさっぱりわからない。見た目はただの幼い子供なのに、話しているとまるで何歳も年上の人とを相手にしている気分になる。
「団長、どうでしたか? 」
「さあな、よくわからん」
「どういうことですか? 」
シエル殿を王都に誘うことはアルにも伝えてある。来歴不明の少女を同行させることに、アルはまだ不安を持っていた。
「一緒に来てもらえる事にはなったが、政治には関わりたくないと言われてな」
「事情は説明したんですか? 」
「いや、しようとしたが断られた」
「それは一体・・・」
「『厄介ごとがあるか確認したかった』だけなんだと言われた。全く訳がわからない」
「・・・本当にどういうことなんでしょうね」
まだあの歳の子が、血を見てもあそこまで冷静に対応でき、まるで大人のような言動を見せるのだ。一体どんな経験をしてきたのだろうか。
「帰ったら、銀髪で青と紫の目の子が生まれた記録がないか調べてみます」
「頼んだ」
しかもあの魔法。ところどころ使っていたが、見る限り無詠唱だ。宮廷魔法使いでも上位一握りしか使えないはずだが、なぜシエル殿が?
というか、
「そもそもなぜ子供がこんな森の奥にいるのだ? 」
「口減らしに捨てられたのかもしれません」
「あり得るな」
「それは違う」
「だったらなんで・・・って、は? 」
「でしたらなぜ・・・え? 」
突然後ろから聞こえた声に驚くと、声の主は巨大な竜型の魔獣だった。厳密に言えば竜とも違う形をしている。
「シエルはそなたらには理解できない存在じゃ。調べてもなにも出てこんぞ」
「あなたたちはなぜ・・・」
この魔獣達は総じておかしい。喋れるというだけでも仰天したというのに、魔法の扱いに手慣れすぎている。
シエル殿に聞いたところ、彼らが魔法の師だと言っていた。魔獣が人間に教えるなんてこと、バカの俺でも変だとわかる。
「我らは創造神の意思を受けて、シエルの側にいるだけだ」
「はあ・・・? 」
「ですが、あなた達のように喋れる魔獣は例がありません」
頭がハテナで埋め尽くされている俺の代わりに、アルが会話を引き継いでくれる。
「私達は魔獣じゃないわよ! 」
いつの間にかいた赤い鳥も参戦してきた。
「あんな低能な奴らと一緒にしないで頂戴! 私達は神獣よ! 」
「しんじゅう? あの神獣ですか? 」
嘘だろ、伝説の存在だぞ?
「その神獣よ! 私は紅羽。フェニックスよ」
「我が名は常夜だ。種族的に言えば龍である」
「あの冷たそうな奴がペガサスの白氷で、あのふっさふさなのがフェンリルの黎月よ! 」




