39.王女様とのお茶会
ベン様とのお出かけから数日が経った。
毎日音楽団での練習に参加して、ピアノを弾いている。
練習が終わって手も頭も疲れ切った状態で公爵家へ向かう。
「おかえり、アイラ」
「ただいまです」
今日は公爵の執務の予定があったために練習には不参加だったベン様が出迎えてくれた。
凛々しいベン様が私に優しい笑顔を向けてくれると、安心できる。
「リーナ王女からアイラ宛に手紙が届いていたぞ」
「リーナ様から……」
王族から手紙をもらうなんて実家にいた頃は想像の付かないことだった。
手渡された封筒を震える指で封を開く。
「お茶のお誘いを受けました」
折角のお誘いだから受けたいと思うが、王族とのお茶会は流石に緊張してしまう。
「今からでも緊張してきました……」
「そんなに気負う必要はないと思うぞ……」
ベン様はリーナ王女は温厚な方だと言ってフォローをする。
それでも、あんな気品溢れる人と話す気が張るものだと思う。
「大丈夫さ。君は素敵な女性だから」
「そうですかね……?」
「あぁ。朗らかで魅力溢れる女性さ」
そう言ってベン様に頭を撫でられると、顔から火が出そうな位に恥ずかしく感じる。
「それじゃあ、出席しようと思います」
「あぁ。楽しんでくると良い」
「はい!」
私は月明かりに照らされた自室でお返事の手紙を書く。
実家に居た頃にやっていた書類作業の時よりも綺麗に丁寧に筆を進める。
だけど、リーナ様とのお茶会の様子を想像すると気分は軽い。
「楽しみだなぁ」
どんなお話をしようか考えていると、自然と夜は更けていった。
それから、3日も経たずにリーナ様から返事が来る。
詳細な日程が決まると、その日が楽しみで仕方なかった。
「どれを着て行こうかな」
ベン様に買ってもらった沢山のドレスから何が良いかを選ぶ。
色々迷った末、淡いピンクでレースのドレスに決定する。
リーナ様から庭園で採れた押し花を送られてきたことが決め手になった。
「すごい……」
人生で初めての王城の迫力に圧倒されてしまう。
公爵家よりも大きな堀で囲まれている綺麗なお城に言葉が詰まる。
中に入っても、埃一つない綺麗な空間に息を呑む。
「いらっしゃいアイラ」
「今日はよろしくお願いします」
「堅苦しい場にするつもりはないから、普段のアイラのまま接して欲しいわ」
緊張にしている私に対して、リーナ様は表情を緩めてお茶の置いてある席に案内する。
暖かい湯気と一緒にハーブの香りが澄んだ空気の庭園に漂う。
周りは草木に囲われて、とても穏やかな空気だった。
「アイラはベンのことが好き?」
「はい……すごく幸せな今があるのはベン様のおかげなので」
「ふふ、良い夫婦だね」
お茶とお菓子を楽しんでいるとリーナ様は笑みを浮かべる。
微笑むリーナ様を見ると、私の頬がほんのりと赤くなった気がした。
「久しぶりにベンを見た時は別人かと思ったよ」
「そうなんですか?」
「ああ。昔は仕事人間で冷淡な印象だったさ」
確かに初めて会った時よりも今の方が笑顔でいることが多い気がする。
「素敵なお嫁さんができたからこそ、ベンは幸せだと思うよ」
「そうなんですね……」
「だから、アイラとベンは良い夫婦に見えるよ」
そう言ってリーナ様はとびっきりの笑顔を浮かべた。




