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37.あーん

 お店の中は人でいっぱいだった。


「十数分待つそうだが、どうするか?」

「私、ここがいいです!」


 そう言って辺りを見渡すと、みんな美味しそうなケーキを食べている。

 既に私の頭の中はケーキでいっぱいになっていた。


「楽しみか?」

「はい!」


 私はお店のショーケースに並ぶケーキに目を奪われる。

 そんな中でベン様から視線を向けられていると感じた。


「どうかされましたか?」

「アイラがとても目を輝かせているから、ここに来て正解だと思っただけさ」

 

 ベン様が優しい表情で私を見つめると、席が空く。

 空いた席に案内されて、メニューを手渡される。


「どれも美味しそう……」


 沢山食べたいものがある中でようやく二つまで絞ることができた。

 だけど、苺のショートケーキとチョコのケーキのどっちも捨て難い。

 どっちを選ぶべきか悩んでしまう。


「どっちにしよう……」

「俺が片方を頼むから、分け合えば両方食べることができるぞ」


 そんな言葉に私は目を輝かせる。

 ベン様は店員さんを呼ぶと、私は厨房をずっと見つめていた。


「早く来て欲しいですね」

「そんなに焦らなくてもケーキは逃げないぞ」

「うぅ……早く食べたいです」


 ケーキのことを想像すると、待ち遠しくて仕方ない。

 周りのお客さんは美味しそうにケーキを食べている様子を見え、羨ましく感じた。


「おっ、来たみたいだな」


 ベン様の目線の先を見つめると、店員さんが二つのケーキを運んでいる様子が見える。


「いただきます!」


 ふわふわとしたクリームにフォークは吸い込まれていく。

 小さく切ったケーキを口の中に運ぶと、とろけるような食感と絶妙な甘さの組み合わせで幸せが身体中を駆け回った。


「ん〜! 美味しい!」


 夢中になってケーキを味わっていると、ふと男女二人組の様子が目に入る。


「ベン様……」

「どうした?」


 私は二人の方を見ると、食べさせ合いをしていた。

 

「その……あの二人みたいなことをしてみたいです」

「ああ。構わないぞ」


 最初は何気ない表情を浮かべるベン様だったが、ケーキの乗ったフォークを私に向けると頬が赤くなっている。

 ベン様の表情を見ていると、私も段々と恥ずかしくなってきた。


「小っ恥ずかしいな」

「そうですね……」


 私は目を瞑って一思いにケーキを頬張る。

 口の中にはチョコレートの甘さと幸福感が広がった。


「あっ……」

「どうした?」

「な、何でもないです!」


 ふと、ベン様とのキスの味を想像してしまう。

 恥ずかしさで頭の中が沸騰しそうで、頬は炎みたいに熱い。

 私は手で顔を覆い隠して、必死に何度も深呼吸をして心を落ち着ける。


「大丈夫か?」

「はぅっ」

「顔が赤いぞ」


 ベン様におでこを触れられると、余計に照れてしまう。

 なんとかして動揺から落ち着くと、ベン様の目には心配が浮かんでいた。


「これは危ないですね」

「そうだな」


 お互いにどこか気まずい雰囲気が漂う。


「あれ? ベンじゃん!」


 無言でケーキを食べていると、そんな声が店に響いた。

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