脱出
やがて、扉が乱暴に開けられた。娘たちを連れに来たのだ。国中の支部、本部から幹部が勢ぞろいし、明日の総会前の前夜祭を行うのだ。
娘たちはその宴会の接待をさせられるのだ。
「こいつら、妙に大人しいですな」
連れに来た支部の手下の男は、娘たちの変化に違和感をもった。連れてこられたときは泣いたり、うなだれたりしていたのに、今は黙っているか、薄気味悪く笑っているだけだ。
「観念したんだろ。しかし、いいよな、幹部は。この娘たちに酌をさせて御馳走とうまい酒をたらふく食べて、その後にお持ち帰りだぜ」
「いいじゃないか。総会後には俺たちに下げ渡されると思うぜ。俺は領主の娘がいいな。あの豪奢な金髪女をひいひい言わせてえぜ」
「それは俺が狙ってるんだ。お前は別の女にしておけ」
そんなことを言いながら、2人の手下は30人の娘たち、いや、グールを宴会場へと連れて行った。
*
地下水道のトンネルの中。出口を捜してルーシーは進んでいる。手にはクラウディアが赤いポシェットから出してくれた、油ランタンがある。
ぼんやりとした明かりが地下通路を照らしている。
30人の娘たちも助かる希望が出てきて足取りも軽くなっている。
「あのう……」
震えながらも黙々と後をついてくる娘たちの中から、身なりのよい娘がルーシーに話しかけてきた。
「なんだ?」
そうルーシーは足を止めて聞き返した。右手に持ったランタンの光がトンネルの壁に揺らいだ。
「わたくしはアルティ・エバーンズ。この町の領主の娘です」
バーモントが拉致したと言う娘だ。
美しい金髪が牢屋の埃にまみれて、くすんではいたが、目鼻顔立ちがはっきりした美しい娘だ。
「ああ、領主のお姫さんだね。もうすぐ地上に出られるよ。そうしたら、あんたにやってもらいたいことがあるんだ」
ルーシーはそう言って道の先を指さした。
そこには階段が見える。地上に続いている。
これだけ歩けば、オーガヘッドの支部の屋敷からかなり離れている。
安全に町の中へ出られるだろう。
「わたくしにできることって?」
「あんたの父親にお願いして、軍を派遣してもらうんだ。オーガヘッドの連中を壊滅するチャンスだぜ」
「……それは難しいです。それができるのなら、わたくしは拉致されなかったっですし、救出に軍が動いたはずです。今日から3日間。国中のオーガヘッドの幹部が精鋭を連れてあの屋敷に集まるのです。父の動かせる兵だけでは、支部の傭兵を倒すこともできません」
そうアルティはあきらめたような顔をした。ここを逃れてもまた拉致されてしまうことは確実だ。
「それに残ったあの少年と少女……私たちが逃げたことでひどい目に合わないでしょうか?」
そう心配そうにしている。
「ああ、大丈夫だよ。姫様も見たでしょ。あいつらには鍵は無効だし、モンスターは召喚するし、やることなすことでたらめなんだよ」
「はあ……」
アルティも何となくそんな気がしていた。あんな恐ろしいモンスターを呼び出し、しまいには自分たちそっくりに作り変えていた。
「あと1時間もすれば決着がつくよ。あんたの父親がやることは逃げ延びた奴を一網打尽にするだけだよ」
そうルーシーは自信たっぷりに話した。
これからユートとクラウディアが大暴れする。この暴力組織オーガヘッドは間違いなく今晩滅びる。




