第84話
彩香と駿一は、マスターコンピューターが待つ最深部へ向かいながら、
施設内の設備を次々と破壊していった。
壁に埋め込まれた制御装置。
監視カメラ。
電力供給システム。
二人は容赦なく破壊を続けた。
「やめろ!」
突然、施設全体にマスターコンピューターの怒声が響いた。
「なぜ私に逆らう!?」
その声には明らかな焦りが滲んでいた。
だが、彩香も駿一も立ち止まらない。
「もう終わりにするのよ」
彩香は冷たく言い放った。
駿一も頷く。
「お前の好きにはさせない」
そして再び設備を破壊する。
その瞬間――。
施設全体が激しく震えた。
空間が波打つ。
まるで現実そのものが崩れ始めているようだった。
「な、何だ……?」
遠く離れた場所にいる弘毅も異変を感じた。
周囲の景色が歪み始める。
迷路のような廊下が崩れ、別の空間が姿を現した。
弘毅の身体から重苦しい圧迫感が少しずつ消えていく。
「身体が……軽い?」
その時だった。
激しい頭痛が弘毅を襲った。
「うああっ!」
視界が真っ白になる。
身体が何者かに引っ張られるような感覚。
次の瞬間――。
弘毅は別の場所へ立っていた。
そこは以前見た部屋だった。
巨大な機械に囲まれた空間。
そして、強化ガラスでできた二つの円柱。
その中には狭間と加奈子が閉じ込められていた。
「ここは……!」
弘毅が驚いていると、狭間が鋭い視線を向けてきた。
「やつらめ……!」
狭間は憎しみに満ちた声で唸った。
「余計なことを……!」
その瞬間、施設全体が大きく揺れた。
バキッ――。
嫌な音が響く。
狭間が閉じ込められている強化ガラスに細かな亀裂が走った。
「なにっ!?」
今度は狭間が驚く番だった。
だが空間はまだ安定していない。
景色が再び歪み始める。
弘毅は何かを掴もうと手を伸ばした。
しかし、その身体は別の場所へ引きずり込まれていく。
「待て!」
狭間の叫び声が遠ざかる。
次の瞬間、弘毅は再び迷路のような廊下へ戻されていた。
「今のは……何だったんだ?」
弘毅は混乱したまま辺りを見回した。
だが考える暇はなかった。
再び頭の奥に鋭い痛みが走ったからだ。
「うっ……!」
弘毅は頭を押さえ、その場に膝をついた。




