第四話:疑惑・誤解・邂逅・認識
再び主人公視点
前書いていた内容と大きく異なりますが大元のストーリーは変わりません
今後話が展開していくに至って前の話も出てくる予定です
「何故魔族がここにいる?」
今、私は青年に剣を突きつけられ、そう質問されていた。
どうしてこうなったのだろう?
それを説明するには数十分の時を遡らなければいけない。
◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇
助けが来た後、数分経った頃におそらく剣士であろう青年によって扉は破壊された。
扉の向こうにはその青年ともう一人、魔法使いであろう女性がおり結界を張っていた。
?? オスティアの都内で結界なんて張る必要ないのに……。
まぁ何か理由があるのだろうと結論づける。
とりあえず助けてもらったお礼を言わないと……。
「やっと……でられる。えっと……どなたかは存じませんが助けていただいてあり……っ!?」
ありがとう。
そう言おうとしたとき嫌な感じがした。
何かがまとわりつく様な……。
そこに居てはいけないと直感が告げる。
それに従い右に一歩動くと先程まで私がいた所には短剣が刺さっていた。
「何……?」
一瞬何が起きたか理解できなかった。
助けてくれたと思ったら私を殺そうとした。
何故?
嫌な汗が流れる。
「避けるんですね、今の。 まさかいるのが子供だとは……しかし魔族なら別です。何故ここに居るのかは知りませんがここで死んでいただかなければなりません」
「魔族……?」
いったい青年は何を言っているのだろうか。
私が魔族……?
「ちょっと待って欲しい……私は魔族じゃない……」
「魔族じゃない? 冗談も大概にしてください。 貴方のその銀の髪と赤い瞳は何なのです? 時間稼ぎなど無駄です。 子供とは言え死んでもらいますよ」
会話をしているようでその実牽制し合っている。
殺気が浴びせられ震えそうになる。
ステータス的アドバンテージは自分にあるがこれは現実。
どこまでこのステータスが信用できるかわからない。
それに彼の言っていることに疑問を感じる。
銀の髪と赤い瞳……?
青年の言っていることが理解できない。
ゲームの中の私は黒髪黒目だった。
つまり今の私も黒髪で黒目のはずなのだ。
……ってあれ?
ゲームの……中?
まさか……!
もしかして私は今、白髪で赤眼……?
私は現実では俗に言うアルビノ体質だった。
先天性白皮症と呼ばれたそれは先天的なメラニンの欠乏により体毛や皮膚は白く、瞳孔は毛細血管の透過により赤色を呈する。
つまり白髪で赤眼なのだ。
そして似たような特徴を持つ者がこのゲームに存在している。
そう、魔族だ。
魔界に住む彼らは人の形を持つが、髪が銀色で赤眼なのだ。
しかし、魔族とヒューマンはゲーム内では良好な関係だったと思うのだけれど……。
まぁそれも今この問題を解決しないことには始まらない。
私がヒューマンなのは転生した際確認した。
なので私が魔族ではないのは確かなんだけど……。
「私は魔族じゃない! 信じて……! アルビノという体質なの!」
「はぁ……アルビノ……? 聞いたことありません。 悪あがきは程々にしてください。 生まれてすぐ死ぬのは嫌かもしれませんが元々魔族が人に戦争を挑んだのが原因なのです。 恨むなら戦争を起こした過去の魔族にでも言ってください。 それに人であるならステータス画面の一つでも出したらどうです?」
青年はさらに剣を近づけそう言った。
先程から冷や汗が止まらない。
アルビノという体質がこの世界で無い以上説明のしようもない。
それに戦争って……魔族とヒューマンが戦争したの?
何があったのだろうか……。
この世界、ゲームの中と似ているようで全然違うらしい。
というよりこの世界を今までのゲームのように考えないほうがいいだろう。
HPの概念もよく分からない点が多い以上うかつに攻撃を受けるわけにもいかない。
ステータス画面も誰にでも使えて誰にでも見せることができるみたいだ。
そうじゃないとあんなこと言わないはず。
ゲーム内ではステータスは自分にしか見れなかった。
それでいいなら最初から見せれば良かった。
何か損した気分。
「だんまりですかまぁいいです。ここで貴方は死ぬので「ステータス」すから……え?」
自分の目の前、つまりは青年の目の前に半透明のボードが現れる。
もちろん私のステータス画面だ。
そしてそこに書かれた名前と種族。
名前:ユリ 種族:ヒューマン
「え、あ、え? ヒューマン……。ホントに……?」
「ホントに。」
お互い気まずい空気が流れ始める。
人とわかった時点で幾分か殺気はましになったが、二人の警戒はまだ解けていない。
なので私も行動せずじっとしている。
というよりいい加減剣だけはどけてほしいのだけれど……。
間近に刃物があるのは心臓に悪い。
そしてその空気に耐えられなくなってきた時、意外にも口を開いたのは先程から黙っていた魔法使いの女性だった。
「はぁ……あなたが魔族じゃないにしろどうしてここにいたの? オスティアは現在立ち入り禁止だし、この部屋自体入れるような場所はなかったように思う。……ましてやあなたみたいな子供が立ち入れるはずがない」
まぁそうくるわよね……でも私にもどうしてここに居たかは分からない。
気がついたらここに居たとしか答えられないのだけれど。
そう思いそのまま答えようとした時彼女の言葉に引っかかりを覚える。
立ち入り禁止?
「待って、王都であるオスティアが立ち入り禁止ってどういうこと?」
「え? 知らないのかい? 廃都オスティアは数百年前から立ち入り禁止なんだけど……。 数百年前突如冒険者が消えたんだけどね、その時にそれを待っていたかのように魔族が攻めてきたんだ」
「その影響で瘴気が充満しちゃって入りたくても結界無しに入れないのが現状なんだけどね。」
気まずい状態から復活した彼と彼女が丁寧に説明してくれる。
え? どういうこと!? オスティアが廃都……?
数百年前に冒険者が一斉に消えた……? 唐突に?
それに魔族が攻めてきて……。
こんな流れ……ゲームには無かった。
やっぱりゲームと同じに考えない方が……。
でもどういうこと?
ギルドホームは普通に…………普通?
ホントに……?
物は私達が入れた物があった。
でもおかしくなかったか?
妙に老朽化し埃も何百年も放置したみたいに溜まっていたと自分でも思っていた。
ゲームじゃない世界だからってだけにしてはおかしくなかったか?
私達の私物はある。
でも生活感がなく、手が加えられていない部屋。
あまりにも酷い惨状……。
ならここは……ゲームをやっていた時代から数百年後の世界……?
その数百年の内に冒険者が消えてオスティアは…………っ!!
もしかして……そういうことなの……?
私が転生を望んだからここは……この世界は、物語から現実になり、
そしてプレイヤーは消え、
プログラムという守りの無くなった街は襲われた……?
そしてそれから数百年たったのが今……?
つまりここはゲームと同じような他の世界ではなく、
ゲームが現実にそのまま反映され、数百年たった世界……?
気がついたら走り出していた。
「ちょっとま……き……」
後ろで何か聞こえるがそれどころでは無かった。
階段を上がり玄関へ、そして……
扉を開けた。
そこには……
昔あれだけ賑わっていた街の面影はなく……
家は破壊され、ボロボロになった街が……
死んでいった人の魂の嘆きが瘴気に犯され渦巻いていた。
高すぎる能力がこの時は仇となった。
瘴気に犯された魂の叫び、恨みが聞こえてくる。
「え…………いや……嘘……私じゃない……違う……私は……ただこの世界に……」
『どうして助けてくれなかった!』
『力があるのに!』
『お前は何をしていた!』
『何でお前は生きている!』
『何故私達は死なないといけなかった!』
「やめて……! やめてよ……!」
死んでいった者の嘆きが……憎しみが……ユリに一斉に襲いかかる。
「違う! 違うの! 私は……私は!!」
『冒険者は私達を見捨てた!』
『騎士も全て!』
『皆死んでしまえ!』
『お前も!』
「嫌……やめて!……来ないで!!」
『生きているものは皆同じ目に合えばいい!』
『生きている者に死を!』
『全てに!』
『死を!!!!!!!』
「嫌ぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!」
私はそこで意識を失った。
そしてその時、現実を、世界を、罪を、その全てを認識したんだ。