顎の道
◇素人が気晴らしに書いた物語です
◇不定期に顎を振り回します
お疲れの方はこちらで顎を伸ばして休憩していってください――。
俺の歩みはこの大地に刻み込むことができる。
「物理的」に、だ――。
俺は恵まれている。
深い堀、二重の瞼、筋の通った高い鼻、クールな笑みを作ることができる口元、透き通るような白い肌。
そして地面を削る「顎」。
これは俺に天から授けてくれた宝物。
俺が歩みを進めると、俺の歩んだ道が示される。
この顎はここ最近手に入れた「顎」だ。
敗北を重ねるたびに伸びていく「顎」だ。
この顎は「物理的」戦闘能力値の高い武器になる。
これで俺はどんな敵と戦える。勝てる――。
最高のビジュアルと引き換えに――。
誰もが俺を見る。
誰もが俺の「顎」を見る。
現代社会では冷笑されるこの「顎」は俺にとって必要不可欠な――。
俺はこの世界を救っている「顎」の戦士なんだけどな――。
携帯画面に映るのは顎も含めてイケメンだった俺。
「――あ、あなたが勇気さん?」
「初めまして吉川勇気です」
俺はお見合いのためマッチングアプリをしている。
嘘は何1つ記載していない、画像ももちろん俺。吉川勇気。
25歳、男、好きなものはケーキ、筋トレ。
「あ、あ――」
出会う女性は上から下の顎を見て、後ずさりしていく。
こんな経験この顎が伸びるまで無かった。
「ゆ、勇気さん、とても勇気のある方ですね――」
この顎で出会い系をする「勇気」しか褒めることができない女性たち。
そしてトイレに行くと帰ってくることは無い。
この「顎」の価値の分かる女性に出会いたい――。
俺の腕時計はこの世界の歪みを感知する。
そして戦いの場へと召喚する。
顎の道が許されるのはこっちの世界かもしれない。
住人たちは俺の顎を見ると目を輝かせ、噂のイケメン戦士の特殊な「顎」に胸を躍らせる。
今回の敵に敗北してしまえばまた顎が伸びる。
もう敗北するのは嫌だ。顎がまた伸びるから。
もう勝つのは嫌だ。顎の戦闘能力値が下がり、次の戦闘で苦労するから。
現在の顎の長さは地面に道を作れるくらい。
これが丁度戦いやすい。
そう思っていた――。
「顎1つで戦っている人が居るって聞いたけど本当だった!(笑)」
「そこ守備しなきゃでしょ!」
「顔くっそイケメンなのに!(笑)」
「あ……まってこの人、あのグループ脱退したユウキって人だ――」
「顎の治療しないと!」
戦闘に加わったのは「女子高生」「美人」「ギャル」「アイドル」「主婦」の女たちがそれぞれの特殊能力「メイク」をして戦う――。
それぞれ全く違うビジュアルでメイクアップされ、それぞれ違う特殊効果を化粧で使い分けることができる。
「アイドル」24時間でも壊れない鉄壁のファンデーションは「守備」
「美人」きらめくアイシャドウで光を操る「攻撃」、口紅の色で相手を染め上げる「特殊バグ」
「ギャル」長く伸びたまつ毛のマスカラとアイラインは鋭く相手を刺す「攻撃」と厚塗りファデーション「守備」
「主婦」無駄のない化粧は全ての「守備」「攻撃」「回復」を司る万能型。
「女子高生」は化粧をしてないように見せかけた、素肌感のある作り上げられた隙の無い「攻撃」
鏡からこの世界に召喚された女たちのおかげで俺はこの戦いに「勝ってしまった」。
この長い顎軽くなり道を作ることができなくなった。
女たちは手を取り喜び合っている。
俺はこの顎が短くなったことに悲しんでいる。
今までは伸びもしない、縮みもしないよう戦いはしても敵を追いやっていた。できる限り戦闘できないまでにして。
だけど、勝ってしまった。
ギャル「まさか、あんた顎縮むの?!!!!!!!」
美人「まさかイケメンなの?!」
アイドル「あのユウキがまた見られるの?!!!!」
女子高生「絶対顎ないほうがいいじゃ」
主婦「顎無くなればファンクラブに入りたい」
化粧品「特殊能力」を使い勝利を収めた女たちは縮んだ「顎」にまた喜びを爆発させる。
長い顎をキープしたい男と、顎の長さを元に戻したい女たちとの物語――。
◇疲れた社会に尖った顎どうでしたか?評価あると嬉しいです
◇不定期更新のためブクマ推奨です




