第19話 暗殺の真相がわかったけど……
ドレイクが、王様を殺した!?
な、なに!? どういうことなの!
と驚いた私の横で、
「そうか! ドレイクが、王様を刺し殺した暗殺者だったのか!」
とリンターロが叫ぶ。
「そうよ!」と答えるユリアン。
「あの日、王様のそばにいた私とアーテナ、ソーニアの三人と、少し離れた位置にいたドレイクたち兵士は、部屋の外で騒ぎが起きると、『様子を見てくる』と言って持ち場を離れたけど。
ドレイクだけがこっそりと戻ってきて、いきなりアーテナを背後から襲って頭を剣で殴って。そのままアーテナを盾にしてソーニアにのしかかって押し倒して、ソーニアを刺し殺したの!
そして、ベッドで寝ている王様の喉を、その短剣で切り裂いたの……。
全てが一瞬のことだったわ。
そして、ドレイクが血まみれになった黒い布とマスクと短剣を渡してきて。
『殺されたくなかったら、侵入してきた黒頭巾にマスクの男が王を刺し殺した。
王と揉み合って黒頭巾とマスクがとれたけど顔を黒く塗っててて、どんな顔なのかはわからなかった』
と言えって、私のことを脅してきたの!」
と、とても悔しそうに言った。
「ドレイクのことは、同じブゴニア国出身の奴隷出身の兵士だとは知っていたけど。
そのときはあまりに怖くて、言うことを聞くしかなかったの……」
そうだったんだ……。
ドレイクが王様を殺した犯人だったんだ……。
「なぜドレイクが、王様を暗殺したんだ」
とリンターロが聞く。
「それはわからない。聞いたけど、教えてくれなかった」
とユリアンが答える。
王様の命を狙ったのが、敵国なのか、王妃なのか、貴族なのか、あるいは闇の一族によるものなのか。
奴隷剣闘士から成り上がって、警護の兵士になり、見込まれて影武者まで務めることになったドレイクが、なぜそんなことをしたのか、その理由はわからない。
いま調べられるのは、ユリアンがどうしてドレイクを刺したのか、ということだけだ。
「ねえ、ユリアン。あなたはいったい誰に命令されて、ドレイクを刺し殺したの?」
「誰にも命令されていないわ。私が憎くて、ドレイクを刺したの」
「憎くて……?」
「だって、ドレイクが王様を殺したから!」
王様を殺したから……?
「王様は、私を愛してくれた。
奴隷剣闘士だった私に闘技場に気づいてくださって、奴隷の身分から救い出してくれたの!
王様に愛されて、私とっても幸せだったの! だから王様の子どもを産むことが、私の夢だったのに!
ドレイクが王様を刺し殺し、私を脅して、見張りを兼ねてそばに置いて、挙句の果てに私を抱いたの!
王様を刺し殺したその手で! ぜったいに許せない!」
と悲痛な想いを言葉にする。
「だから、ずっと王様を刺した短剣を忍ばせて、殺せる機会を狙ってたけど。
ドレイクはずっと何かに怯えているようで警戒してて。
やっと今日、油断して酒を浴びるように飲んで、バカみたいに横で寝たから、ついに復讐を果たせたわ!」
と言うと、「あーっはっはー!」と大声で笑い出した。
そのユリアンの姿が、滲んでよく見えなくなる。
あ、あれ、そうか私、いま泣いているんだ。
ソーニアが死んでも、王様が死んでも、ショックは受けたけど、泣かなかったのに。
自分の故郷を征服して、奴隷になる原因になった王様に、恋をして。
同じブゴニア国の生まれで、奴隷から影武者、そして暗殺者になった男を刺し殺した、この少女のことを思って泣いているんだろうか、私は。
栗毛色でふわふわの髪を振り乱し、狂ったように笑い続けるユリアンを、アーテナと、いまいち事情がわかっていない兵士が、外に連れ出していった。
ユリアンは、グンペーイ王国に帰ったら、ドレイク殺しの裁きを受けないといけないだろう。
こうして影武者のドレイクが帰国の途中に死んだことが、スパイを通じて王妃様に伝えられると。今回は、王様が亡くなったということになって、国の内外に向けて大々的に発表された。
それまで勝利の歓喜に沸いていたグンペーイ王国全体が、文字通り「お通夜」になった。
私たちも、救国の英雄として持ち上げられていたけど、王様を暗殺者にみすみす殺されてしまった間抜けな護衛たちに転落して、周りからは失望の目線を浴びることになった……。
重い足取りで帰国の途に着きながら、これは国に戻ったら縛り首かもなぁ……、逃げちゃおっかなー、なんて考えていると。アテーナと一緒に、リンターロから呼び出された。
そして、リンターロから、意外な相談をされることになった。
「ヨーコ、アーテナ。さっき王妃様からの使者がきて、カーウラ将軍とアグリーナが隠れている場所がわかったそうだ。
それで、これから俺と一緒に二人を迎えに行ってほしい」
と、青ざめた顔で私たち二人に言ってきた。
それで、リンターロと私、アーテナ、それにドンちゃんとシーラだけで、この数日歩いてきた道を引き返して、まだブゴニア国に潜伏しているカーウラ将軍とアグリーナを迎えに行くことにした。




