第1話 朝、起きたら異世界にいた
私の目の前に、巨大な真っ黒なドラゴンがそびえ立っている。
私はいま、上半身と下半身をビキニ・タイプの鉄の鎧で隠しているだけで、ほほ裸(恥ずかしい)。
それで剣を握って、ドラゴンに正面から向き合ってるわけなんだけど。
なんで、こんなことになったんだっけ!?
さかのぼること数週間前、それは私が高校を卒業した次の日。
「ここはどこ…?」
昨日の夜、卒業パーティーを終えて家に帰って寝たはずの私なんだけど。
気づいたときには、制服を着て、霧の立ち込める森の奥深くを歩いていた。
スマホがないので、どこにいるのかも、わからない。
その森を抜けた先には、のどかな街並みが広がっていた。
だけどそれは、阿部寛が出ていた映画『テルマエ・ロマエ』で見たことのある、古代ローマの街並みに近かった。
驚きながら街中をふらふらと歩くと、なんか見たこともない生き物(モンスター?)が荷車を引いていたり、空を飛んでる巨大な鳥? 爬虫類? なんかもいて。
街の人も、基本人っぽいけど、それっぽくない人も交じってて……。
ここって、たぶん異世界だよね!?
そのまましばらく歩いていたら、制服が珍しいのか、街の人からじろじろ見られてて、屈強な警備の人たち? がこっちに走ってきて、捕まってしまった。
それで、あっという前に巨大なお城の中に連れてかれて、えらそうな濃い顔の細マッチョの前に引きずり出された。
その横にいた、スケスケな白い服にベールで顔を隠した女の人が、私の目の前に近寄ってきて、何かの呪文を唱えはじめた。
で、何か儀式っぽいことを行うと、美人っぽい女の人がイケメンに、
「グラーデウス王、この者は間違いなく異世界から流れ着いた異世界転移者です。
その属性は『勇者』、特性は『秘めたる力』というお告げが出ました」
と言ったんだけど。なにそれ……?
で、細マッチョのグラーデウスと呼ばれた王様が、
「勇者? この華奢な子どもが? リウィーア、とてもそうは見えないが」
と、横にいる美人にむかって失礼なことを言う。
あれ、そういえば私、言葉がわかってる? みんな、日本語ができるの?
「見た目は平凡な少女ですが、なにか秘めた力を持っているようです。
ひとまず剣闘士として育ててみてはいかがでしょうか」
とリウィーアという女の人がグラーデウス王に答えると、王様が私を見て、
「名前はなんと言うのだ」
と聞いてきたので、
「南陽子です」と答えると、
「では、ミナミ・ヨーコ、いまから私の戦士として忠誠を誓え!」
と偉そうに宣言する。
え、イヤなんですけど!
と抵抗したけど、無駄だった。
ということで……。
私は、異世界で強制的に剣闘士になることが決まった(がーん)。
この世界は、古代ローマ風の街並みだけど、魔法を使える聖職者や魔法使いがいるらしい。
モンスターがいたし、エルフやドワーフといった人以外の種族もいる世界のようだけど。
私がたどり着いたこの国はグンペーイという大きな国で、人間たちが支配している。だからか、人以外の種族を街中で見かけることはあまりない。
そして、けっこう暑い! 太陽が一日中ギラついてて、最近の日本の夏みたい!
だからなのか、街の人は軽装っていうか露出が高い人が多くて、たぶん白人なんだと思うんだけど、肌は日焼けしてて褐色な人が多い。
髪の色も金髪だったり、黒かったり、まちまちだ。
まー、この世界が地球なのか、街の人が地球人なのかも、よくわからない。
それで、私みたいにこの世界に流れ着く、異世界転移者と呼ばれる人が、年に数人は現れるらしく、珍しくもないようだ。
異世界に流れ着いたときに、「神の祝福」として何らかの力を与えてもらえる(言葉がわかるのもそれっぽい)ので、わりといい暮らしができるみたい。
私のことを調べた聖女のリウィーアという人から、私が秘めた力を持っていて、戦士に向いている、と言われたけど。
たいして速くもなかったけど、高校まで陸上部だったから、普通の女子高生よりはスポーツはできるほうだと思うけど。いきなり戦士は無理じゃない?
で、まず連れていかれたのが装備の倉庫で、案内してくれた大柄のアーテナという女性から渡された防具が、鉄のビキニだった。
「なにこれー!
エロい! ちっちゃ! こんなの防具でもなんでもないじゃん!」
とクレームをつけたんだけど。
「これ以外に、女性用の防具はないよ?
いやなら、裸で戦うことになるけど?」
「……わかりました」
こうして、私の異世界での生活がはじまった。




