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幾何学の犠牲、震える覚悟

閉ざされた空間での“真実”。


そして――その外側では、すでに動き出している。


アレンたちは、ついに5iの中枢へと踏み込む。


準備は整っている。


覚悟もある。


だが、それでもなお――未知は消えない。


踏み入れた先に待つのは、

人ではない脅威。


進化し、適応する存在。


そして試されるのは、力だけではない。


それぞれが背負ってきたものすべて。


これは潜入ではない。


“到達”のための戦い。

(アレン)


心臓が、まるで戦場の太鼓のように打っている。


一拍ごとに、ひめかが囚われている時間を刻んでいく。一秒一秒が、測られた苦悶だ。


学園長室へ戻った。権威は失われていたが、重要性は残っている。学園長はまだそこにいた。僕たちを待っていた。その顔は、完全な後悔の仮面だった。


「アレンくん」


前置きなしに、学園長が言った。


「君はその目をしている。もう許可を求めない者の目だ」


「儀式をしている時間はありません」


予想以上に荒い声が出た。


「5iの基地に入る必要があります。鍵、コード、アクセスを得られる何か」


学園長はゆっくりと首を横に振った。本当の無力さを示す仕草だった。


「アクセスは持っていなかった、アレンくん。彼らとの取り決めは……不干渉であって、協力ではなかった。メインエントランスの場所は知っているが、セキュリティシステムは5iのもので、アカデミーのものではない」


くそ……。


パニックが心に爪を立てようとするのを感じた。純粋な意志の力で追い払う。


「じゃあ、どうやって……?」


「テクノロジーだ」


学園長が言った。降伏以来初めて、かつての戦略家の閃きを見た気がした。


「アカデミー全体が、核心において技術的だ。もし誰かが内部からシステムをハッキングできれば、アカデミーのネットワークを橋として使って……」


学園長が言い終わる前に、もうスマホを取り出していた。


ケンだ。ケンしかいない。


指が画面の上を飛ぶ。メッセージは短く、直接的で、必死だった。


『研究棟下の5i基地入口。今すぐハッキング必要。全アクセス』


返信は数秒で来た。


『もうやってる。3分くれ。回線開いとけ』


3分。


3世紀にも感じられる。


「行くぞ」


廊下で待っているアヤ、エリザ、かんなの方を向いた。三人の顔には、僕が感じているのと同じ緊張が浮かんでいる。


「走る」


研究棟への道は、あまりにもよく知っている迷路のような通路だった。角を曲がるたびに、戦闘の記憶が蘇る。窓からは、もう二度と同じにはならないアカデミーの景色が見える。


応用科学セクターへ向かう角を曲がったとき、横の交差点から二つの人影が現れた。


思わず立ち止まり、つまずきそうになった。


「小次郎!? しずく!?」


小次郎が頷いた。少し息が荒い。彼も走ってきたんだ。


「アレン先輩。僕たちも一緒に行きます」


「ダメだ」


拒絶は即座だった。内臓から湧き出るような。


「君は他のみんなを指揮しなきゃいけない。多くの生徒があそこで、君の導きを待っている。君としずくは彼らのリーダーなんだ」


小次郎は引き下がらなかった。いつも開かれて正直だったあの目に、今まで見たことのない決意が宿っている。


「もっと適任の人がいます」


「誰だ?」


「古橋先生です」


まばたきした。なぜ彼女なのか理解できなかった。


「古橋先生? なんで……?」


「彼女は機関がどう動くか理解しているからです」


しずくが割って込んだ。その声は落ち着いているが、確固としている。


「それに、生徒たちは彼女を尊敬しています。小次郎と私は……最前線の方が得意なんです。行動が必要な場所であって、政治ではありません」


二人を見た。評価する。


小次郎は、年度初めに僕の計画を盲目的に従っていた少年ではなくなっていた。成熟し、戦闘によって、リリスを見抜けなかった過ちによって、何百人もを率いる責任によって、鍛えられていた。


しずくは、完全に影から出てきた。もう白麗の秘密の計算者ではなく、独自の権利を持つリーダーだ。


信頼できる人間が必要だ。


そして彼らは、その権利を獲得した。


「わかった。でも一緒に動く。ひめかが最優先だ」


「もちろんです」


小次郎が言った。その顔に安堵が浮かんでいる。


スマホが振動した。ケンからのメッセージだ。


『完了。メインドア解除。気づいてファイアウォール再インストールするまで90秒』


「行くぞ!」


叫んで、6人のグループが走り出した。


「メインドア」は、高度ロボット工学ラボの横にある目立たない壁パネルだった。柔らかいブザー音とともに開き、金属的でミニマリストなエレベーターが現れた。


「簡単すぎる……気がする」


アヤがつぶやいた。手首の周りで鎖がすでに淡く光っている。


「簡単なことなんて何もないわ」


エリザが答えた。戦闘用グローブを調整している。


「ただ、本当の試練が中にあるってことよ」


エレベーターが降下する。重苦しい沈黙の中で、秒が伸びていく。


仲間たちを観察した。


アヤは、顎を食いしばり、鎖が柔らかくぶつかり合っている。エリザは、深呼吸をして、集中している。かんなは、氷の刀の柄に手を置いている。小次郎は、ドアをじっと見つめ、「理解の枠」がすでにかすかに形成されている。しずくは、見えないそろばんの上で指を動かし、確率を計算している。


みんな優秀だ。最高のメンバーだ。


でも……十分だろうか?


りんがいれば……。


ドアが開いた。


そして地獄が始まった。


足が通路の床に触れる前に、耳をつんざくアラームが空気を満たした。赤いストロボライトが一瞬目を眩ませる。


「アルファセクターに侵入者検知!封じ込めプロトコル起動!」


ロボット音声がアナウンスした。


前方の通路から、三つのドアが同時に開いた。警備兵が現れる。黒い戦術アーマーを着た制服で、不気味な青い光を放つバイザーをつけている。


数は多くない――全部で6人――だが、その存在感は威圧的だった。


「スキル発動!」


命令を出すと、世界が戦闘に縮小された。


アヤが最初に動いた。黄金の光を放つ鎖が蛇のように飛び出し、最前列の警備員の足に絡みついた。激しく引っ張ると、倒れた。


エリザが次の相手に突進した。戦闘用グローブが銀色のエネルギーで輝き、警備員が展開した伸縮警棒の一撃を防ぐ。カウンター――みぞおちへの素早い打撃、そしてバイザーを砕くアッパーカット。


かんなが氷の刀を完璧な弧で抜いた。結晶の刃が空気に霜の軌跡を残す。警備員がエネルギーシールドを上げたが、刀がそれを紙のように切り裂いた。極寒がシールドを粉々に砕く。


小次郎は直接攻撃しなかった。代わりに、彼の「理解の枠」――彼だけが見える光の格子線――が戦場に重なった。


「右の奴がスタングレネードを投げます!」


小次郎が警告した。


問題の警備員が実際にベルトから球体を取り出すのが見えた。アヤの鎖が、起動する前に手から叩き落とした。


しずくは後ろにいたが、指は決して止まらなかった。


「皆さんのステータスを私のサポートスキルで上昇させますわ」


素早く告げると、しずくのサポートスキルが全員のエネルギーと耐久力を増強し、戦闘を続けられるようにした。


しずくのスキルは知らなかった。そして彼女の別のスキルを見るのはこれが初めてだった。


自分のスキルを発動させた。


糸はもう他人には見えないが、感じることができる――仲間たち同士の、敵の動きの間の、戦場のすべての変数の間の繋がりを。


引っ張らなかった。以前のようには。


代わりに、感じた。流れを理解した。


「かんな、左! アヤ、エリザをカバーしろ! 小次郎、しずくを守れ!」


うまくいった。


警備員たちは、訓練されていたとはいえ、グループのほぼテレパシー的な連携には準備ができていなかった。


まもなく、6人全員が意識を失うか、動けなくなった。


「前へ!」


叫んで、通路を走った。


しかしそのとき、壁自体が開くようだった。パネルが引っ込み、そこから……何かが現れた。


ロボットだ。


初期の世紀の不器用なヒューマノイドではない。これらは流動的な、ほぼ有機的な動きをしていた。体は暗くマットな金属で、典型的な機械的なきしみ音なしに動く関節を持っている。顔には特徴がなく、目があるべき場所に青いバイザーが一つあるだけだ。


「これ……何?」


かんながつぶやいた。一歩後退する。


観察した。頭が高速で処理する。


外の世界では、ヒューマノイドロボット工学がようやく機能し始めたばかりだ。でもここでは……人間のように動く。僕たちの動きをコピーする。


ロボットの一体が頭をこちらに向けた。バイザーが光り、スキャンする。


「アルファレベルの脅威を識別。排除を許可」


胴体のどこからか出る合成音声が言った。


攻撃してきた。


呪われた鏡と戦っているようだった。


ロボットたちは動きを予測し、学習する。アヤが鎖を放つと、一体がそのサイズにあり得ない俊敏性で回避した。エリザが連続攻撃を試みると、別の一体がミリ単位の精度で各打撃をブロックした。


「適応してる!」


小次郎が叫んだ。枠が激しく点滅している。


「スキルを使うたびに、それに対抗することを学んでいく!」


首筋に冷や汗を感じた。


変化しなければ。多様化しなければ。予測不可能でなければ。


「しずく!」


呼びかけた。


「パターン! 見つけろ!」


しずくの指がより速く動いた。


「強化学習ベースですわ。戦闘効率のために最適化しています。提案――カオス的行動、非従来型の攻撃ですわ」


非従来型……。


アイデアが浮かんだ。


「全員! 10秒ごとに相手を変えろ! アヤ、鎖は囮として使え、攻撃としてじゃない! かんな、氷の障害物を作れ、直接攻撃じゃなく! エリザ、関節を狙え!」


変化は即座だった。


パターンを学習するようプログラムされたロボットたちは、それがないことに混乱した。アヤの鎖を避けることを学んだロボットが、エリザの予想外のキックを膝に受けた。かんなの刀の軌道を計算した別の一体が、床から出現した氷の柱につまずいた。


最終的な弱点を見つけたのは小次郎だった。


「バイザー! ただのセンサーじゃない、メインプロセッサーだ!」


頷いた。


「そこに集中しろ!」


消耗戦だった。残忍で、疲弊する。


しかし最終的に、最後のロボットが倒れた。青いバイザーが点滅して消えた。


通路が静寂に包まれた。荒い呼吸とアラームの持続音だけが聞こえる。


ロボットとの戦いでかなりの時間を失った。


焦り始めた。


「行くぞ」


息を切らしながら言った。


「まだひめかを見つけてない」


さらに走った。


この場所の奇妙なところは、すべてが直線の通路だということだ。側面にドアがあるだけで、その多くの部屋は中が見える――研究室やオフィスがあるのがわかる。


しかしその後、通路が分岐した。


左と右。


両方向とも同一に見える――白い壁、青い照明。


「分かれなきゃ」


小次郎がすぐに言った。


「ダメだ」


抗議した。


「僕たち、全部で6人しかいないんだぞ。分かれたら……」


「二つの強いグループですわ」


しずくが割って込んだ。その口調は論理的で、感情的ではない。


「アレン先輩、アヤ先輩、エリザ先輩、かんな先輩は右へ。小次郎と私は左へ。より多くの地面をカバーできますわ」


小次郎を見た。


「二人だけだぞ。抵抗に遭遇したら……」


「しずくと僕は弱くありません」


小次郎が言った。そして初めて、その声に硬さの響きを聞いた。


「以前、失敗しました。もう失敗しません。僕たちを信じてください、アレン先輩」


しずくが頷いた。


「ひめか先輩が右にいる確率は67%と計算しますわ。検知したエネルギーフローに基づいて。でも左はメインコントロールかリリス先輩に繋がっている可能性がありますわ。戦略的に健全ですわ」


二人を見た。


新たに鍛えられた決意を持つ小次郎。冷静な効率性を持つしずく。


いいチームだ。


「わかった。でも問題の最初の兆候で、後退して再集結しろ。わかったな?」


「わかりました」


二人が同時に言った。


最後に視線を交わし、別れた。


右の通路は予想以上に長かった。


心臓の鼓動一つ一つが、戦争の太鼓のように感じられる。


ひめか、待ってて。


もう少しだけ。


最初の本格的な抵抗に遭遇したのはそのときだった。


科学者たちだった。兵士ではない。白衣を着た10人の男女だが、硬い目と、発動寸前のスキルで輝く手を持っている。訓練された戦闘員には見えなかったが、その顔の決意は紛れもなかった。


「止まりなさい!」


一人が叫んだ。厳格なお団子に髪を結んだ年配の女性だ。


「このエリアは立ち入り禁止です! 撤退しなさい、さもなくば実力行使します!」


身構えた。背後でアヤ、エリザ、かんなも同じくするのを感じた。


攻撃命令を出そうとしたとき……。


「やめなさい!」


あまりにもよく知っている声が通路に響いた。


全員が振り向いた。


リリスが通路の反対側から歩いてくる。白衣が動きとともにたなびいている。しかしその顔は大理石のように冷たい。


「シモンズ博士」


リリスが年配の科学者に向かって言った。


「あなたとチームは撤退なさい。私がこれを処理しますわ」


女――シモンズ――は怒りで煮えたぎっているようだった。


「ヴァランクールさん、これはセキュリティ問題です! あなたが勝手に――」


「できますし、しますわ」


リリスが割って込んだ。そのトーンには、今まで聞いたことのない権威があった。


「プロジェクトは重要な段階にあります。すべての人的資源を封じ込めチャンバーに配置する必要があります。今すぐに」


シモンズが僕を、それからリリスを見た。その顔は純粋な憎悪の仮面だった。


最終的に、吐き捨てた。


「お好きにどうぞ。でもこれが失敗したとき、理事会は誰を責めるべきか知るでしょう」


急に向きを変え、チームに指示した。


「私と一緒に! メインラボへ!」


科学者たちが撤退した。僕とリリスの両方に殺意の視線を投げながら。


数秒で、通路は僕たちを除いて空になった。


リリスを見た。


最後に会ったとき、彼女は僕をほぼ破壊する真実と共に去っていった。今、彼女は僕とひめかの間に立っている。


「リリス……」


自分の耳にも奇妙なほど落ち着いた声で言った。


「アレン」


まるでアカデミーの通路で挨拶を交わしているかのように彼女が答えた。


「干渉しないように言いましたわ」


「本当にそう言ったか? 覚えてないな」


皮肉なトーンは、彼女を全く動じさせなかったようだった。


「ひめかはどこだ?」


「安全よ。協力していますわ」


その言葉が、胃に冷たさを感じさせた。


「協力? 強制したのか? 何かしたのか?」


リリスが首を傾げた。本当に困惑しているようだった。


「なぜ強制を前提とするの? ひめかさんは聡明な若者よ。私たちがしている仕事の重要性を理解しているわ」


「仕事?」


後ろからアヤが爆発した。


「人を誘拐して! 生徒を実験して! それは『仕事』じゃない、怪物的行為だぜ!」


リリスが一人一人を見た。その表情は不可解だ。


「あなたたちの視点は感情で曇っていますわ。科学的進歩はしばしば犠牲を必要とします。そして私たちがここで行う犠牲は、将来無数の命を救うことになりますわ」


彼女を観察した。


その話し方、目の中の絶対的な確信に、何かがあった――敗北前の学園長を思い出させた。同じ断絶、「大義」がどんな恐怖も正当化するという同じ信念。


「これについては後で話す、リリス」


一歩前に進んだ。


「そして繰り返す気分じゃない。どけ、さもなくば力ずくでどかせる」


リリスが溜息をついた。本当の苛立ちの音だった。


「いつも力で。いつも衝突で。なぜ誰も単に……理解できないの?」


時間が逃げていくのを感じた。


議論に費やす一秒一秒が、ひめかが彼女の手にいる一秒だ。


「最後の警告だ」


スキルが完全に発動した。アヤ、エリザ、かんなと繋がる糸を感じることができる――彼女たちの意図、恐怖、決意。


リリスが長い間観察した。


それから、ゆっくりと、医療用手袋を外し始めた。


いつも着けているのに気づいていたが、重要視したことはなかった。今、白いの指が滑り落ちるにつれて、その下にあるものが露わになった。


手は傷跡で覆われていた。


手術の清潔な傷跡ではなく、激しいトラウマの歪んで不均一な傷跡だ。そして皮膚に織り込まれ、指に埋め込まれて、淡い青色の光で輝く細い金属フィラメントがあった。微妙に動いている。追加の神経のように。


「何……?」


つぶやいた。同時に、他の皆も驚きの息を呑むのを聞いた。


「事故ですわ」


リリスが言った。その声が今、より柔らかくなった。


「ずっと昔。私の両親と私は……全員が生き残ったわけではありませんの」


まるで初めて見るかのように、自分の手を見た。


「創立者が私を見つけてくださいました。これをくださいました。二度目のチャンス。このフィラメントは……運動機能を回復させます。動き、感じ、生きることを可能にしてくれますの」


僕に視線を上げた。そして初めて、その目に感情に似た何かを見た気がした。


「このアカデミーが私に目的をくださいました。両親の記憶を称える方法を。創立者に恩返しをする方法を。彼らの死が無駄ではなかったと証明する方法を。私がしてきたすべては……そのためですわ」


震えを感じた。


共感ではなく、認識の。


彼女もまた犠牲者なんだ。


でもそれは、彼女がしたことを正当化しない。


「君の喪失には同情する」


本心から言った。


「でもそれが、他の人に喪失させる権利を君に与えるわけじゃない」


リリスが一瞬目を閉じた。


開いたとき、感情は消えていた。馴染みの冷たさに置き換えられていた。


「では、これ以上言うことはありませんわね」


手が上がった。


金属フィラメントが激しく輝き、指から青い光の触手のように伸びていく。直接攻撃しなかった。代わりに、空中にパターンを織り始めた――複雑で、数学的に完璧な。


リリスが、今まで聞いたことのないほど声を上げた。


「スキル:『犠牲の幾何学』」


青いエネルギーのフィラメントが現れ、空中に幾何学的形状を作り出す。


「私のスキルには4つのスキルが同時に含まれていますの。最初の効果は:『ダメージ計算』――形状が攻撃軌道を予測し最適化しますわ」


一瞬驚いた。彼女がスキルの詳細を明かしたことに。


なぜ説明している?


「効果2:『補償ネットワーク』――私に対して取られた各行動が私の防御を強化しますわ」


時間稼ぎをわざとしているんじゃないかと思い始めた。


糸を動かす準備をした。


「効果3:『痛みの方程式』――潜在的ダメージを形状間で転送できますわ」


アヤ、エリザ、かんなに向けて糸を伸ばした。今度は調和の糸のスキルを発動するために。


「効果4:『最終証明』――受けたすべてのダメージを蓄積してそれを返すマスター形状ですわ」


彼女が明かしたスキルに注意を払った。嘘をついているとは思えなかった。


すぐに理解した。


直接攻撃のスキルではなく、コントロール、戦場操作のスキルだ。世界を計算と補償の観点で見る者に完璧だ。


「準備しろ!」


叫んだ。


しかし突撃しようとしたその時、世界が震えた。


物理的な震えではなかった――床が振動したが。もっと深い、もっと内臓的な何かだった。


突然のめまいが全員を襲い、よろめかせた。胃が底なしの穴になったような感覚がした。


隣で、かんなが膝をついた。頭を抱えている。アヤは壁に寄りかかって床に倒れ込み、エリザは辛うじて立っている。


リリスもよろめいた。フィラメントが点滅する。


しかしその顔には驚きではなく……認識があった。


「もう遅すぎますわ、アレン」


つぶやいた。そして初めて、その声に恐怖に似た何かを聞いた気がした。


「始まってしまいましたわ」


「何が始まった?」


吐き気と戦いながら要求した。


「目覚めですわ」


リリスが言った。その目は壁の向こうの何かに固定されている。


「エーテリアル原初が応答していますの。そして一度始まれば……何も止められませんわ」


震えが始まったときと同じくらい突然に止まった。


しかしめまいは残った。来るべきものの不吉な警告として。


リリスを、それから科学者たちが消えた方向を見た。


ひめかはあそこにいる。


嵐の目の中に。


「終わらせるぞ」


そして突撃した。


でももうひめかのための戦いだけじゃなかった。


もっと大きな、もっと古い何かとの競争だった。


そして時間は、ついに尽きた。

次回――


崩れた王の決断。


小次郎としずくの前に立ちはだかるのは、

かつての頂点――武蔵。


だがその姿は、以前とは違う。


守っていたはずの秩序に疑問を抱き、

揺らぎ始めた存在。


戦いの中で問われるのは、

勝敗ではない。


何を守り、何を捨てるのか。


そして小次郎は、新たな“形”に辿り着く。


理解するだけでは足りない。


断ち切るための意志が、力となる。


やがて導かれる先――


そこにいるのは、ひめか。


だが、その隣にいる存在は――。


人ではない。


それでも、確かに“繋がっている”何か。


物語は、核心へと触れる。

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