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退歩と進歩

勝利は、必ずしも救いにならない。


言葉は刃になり、

沈黙はさらに深い傷を残す。


アカデミーで初めて、

誰かが“守ってくれた”その意味を、彼はまだ整理できていなかった。

アカデミーへ向かって歩いている時、まだ姿が見えない段階で彼女の存在を感じ取った。いつものように、いつでも隣に現れるんだろう。笑顔で元気な声で言う姿が想像できる。


「――おはよう、アレンくん!」


想像じゃなかった。もう隣にいた。霧崎さんが。


……今度はストーカーにでもなったのか?


冗談は置いといて、少しずつでも変わりたいと思っていた。だから、返事はしなかったけど、頷いた。聞こえてるよって。本当は挨拶を返すべきなんだろうけど。


馬鹿だな、僕。


言いたかった。返事をしたかった。でも、何かが止めていた。


二人で並んで歩き続けた。そして、彼女が完全に予想外の質問をしてきた。


「アレンくん、あたしともう一回バトルしてみない?」


思わず横目で彼女を見た。驚いた。


どうしてもう一度バトルを?


あ!そうか、これが最初からの狙いか。ポイントを奪いたいんだ。きっとそうに違いない。霧崎さんは僕をATMだと思ってる。そうに決まって……。


でも。


もう一度横目で見ると、彼女の表情は心配そうだった。少し俯いて歩いている。


……今の考え、撤回する。彼女がそんな人間なわけがない。


「ポイントのことは心配しなくていいから。たった1ポイントだけ。どうかな?」


たった1ポイントでも、どうして彼女がこんなことを頼んでくるのか全く分からない。


悪い考えだと思った。でも、それを分析する前に、口が勝手に動いた。


「……ああ」


彼女は驚いた表情を浮かべた。小さいけど、はっきりした声で承諾したことに。


僕自身も分からなかった。どうして返事をしたのか。衝動だったのか?また衝動に裏切られたのか?でも、もしかしたらこれが本当に最後のチャンスかもしれない。自分のために一歩踏み出せる。


その後、自由バトルの時間になった。霧崎さんがバトルのことを思い出させに来た。アイアンハートさんがもう待っていた。霧崎さんがアイアンハートさんを審判として説得したらしい。アイアンハートさんは状況に困惑して、少し不機嫌そうだったけど、引き受けてくれた。


「じゃあ、1ポイントだけね、アレンくん、いい?」


霧崎さんが確認してくる。


一度だけ頷いた。


システムがデジタルフィールドを展開した。


バトルが始まった。


霧崎さんは小さな弓を手に持っている。最初から何かが違うと感じた。彼女は本当にバトルに集中していない。すぐに攻撃する代わりに、話しかけてきた。


「ねえ、アレンくん、どうしていつもそんなに早く出てるの?人を避けるため?それとも、あなたの恐怖を避けるため?」


予想外の質問に驚いた。でも、二人とも距離を取っていたから答えられる。


「……ああ」


霧崎さんは微笑みながら矢を放った。なんとか避けたけど、彼女は気にしていないようだった。


「それで、どうして……あたしみたいな人を避けるの?」


彼女はアイアンハートさんが聞いているから、僕の恐怖について直接言及しなかった。


これで分かった。彼女は本当に配慮してくれている……それで、答えることができた。


「……そっちの方が楽だから」


話している間、ほとんど本能的に周囲に糸を張り巡らせていた。意識はバトルよりも彼女に返事をすることに集中していた。


「友達がいない方が楽ってこと?」


彼女は矢を放ちながら聞いてくる。


「ああ……誰も、僕のせいで苦しんでほしくない」


彼女の表情が少し変わった。目には好奇心以上のもの、理解や共感のようなものが見えた。


「アレンくん、教えて。どうしてこのバトルを受けたの?」


どうして?……本当に自分でも完全には理解できていない。いつも恐怖を自覚している。どれだけ一歩踏み出して変わりたいと思っても、その一歩を踏み出すのを助けてくれる人がいない……本当に……この恐怖から解放されたい……もう耐えられない……でも、傷つけることを恐れて、助けてくれる人に出会ったことがない。


無意識に手を動かして、たくさんの糸を展開していた。気づかないうちに、あちこちに糸が張り巡らされていた。でも気にしなかった。霧崎さんの声を聞き続けたかった。もっと質問してほしかった……。


「上達したいから?」


矢が飛んできたけど、脇を掠めただけだった。


「それとも、自分の恐怖と向き合いたいから?」


そうだ。霧崎さん、怖いんだ。でも言えない。声が出ない。彼女を見ることもできない。でも、助けてほしい……この深い穴から抜け出したい。


「ねえ、あたしは君を倒すためにここにいるんじゃないの、アレンくん。もしそう思ってるなら、間違ってるよ」


矢がすぐ近くを飛んできたけど、ダメージを感じなかった。思考が自分の中で迷っていたから。


「あたしが知りたいのは、あなたのことなの。だって……」


彼女は黙り込んで、攻撃を止めた。でも、すぐに気を取り直して言った。


「分かんないけど、あなたって面白いなって思うから」


面白い?……本当に……霧崎さんはとても優しい……こんなに優しい人に出会う価値なんて僕にはない……だって僕は何年もこの恐怖から逃げてきただけの臆病者だから……。


「――どうして黙ったままなのよ!?」


霧崎さんの叫び声で我に返った。この距離から彼女を見ると、弓を構えたまま僕を見つめている。二人とも何もしていない。


霧崎さんは少し後退して、また矢を番えた。


「何も言いたくないの?」


じっとしたまま動かなかった。どんな動きも存在しなくて……そして。


「……何を言えばいいか分からない」


なんとか答えられた。でも、迷いだらけの答えだった。


何も答えていない馬鹿な返事が口から出てしまった。最後のチャンスを台無しにしたと思った。でも、霧崎さんを見ると、彼女は笑っていた。


「大丈夫だよ。無理に言わなくていいの。感じた時に言えばいいから」


彼女は矢を放った。今度は周りの糸を狙って。


矢が当たると、糸が火花を散らして空中で消えた。すぐに糸を張り直した。


「アレンくん、その糸、上手だね」


霧崎さんは……褒めてくれてるのか?


「面白いスキルだよねっ」


「……あ、ありがとう」


ほとんど囁くような声で答えた。でも、この返事は本当に感じたことだった。


霧崎さんは続けて二本の矢を放ってきたけど、彼女の動きがどんどん予測しやすくなっている気がした。避けることができた。


「ねえアレンくん、バトルって好き?」


「いや……」


このバトルのコントロールを取れる気がした。霧崎さんの周りを走り始めた。糸の軌跡を残しながら、彼女の周囲に円を描いていく。


「じゃあ、どうしてここにいるの?どうしてこのアカデミーに来ることを受け入れたの?」


糸で彼女を囲んでいるのに、それでも質問を続けてくる……本当に彼女は……。


顔に笑みが浮かんでいるのを感じた。もっと自然に答えた。


「選択肢がなかった」


「ふーん……なるほど」


彼女に糸を投げたけど、避けられた。


「ねえ?時々さ、選択肢がないのっていいことなんだよ」


そう言いながらまた矢を放ってきた。今度は直接僕に向けて。


でも、糸でブロックできた。


「――だって、自分が持ってるって知らなかった部分を発見することになるからっ」


そうだ。霧崎さんは賢い。とても優しい。彼女はひめかとは全く違うみたいだ……本当に彼女なら、僕が前に進むためのサポートになってくれるかもしれない……本当に霧崎さんは……一歩踏み出すために、手を差し伸べてくれるだろうか?……。


「ところで、今ポイントいくつ持ってるの?」


「……47」


何て些細な質問だろう。これが普通の会話をする感覚なのか?こんなに長い時間が経った後だと、懐かしささえ感じる。


糸をさらに広げ、彼女は矢を撃ち続けた。


気づかないうちに、フィールドを糸で埋め尽くしていた。


その時、霧崎さんが雷の矢を放った。


瞬時に反応して、糸を導体として使った。電気がフィールド全体に広がり、反応する前に彼女に届いた。


「うああああっ!!」


彼女は糸に囲まれていたから、電気を帯びた矢を撃った瞬間、すべての糸が彼女への導体になってしまった。うつ伏せで地面に倒れた。


彼女が地面に倒れるのを見た。電気のせいで体から湯気が出ている。大丈夫だろうか。結局これは仮想空間だけど、罪悪感を覚えた。


機械的な声が響いた。


「ウィナー:アレン・ウェバー」


何も感じなかった。喜びも、満足感も。ただ圧倒的な罪悪感だけ。


仮想空間が消えていく中、彼女に向かって歩いた。でも、彼女が立ち上がろうとするのを見た瞬間、記憶が激流のように襲ってきた。


ひめか、涙でいっぱいの顔、憎しみに満ちた声。


『帰って! もう会いたくない! 大っ嫌い!』


そこで立ち尽くした。動けなくなった。その記憶の中に迷い込んだ。


もう教室に戻っていることに気づかなかった。仮想空間はもう消えていた。霧崎さんが目の前にいて、彼女が手を伸ばそうとした瞬間――


「触るな!!」


……乱暴に彼女を突き飛ばした。衝動だった。また女性への恐怖のせいで。こんなことしたくなかった。でも、もう遅かった。逃げ出す前に、霧崎さんの驚いた表情だけが見えた。後悔と痛みを感じながら走り去った。最後に、アイアンハートさんが憎しみを込めて叫ぶ声が聞こえた。僕の行動を非難する声が。


* * *

(りん)


バトルが始まった瞬間、デジタルフィールドの中でアレンくんと向かい合った。周りは開けた場所で、制限のない戦いには理想的な環境だった。でも、あたしはここで全力を出すつもりも、何かを証明するつもりもなかった。目的は別にある。


片手に弓を持ちながら、アレンくんはいつも通り距離を取って、黙ってあたしを見ていた。彼の手が少し動いた。糸を準備してるのが分かった。


話したい。もっと彼のことを知りたい。


だから、質問を始めた。


「ねえ、アレンくん!――」


驚いたことに、彼は答えてくれた。嬉しかった!ちゃんと返事してくれるんだって。


でも、その瞬間も彼の姿勢に何か気づいた。緊張してる。内側で何かと戦ってる。


先手を取って、氷を割ることにした。弓を構えて、矢を放った。わざと彼の横を通り過ぎるように。傷つけたくないし、すぐに警戒させたくもなかった。


アレンくんは質問に答え続けてくれた。やっと!彼のことが少しずつ分かってくる。


彼が動き始めた。何か企んでる……でも、アレンくんは本当に長い間彼を傷つけてきた何かと戦ってるんだって、見てるだけで分かった。思わず笑みがこぼれた。でも意地悪な笑いじゃない。安堵の笑みだった。やっと、彼のことがもう少し見えてきた。


彼の手が動き始めて、いくつかの糸を別々の方向に張り始めた。戦略は明らかだった。前と同じように、バトルフィールドを支配したいんだ。


もう一本矢を放った。今度は少し近く、でも当てるつもりはなかった。


アレンくんは簡単に避けたけど、まだ何も言わなかった。イライラするけど、同時に興味深い。


だから話し続けた。弓を動かして、また撃つ準備をするふりをしながら。


今度は電撃の矢を放った。彼の足元に着地して、小さな火花を散らして彼を後退させた。


それで一瞬止まった。糸の動きが止まって、こっちを見てくれるかなって思ったけど、すぐにまた防御の姿勢に戻った。


「――どうして黙ったままなのよ!?」


苛立ちと好奇心が混ざった叫びだった。彼の声を聞きたい。あたしなら彼を話させられるって思った。


でも、彼は彼らしい答えを返してきた。無理強いはしたくない。でも、彼の視線の奥に何か隠されてるのが見える。彼が吐き出したい何かが。


もう一本矢を放った。今度は彼の糸の一つを狙って。雷が当たると、糸がバチバチと音を立てて空中で消えた。


アレンくんは眉をひそめて、すぐに糸を張り直し始めた。まだ緊張してるのは明らかだけど、コントロールを保とうとしてるのも分かった。


「アレンくん、その糸、上手だね」


彼が居心地悪く感じないように言った。上手くやってるって伝えたかった。


小さな呟きが聞こえた。「……ありがとう」って。


小さな前進だったけど、勝利として受け取った。それでも、手を緩めすぎたら、アレンくんがバトルを真剣に受け止めてないって思うかもしれない。


だからもう二本、電撃の矢を放った。どちらも彼の近くに着弾した。彼は素早く避けた。思ったより機敏に動いてた。


「ねえアレンくん、バトルって好き?」


彼は首を横に振った。質問をもっと簡単にしようとした。


あたしの気持ちも行動で伝えたかった。あたしを助けだと思ってほしい。それが望みだった。


その間も、フィールドを動き続けた。あたしは矢を撃ち、彼は糸を張る。もっと大切な何かを成し遂げてる気がした。お互いを理解するための小さな一歩を。


バトルが予想外の展開を見せた。電撃の矢を放った。アレンくんを麻痺させるつもりで。でも矢は彼の糸に当たった。あたし自身も気づいてなかった。彼に囲まれてたなんて。


衝撃の瞬間、火花が張り巡らされた全ての糸を走った。気づいた時には、電流が直接あたしに向かって流れてきた。体中を駆け巡って、麻痺して、地面に顔から倒れた。


すぐに痛みが消えていった。デジタルフィールドと一緒に。また教室に戻ってた。


立ち上がろうとしたけど、まだ足が痺れてた。アレンくんがこっちに来るのが見えた。一瞬、このバトルが結果を出したって思った。彼が話しかけてくれるって。でも、ただそこに立って、あたしを見てるだけだった。


あたしから彼に近づいた。震えてる彼の手を掴みたかった。本当に考え事に迷い込んでるみたいだった。でも、手を取ろうとした瞬間――


「触るな!!」


彼は叫んだ。同時にあたしの手を叩き払った。手のひらが赤くなった。彼はすごく後悔してるみたいだった。恐怖で震えて、そのまま教室から走り去った。


アヤさんが怒って叫んで、彼を追いかけた。


あたしは自分の手を見つめるだけだった。残った感触。今まで以上に分かった。アレンくんが背負ってる重さは深い穴だけど、底なしの深淵じゃない。そこから彼を引き上げられる気がする。まだ諦めない。


アヤさんの後を追って走り出した。もう一度アレンくんに会いに行く。まだ終わってない。過ちを繰り返したくない。絶対に助ける。


* * *

(アレン)


廊下を走った。明確な目的地もなく、ただ逃げるように。でも、その逃走は短命に終わった。


突然、アイアンハートさんが目の前に現れた。後ろから走ってきて、僕を追い越し、進路を塞いだ。


急停止した。


彼女を避けることも、触れて押しのけることもできない。だから、ただ凍りついたように立ち尽くした。何もできずに。


アイアンハートさんは腕を組んで、怒りと苛立ちが混ざった表情で僕を見つめてきた。


「あんた、何してるわけ?戻って、りんに謝りなさいよ」


答えられなかった。彼女を見ることすらままならず、ましてや話すなんて。


「おい!聞いてんの!?」


声を張り上げて迫ってくる。


心臓が跳ね上がった。彼女みたいな人は、僕にとって最悪の組み合わせだ。粗野で、暴力的に見えて、威圧的な眼差しを持っている。そして何より――女性だ。その最後の事実が、一番恐ろしい。


沈黙を保ったまま、視線を床に固定した。


それが彼女の怒りをさらに煽ったようだった。


「あんた、何なわけ?ミステリアスで無口ぶってカッコいいとでも思ってんの?ねえ、バトルでもする?それで考え変わるんじゃない?」


彼女と戦いたくない。でも、この状況から抜け出す方法も見つからない。


選択肢を考えていたそのとき、一人の教師が現れた。


乱れた髪に、少し歪んでかかった眼鏡。気楽そうな笑みを浮かべていて、教師というより先輩に見える男性だった。


「おやおや、これは何を見ているのかな?ちょっとした口論かい?それとも、これから決闘でも始まるのかな?」


眠そうでありながら、どこか楽しげな口調で僕たち二人を見つめていた。


明らかに苛立っているアイアンハートさんが素早く答えた。


「そうです、先生。わたしたち、バトルするんです。こいつ、ちょっと鼻っ柱折ってやらないと」


教師は嬉しそうに頷いた。まるでこの状況を楽しみすぎているかのように。


「いいね!ちょうど暇だったんだ。私はオズワルド先生、Eクラスの担任だ。数学も教えているんだが、まだ初週だからちゃんとした授業はしてないな……ははっ!」


呆然とした。


この人は全てをゲームのように扱っているようだった。でも、それを処理する時間はなかった。教師が一歩前に出て、バトル・システムを起動した。


「さあ、君たち、ベストを尽くしてくれ。ああ、あまり怪我しないようにな!」


周囲にデジタルフィールドが形成され始めた。


精神的に準備しようとしていたそのとき、遠くから聞き覚えのある声が響いた。


「アレンくん、大丈夫よ!頑張って!アヤさんに勝っちゃえ!」


霧崎さんだった。廊下に走ってきて、輝くような笑顔で僕を応援している。まるで僕たちの間に何もなかったかのように。まるで、僕がしたことを気にしていないかのように。


それを聞いたアイアンハートさんが、完全に信じられないという表情で彼女の方を向いた。


「――りん、何言ってんのよ!?」完全に動揺して叫んだ。


最終的に、デジタルフィールドが外界から僕たちを隔離した。今、霧崎さんがこちらを見ている。勇気を示さなければならないのか?彼女の期待に応えなければならないのか?本当に分からない。全てが制御不能なジェットコースターのように、感情が次々と押し寄せてくる。


アイアンハートさんが距離を置いたところから叫んだ。指で僕を指差し、視線で裁くように。


「あんた!たった1ポイントも賭ける気なかったけど、仕方ないわね。5ポイント賭けるわ!」


考える時間が必要だった。


本当に少ない量だ。リスクを取りたくないのか?でも、霧崎さんの言葉を聞いた後では、後退できない気がした。


久しぶりに勇気を振り絞って、しっかりとした声で答えた。


「……はい」


僕も5ポイントを賭けた。合計10ポイントが懸かっている。


アイアンハートさんは目を細めて、嘲笑と競争心が混ざった笑みを浮かべた。


「へえ、男の子、やっと喋れるじゃない!いいわよ、後悔しないでよね」


オズワルド先生が手を上げて、興奮気味に告げた。


「提案があるんだが!」


僕もアイアンハートさんも、戦闘前の突然の介入に困惑してオズワルド先生を振り返った。


「これは面白そうだな!特別チャレンジを追加しよう。勝者には15ポイントのボーナスを与えるぞ」


アイアンハートさんは驚いた様子だったが、あまり考えずに受け入れた。


「受けるわ!先生、心配しないで。そのポイント、わたしのものよ」


オズワルド先生が緊張した笑みを浮かべた。説明が終わっていなかったようだ。


「おや、随分と気合が入ってるな。でも、まだチャレンジの内容を言ってないぞ」


アイアンハートさんはただ腕を組んで、自信満々に見つめた。


「どうでもいいわ。何だろうと、こいつに勝ち目なんてないもの」


オズワルド先生が今度は僕に注意を向けた。


「君はどうだい?この特別チャレンジを受けるかい?」


アイアンハートさんを見て、それからオズワルド先生を見た。この瞬間の重さを感じた。後退できない。だから、しっかりと答えた。


「はい。チャレンジを受けます」


オズワルド先生が拍手をした。まるで自分のアイデアに拍手しているかのように。


「完璧だな!このバトルは1分以内に終わらせなければならない。60秒以内に勝者を決めるんだ。それが今回のバトルのチャレンジだ」


システムの機械的な音声が割り込んできた。


「追加ポイント:15。新合計:25ポイント。条件:60秒以内に終了」


アイアンハートさんが僕の方を向いて、興奮と競争心、そして――明らかな侮りが混ざった笑みを浮かべた。


「あんたに勝つのに、そんな時間いらないわ」


オズワルド先生が目の前の仮想パネルで何かを押すと、機械的な音声が続いた。


「バトルスタート」


戦闘が始まった。


アイアンハートさんは一秒も無駄にしなかった。

――次回。


迫る制限時間。

絡み合う力と意地。


勝つために必要なのは、

強さか、それとも――絆か。

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