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繋がる絆

勝ったはずだった。

守れたはずだった。


それでも、胸の奥に残った違和感は消えない。

力を使えば解決する――

そんな単純な世界じゃないことを、彼はもう知っている。


これは、戦いの“後”に残された問いの物語。

そして、アカデミーという場所が

本当の顔を見せ始める、静かな始まり。

やっとの思いで立ち上がった。全身が悲鳴を上げていたが、それ以上に怒りが込み上げてきた。ハサウェイさんに対する彼らの仕打ちを見て、もう我慢できなかった。


「――もう勝ったぞ!彼女を放っておいてくれ!」


疲れ切った体から振り絞れる限りの声で叫んだ。


だが、アルムは僕の声を無視して、ゆっくりとハサウェイさんに近づいていった。その態度は威圧的で、傲慢さに満ちた視線が僕の怒りをさらに煽った。


「勝った?まあな。でもよ、それで何も変わらねえんだよ。こいつはオレたちに借りがあるんだぜ。それを返してもらわねえとな」


その冷たい言葉は、まるで僕の勝利など何の意味もないと言わんばかりだった。


「――問題がポイントなら、僕が代わりになる!彼女を放っておいてくれ!」


怒りと焦燥を必死に抑えながら叫んだ。


アルムは足を止め、驚いたような顔をした。それから、笑い始めた。嘲笑が辺り一面に響き渡る。


「ははは!...アレン、お前って本当にナイーブだな。これはポイントだけの話じゃねえんだよ。こいつがオレたちの『プロジェクト』をぶっ壊したんだぜ。そいつは許されねえことなんだよ」


「プロジェクト?何の話だ?」


アルムが一歩前に出た。その視線は冷たく、計算高さを感じさせた。


「こいつがよ、わざとかどうか知らねえが、オレたちの『プロジェクト』をぶっ壊しちまったんだよ。それがなけりゃ、オレたちは続けられねえんだぜ」


ハサウェイさんの方を見た。彼女は目を逸らしていた。まるで恥じているかのように。状況がますます分からなくなってきた。


「まだ分からない、とにかくハサウェイさんを放っておいてくれ!」


アルムは呆れたようにため息をついた。まるで幼い子供に説明するかのように。


「アレン、それだけじゃねえんだよ。知りてえのか?いいぜ、教えてやるよ。お前、オレに勝ったんだからな、何か知る権利くらいあるだろ。もしかしたらお前もオレたちに入れるかもしれねえしな。だから教えてやるぜ」


彼は仲間たちを見てから、続けた。


「オレたち二年生はよ、『プロジェクト』を持ってたんだ。クラスAの元生徒が開発した装置でな、アカデミーのネットワークをハッキングしてポイントを生成できるんだよ。オレたちがここで楽に暮らすための方法ってわけだ。でもな、ルールがあったんだぜ。使える奴は少数で、怪しまれねえように大量のポイントは生成しねえってな」


アルムが自信に満ちた表情で近づいてくる。自分が話していることが紛れもない真実だと確信しているかのように。


「でもよ、数日前、ポイントを転送してる最中に、そいつがオレにぶつかってきやがったんだ。その衝撃で装置がぶっ壊れちまった。それ以来、修理できねえんだよ。使えねえから、こいつを代わりにすることにしたんだぜ。オレたちの損失を補うために、ポイントを転送させてるってわけだ」


それを聞いて、胸が締め付けられた。怒りが全身を駆け巡る。


「で、どうだ?オレたちの秘密を教えてやったぜ。お前も仲間に入った方がいいんじゃねえか?才能あるしな。その代わり、そいつはお前だけのものにしてやってもいいぜ?」


「――全部、お前たちのクソみたいな装置を壊したからだろうが!?」


もう我慢できなかった。全力で叫んだ。彼らの言うことが信じられなかった。こいつらは生徒には見えない。悪魔のように振る舞っている。もう見ているのも聞いているのも耐えられなかった。


アルムは傲慢に笑った。


「入りたくねえってか?じゃあな...こいつは今からオレのペットだぜ、アレン。注意を払わねえやつの末路ってわけだ」


その優越感に満ちた視線が、まるで刃物のように突き刺さった。二年生の彼らは容赦がない。この場所では、生き残るための戦いが生徒たちを怪物に変えてしまう。


もう我慢できなかった。デジタルフィールドじゃない、現実で物理的に殴りたかった。こいつの顔を――でも...


その時、見知らぬ声が響いた。


「やあやあ、なんとも興味深い話を聞かせてもらったよ」


その声は重く、威厳に満ちていた。アルムを含め、全員がその声の方を振り向いた。


影の中から、確かな足取りで一つの人影が現れた。軽い笑みを浮かべていたが、その表情には確固たる自信が満ちていた。


「てめえ!」


アルムが言った。その表情には、彼から見たことのないような動揺が浮かんでいた。


なぜなら、この場所に現れたのは...


生徒会長の銀太郎さんだったからだ!


雰囲気が一変した。緊張感が重く圧し掛かってくる。まるで彼の存在がすべての抵抗を押し潰したかのようだった。制服は完璧に整えられ、胸の金色のバッジが生徒の頂点に立つ者であることを示していた。


「天城アルムさん、二年生、Cクラス...なるほどね。君が今告白したことは、実に興味深いよ」


穏やかな口調だったが、一言一言が判決のように重かった。


アルムが何か言う前に、さらに二人の人影が銀太郎さんの後ろから現れた。その二人はカズキとサンゴウの肩を掴み、ハサウェイさんを放させた。どうやら二人とも生徒会のメンバーらしい。その冷たく威圧的な視線に、アルムが後ずさった。


「エリザ・ハサウェイさんを掴むなんて、随分と下品なやり方だね?心道カズキ、二年生Cクラス、そしてサンゴウ・ハヤテ、二年生Cクラス」


全員が生徒会の手に捕らえられていた。アルムのグループにいた女子が逃げようとしたが、その行く手を遮ったのは――アイアンハートさん!?


アイアンハートさんはどこから現れたんだ?どうやってここを知ったんだ?


生徒会長がその女子に言った。


「もう抵抗しない方がいいよ。リツ・カゲロウ、二年生、Cクラス」


衝撃を受けた。生徒会長がアルムと共犯者全員を止めるなんて。


ハサウェイさんの方を見ると、今にも倒れそうだった。その時、彼女を抱きかかえるように現れたのは...


霧崎さん!?


彼女もここに?一体何が起きているんだ?


霧崎さんが心配そうな笑顔で僕を見て言った。


「エリザさんが困っているって分かったから、すぐに生徒会に行ったの」


生徒会長が満足そうに頷いた。


「よくやってくれたね、霧崎りんさん。さあ、天城アルムさん...君とそのグループには、生徒会室まで来てもらおうか」


アルムの顔が青ざめた。それが何を意味するのか、明らかに理解していた。


一言も発せず、彼と仲間たちは歩き始めた。二人の生徒会メンバーに護衛されながら。


生徒会長はもう少しその場に残り、僕たちを好奇心と尊敬が混ざったような目で見つめた。


「ウェバー・アレンさん、君の持つその潜在能力は本物だよ」


返事を待たず、彼は振り返り、アルムたちの後を追って歩いて行った。後に残されたのは、無視できない威厳の空気だった。


その瞬間、アカデミーの中には、もっと大きな何かが動いていることを理解した。


霧崎さんとハサウェイさんが急いで僕のところまで駆け寄ってきた。二人とも心配と安堵が入り混じった表情をしていた。


足はまだ震えていて、体はほとんど言うことを聞かなかった。


「……歩くのに、手助けが必要?」


霧崎さんがそう尋ねてきた。その声音は、いつもの彼女が放つエネルギーとは対照的に、とても柔らかかった。


僕はただ頷いて、かすかに「……はい」と呟くことしかできなかった。声はほとんど糸のように細く、バトルだけでなく、積み重なったストレスにも疲れ果てていた。


霧崎さんとハサウェイさんが僕の腕を支えて、歩くのを手伝ってくれた。彼女たちの手はしっかりしているけど優しくて、初めて、身体的な接触が恐ろしくなかった。恐怖はなかった。代わりにあったのは……何だろう。悔しさ、かもしれない。


保健室に向かって歩きながら、思考が僕を苦しめ続けていた。


本当に役に立ったのだろうか?関わったことは正しかったのか?これは全て意味があったのか?


心に浮かぶ疑問の一つ一つが、まるで剣のように僕の平穏を突き刺していく。


「アレン、エリザを助けてくれてありがとう」


後ろから歩いていたアイアンハートさんがそう言った。


その真摯な感謝の言葉を聞いて、頭が真っ白になった。まだ処理しきれなくて、立ち止まってしまった。それで霧崎さんとハサウェイさんも足を止めて、僕を見つめてきた。


緊張した沈黙なのか、穏やかな沈黙なのか、わからなかった。


「きっとあなた、自分がやったことは何の役にも立たなかったって思ってるんでしょ?でもね、それは違うの。あなたは自分が思ってる以上のことをしたのよ」


霧崎さんの口調はしっかりしていて、まるで叱責のようだったけど、その笑顔は安心感を与えてくれた。


「実はね、あなたがエリザさんを探しに行った時、あたしも隠れてついて行ったの。新聞部の子が、あなたの位置を追跡するのを手伝ってくれたのよ」


朱里さんのことだ。きっと僕がアカリさんに話したことを、霧崎さんに伝えたんだろう。そして霧崎さんは全て知ることになった。本当におしゃべりだな、朱里さんは。


霧崎さんを見ると、彼女の腕が僕の肩に添えられているのを感じた。以前ほど怖くない……彼女のちょっと意地悪そうな微笑みが、小さな溜息を引き出した。それはほとんど笑いに近かった。


どういうわけか、彼女の言葉だけで、重荷が軽くなった気がした。


保健室に着くと、ベッドに横たえられた。全身の筋肉が、ここにいられる心地よさに降参していくのを感じた。


その時、聞き覚えのある声がこの場所に響いた。


ドアの方を見ると、演劇部の部長、守さんが急いで入ってくるのが見えた。表情は心配そうだったけど、同時に叱責の色も帯びていた。


僕がハサウェイさんを助けたせいで、部活動を欠席してしまった。でもここに守さんは心配してくれている。おそらくアイアンハートさんも何か知っていて、マモルさんに僕が部活動を休んだ理由を伝えたのだろう……


こんなに多くの人が集まって、僕のことを心配してくれている。


僕なんかが、こんなことを受けていいのだろうか……? 本当に許されるんだろうか? いや……そもそも、こんな幸せを味わう資格が僕にあるのか?


守さんが近づいてきて言った。


「次からは、俺に頼れよ」


「……ど、どうして……?」


「どうしてだって?お前が演劇部に入った時に言っただろ。俺自身がお前を導くって。俺はお前の先輩だ。自分が担当する後輩たちを助けるのは、俺の義務なんだよ」


その最後の言葉と、温かい笑顔が、僕の心に響いた。


守さんは本当にいい人だ。僕が対峙した容赦ない二年生たちとは、全く違う。彼の助けようとする姿勢が、僕に今まで無視していた何かを考えさせた。


事態が落ち着いていくにつれて、思考が巡り始めた。


この場所、このアカデミーは、僕を変えている。


ただの静かで神経質な生徒だった。目立たないようにしたかっただけだった。でも今、経験してきた全てのことの後、想像もしなかったことに向き合っている。


問題のある生徒たちに立ち向かった。勝てるか確信がなくても、誰かを守った。そして、今まで経験したことのない方法で、人々と繋がり始めている。


初めて気づいた。このアカデミーは生き延びるための場所だけじゃない。成長できる場所でもあるんだ。


ここでの試練は容赦ないけど、同時に僕をより強く、より勇敢に、より人間らしくしてくれる。


その後、寮に戻ってベッドに倒れ込んだ。ただ眠りたかった。


目を閉じながら、明確でしっかりとした考えが心に根付いた。


もしかしたら、ただもしかしたら、このアカデミーは僕の破滅にはならないかもしれない。ここは、本当の自分を見つけ始められる場所になるかもしれない。


その考えとともに、疲労がついに僕を打ち負かし、深い眠りに落ちていった。


* * *

(りん)


数日前のこと、陸上部への通り道を歩いていた時のことだ。ふと視線を向けると、見知った後ろ姿が目に入った。エリザさん。でもあたしが知ってる場所じゃない。文学部の教室にも、場所にも向かってない。


好奇心に駆られて、そっと後をつけることにしたよ。


辿り着いた先で、あたしは息を飲んだ。


何人かの生徒たちがいた。エリザさんを囲んで。聞こえてくるのは、あたしの鼓膜を突き刺す笑い声。バカにしたようなその笑い。エリザさんの頭はずっと下がったまま。身動きもしない。そして、その中の一人が平気な顔して彼女に水をかけてやった。


ざあ、って音がした。


あたしの拳は、自分の意志とは関係なく握り締められていた。


叫び声を上げたい。走って行って、奴らをぶん殴りたい。でも……何か止めてくれた。状況が見えてないんだ。背景が分かってない。衝動的に飛び込んでいったら、むしろエリザさんのことを悪くするかもしれない。


あたしは歯を食いしばって、その場から去ることにした。


でも、その映像は消えなかった。バカにされ、水をかけられ、笑われるエリザさんの姿が。ずっと頭に残ってる。


あの子はなんでそんなことになってるわけ?


それより大事なのは……あたしに何ができるのか、ってこと。


その夜、眠れなかった。フラストレーションと、解決策を見つけたいっていう気持ちが、あたしの中でぐるぐる回ってた。朝が来た時、あたしは決めていた。「なぜ」に費やす時間なんてない。「どうするか」に集中しよう。


翌日、アレンくんに別れを告げて、陸上部の活動だって言い訳して、エリザさんを追った。


また同じ場所だ。今度はもっと近づいた。茂みの裏に身を隠して。耳をフルパワーで働かせて。


聞こえた言葉で、あたしの血が凍った。


奴ら、エリザさんを呪ってやがる。その仲間たちも一緒になって。これは……いじめだ。脅迫だ。


突然、プラスチックボトルが飛んできた。エリザさんの頭に。


ぱん、って音がした。銃声みたいに聞こえた。


あたしは奥歯を噛みしめた。怒りが、込み上げてくる。


その後、奴らの笑い声。


慎重に覗き込んだ。


見えたのは、怒りで目がくらみそうになるような光景。エリザさんが腕立てをしてる。下手くそに。そして、その上に、女子の奴の足が。足だ!まるであたしたちが床みたいな扱い。片手に何か持ってるけど、何だか分からない。


心臓がばたばたって鳴った。無力感に呑まれそうになった。叫びたい。走りたい。でも、知ってた。何もできないことを。


あたしはスマホを取り出した。写真だ。証拠を残す。後で、これを使える。


背景で聞こえる笑い声の中で、あたしの心は一つのことだけを考えていた。このクソみたいな状況を終わらせる方法を見つけること。


その夜、写真を見直した。フラストレーションが倍増した。これはいじめじゃない。虐待だ。完全に。


色々考えた。


「一人じゃ無理。これ以上は」


その時だ。一つのアイデアが浮かんだ。


誰か権力がある奴に言うしかない。生徒会長。


翌日、奴に証拠を見せに行く。ハイリスク、ハイリターンかもしれない。でも、エリザさんがあのままなのは許せない。


生徒会室へ向かってる途中、思い出した。


今日のアレンくんのこと。いつもより、アヤさんに近かった。一緒に歩いてた。演劇部の方へ。


えっ、って感じだった。でも同時に、良かった。アレンくんがあたし以外の人にも心を開いてるんだ。信頼してる。そういうの、見てて良い感じだった。やっと、やっと、アレンくんが周りの人を頼り始めたのかなって。


生徒会室に着いた。でも……奴はいなかった。


「生徒会長はいな……」


別の委員が言った。


「え、待ってよ。これ緊急なんだけど……」


「申し訳ないんですが、今日は皆、多忙でして……」


あたしはため息をついた。


翌朝――最悪のことが起きた。


エリザさんが、体操服で教室に来た。


不自然だ。こんなの。あたしは知ってた。理由を。


心がぎゅっと縮んだ。でも、奴のことをもっと見て、気づいた。足が……微かに震えてる。


ぜんぶが一つに繋がった。あの日見たこと。あの笑い声。この震え。


あたしの限界が来た。


表面では、誰も気づかないと思う。でもあたしは、内側で燃え上がってた。奴らを探して、ぶん殴ってやりたかった。爪が手のひらに食い込んでた。


授業中、あたしは手を挙げた。


「先生、陸上部の部長と話があるので、ちょっと席を離れてもいいですか?」


嘘だ。でも、もう待ってられない。


生徒会室の教室に着くと、一人だけいた。


生徒会長だ。本を読んでた。落ち着いてる。微動だにしない表情。なんか圧がある。紳士的でいて、それでいて……何か掴みがたい感じ。


あたしは深呼吸をして、全部を話した。


エリザさんのことを。写真を。脅迫を。虐待を。


生徒会長は何も言わずに聞いてた。顔は変わらない。あたしは不安になった。本当に助けてくれるのか?って。


でも、奴は引き受けた。


その後の日中、あたしはアレンくんの後をつけてた。アレンくんがエリザさんを探してるはずだったから。


その時だ。見かけたのは――


新聞部の部長。かれんさんだ。何か……独特な雰囲気の子。


あたしは深呼吸をして、あたし自身が何を見たのか、詳しく彼女に説明した。


「……ふーん」かれんさんは、あたしの話を聞き終わると、変な笑みを浮かべた。「おもしろい。その『証拠』、ちょっと見せてよ」


「え、でいいの?」


「ええ、手伝う。私、おけないタイプの女」


こうして、事態はもっともっと複雑になっていった。


週末、あたしたちは調査に出た。生徒会長の話によれば、奴らは二年生らしい。


何時間も探したけど、何も見つかんなかった。奴らは上手に姿を隠してるのかもしれない。


でも……気づいたことがある。


アレンくんがエリザさんと一緒にいるところを見かけた。


えっ……アレンくんが助けてるの?


あたしは思わず、そう呟いていた。


月曜日。事態は急加速した。


アヤさんがあたしのところに来た。


「アレンが来てないんだ……」


演劇部の守さんが不安な顔してた。


数分が経った。そしてあたしは、生徒会室のところへ走った。あたしはアヤさんと一緒に、生徒会長に報告した。何か起きてるって。アカデミーの後ろの庭だ。間違いなく。


生徒会のメンバーに連絡した。そしてあたしたちは走った。


その庭に着いた時……。


デジタルフィールドが活動していた。


スクリーンの中:アレンくんが戦ってた。二年生たちと。


生徒会長は何も言わずに、「まず様子を見よう」って合図した。


次々と、敵が減っていった。


でも……二人が倒れた時、奴らはエリザさんに走った。手を掴んで。動けないようにするために。


見るに堪えない光景だ。でも……なぜ奴らはエリザさんにこんなに執着してるの?理由が分からない。


また一人が倒れた。その奴もエリザさんのところに行った。もう二人、奴の手をつかんでる。


そして……。


最後の一人も倒れた。


アレンくんが勝った。


あたしの心に、何か得体の知れない感情が生まれた。


けど……奴らはまだ何かしようとしてた。脅迫、脅し。アレンくんに対して。


その時だ。生徒会長が動いた。


みんな、すごく頑張った。エリザさんを守るために。でも……一番の頑張りは、誰が見たって、アレンくんだ。


一人で。あいつらと向き合った。そして勝った。


あたしは見てた。アレンくんが、まだ何かに怯えてることを。女性への恐怖。それがまだ彼を制限してる。だけど、今日のことは……大きな一歩だと思う。あたしには分かる。


それでも……。


アレンくんがアヤさんに話しかけてるのを見た時。


いつものあたしとの関係より、もっと流暢に。もっと自然に。


あたしの胸に、何か変な感覚が走った。


そしてエリザさんの方を見た。彼女がアレンくんを見る目は……。


あたしは気づいてしまった。


感情が、あたしの中で何かを言い始めてた。


……嫌だ。


アレンくんが、あの子たちの近くにいるのが。嫌だ。


なんでだろう?


あたしは自分の感情の理由が、分からなかった。

次回――

噂は、ただの噂で終わらない。


ポイントシステム。

改ざん装置。

そして、生徒会が“見ているもの”。


アカデミーの裏側にある

不自然な沈黙と、意図された隙間が語られ始めます。


選ばれたのは、英雄ではなく――観測者。

見て、記録し、報告する存在。


静かな朝は、

確実に嵐の前触れでした。


次は、

「知らなければよかった真実」が、

ゆっくりと輪郭を持ち始めます。

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