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冬の終わりに咲く約束

過去を乗り越えた先に、

必ず「許し」があるとは限らない。


傷つけた側も、

傷ついた側も、

ずっと同じ場所で立ち止まったままかもしれない。


それでも――


誰かを本当に想うなら、

逃げずに向き合わなければならない瞬間がある。


言葉では変えられなくても、

その覚悟だけは、

きっと相手に届くから。

(アレン)


電車は単調な音を立てながら、灰色の風景を切り裂いて進んでいた。窓の外では、冬の毛布の下で眠る田畑が流れていく。都市の景色はいつの間にか松に覆われた丘陵地帯へと変わり、さらにその先には、時が止まったかのような住宅地の屋根が見えた。


僕は窓際の席に座り、膝の上で指を組んでいた。一キロ進むごとに、ずっと待ち望んでいた、そして同時に恐れていた瞬間が近づいてくる。


これが……人生で一番大事な日だ。


この旅の終わりに何が待っているのか、分からなかった。ただ一つ分かっていたのは、かんなが待っているということ。そして、彼女がほとんど話さない父親——彼女の人生のすべてを形作ってきたあの男も、そこにいるということだけだった。


電車が速度を落とした。駅がコンクリートとガラスでできた小さな避難所のように地平線に現れた。僕は背負っていたリュックを手に取り、深呼吸をして、降りた。


ホームはほとんど空っぽで、骨まで染み込むような冷たい空気が肌を刺した。空は均一な灰色の板のようで、雪が降る前の静けさに満ちていた。


そして、彼女がいた。


かんなは駅の出口で待っていた。クリーム色のマフラーに包まれていて、それが黒い髪と対照的だった。視線が交わると、寒さなんてどうでもよくなった。


「アレン」


彼女はそう言った。いつもの、言葉以上の何かを含んでいるような声で。


「かんな」


「歩こう」


前置きなしにそう言って、僕は頷いた。


それ以上の言葉はなかった。二人で黙って歩いた。気まずい沈黙ではなく、言葉なしで理解し合えるようになった二人が共有する沈黙だった。


かんなは一歩先を行き、幼い頃から知っている道を案内してくれた。道の両側には濃い色の木造家屋が並び、瓦屋根と春には美しいはずの庭が、今は冬の重みの下で眠っていた。


僕は彼女を観察していた。横顔はいつもと同じだったが、唇の結び方、肩の緊張に何か違うものがあった。


緊張してるんだ……見せてる以上に。


でも何も言わなかった。ただ彼女の隣を歩き、彼女にペースを決めさせた。


目的地に着いたとき、僕は立ち止まった。


黒神家の邸宅は威圧的だった。大きさだけではなく――確かに大きかったが――その存在感が。年を経た木造の外観、鍛鉄の金具が付いた門、その向こうに見える内庭……すべてが、重い石のような伝統を呼吸していた。


かんなはここで育ったんだ……要塞のようなこの場所で。


二人は黙って中に入った。木製の引き戸が重々しい音を立てて開き、かんなが小さく「ただいま」と囁き、僕は喉から辛うじて出た声で「お邪魔します」と呟いた。


かんなは軋む板張りの廊下を通って、僕を小さな部屋へと案内した。椅子はなく、磨かれた畳の上にクッションがあるだけだった。僕は座った。不器用で場違いな感じがした。


かんなは僕を一人残した。


「ここで待ってて」


僕は頷き、空っぽの空間を見つめた。壁には無言の戒めとして、半身の鎧が掛けられている。その下には、黒神家の家紋が刻まれた重厚な木製の盾があった。


黒神……黒は闇を表し、神は神性を表す。一つの名字に体現された、二つの矛盾する力。


こんなに場違いだと感じたことはない……彼女の領域にいる。彼女の家に。彼女が背負ってきたすべてのものの前に。


時間がガムのように引き伸ばされた。何分も過ぎた。いや、もしかしたら数秒だったかもしれない。胸の中で膨らんでいく緊張によって、時間が弾力的に、歪んでいた。


そして、足音が聞こえた。


力強く。確固として。一歩一歩が、血を凍らせるような決意で木の床を打った。普通の人間の歩き方ではなかった。世界が自分の意志で動くことに慣れた人間の足音だった。


神経が背骨を駆け上がるのを感じた。


引き戸が勢いよく開いた。


そこにいたのは……背が高く、肩幅が広く、自分の体重以上の重さを持っているかのような存在感を放つ男だった。かんなと同じ黒い髪は後ろに撫でつけられ、低い位置で結ばれていた。濃い口髭と刻まれた皺は、彼を老いて見せるのではなく……不変に見せていた。まるで山のように。


これが……かんなの父親……?


男の後ろに、かんなが抑えた緊張の表情で現れた。


男の暗く鋭い目が、短刀のように僕に突き刺さった。男が一歩前に出た。たった一歩だったが、部屋が縮むには十分だった。


「貴様がアレンとかいう奴か」


沈黙に響く重々しい声で言った。


「私は黒神宗一郎。かんなの父親だ」


僕は立ち上がった。怯える者の素早さではなく、何が来ようと立ち向かうことを決めた者の落ち着きで。状況が求める礼儀正しさで軽く頭を下げたが、視線は外さなかった。


「アレン・ウェバーです。お会いいただき、ありがとうございます、黒神宗一郎さん」


宗一郎はしばらく僕を観察した。それから、乱暴な動作で部屋に入り、非人間的なほどの直立姿勢で僕の前に座った。


かんなが僕に近づこうとしたが、父親の一瞥がそれを止めた。


「私の隣に座れ」


宗一郎は彼の隣のクッションを指して命じた。


かんなは躊躇した。それから、僕が今まで見たことのない決意で、僕の隣に座った。


宗一郎が眉をひそめた。口髭が怒りと驚きの混じった感情で震えた。しかし何も言わなかった。ただ娘を、まるで見知らぬ人を見るかのように見つめた。


「かんな……」


彼が言い始めたが、彼女はそれを許さなかった。


「ここにいたい」


低いが確固とした声で言った。


「アレンの隣に」


続いた沈黙は濃密で、僕が推測することしかできない緊張に満ちていた。宗一郎は長い間彼女を見つめ、一瞬、彼の目に何かを見た。怒りだけではない。……困惑? 疑念?


かんなの父は再び僕に視線を向け、表情が再び硬くなった。


「貴様がここでやることなど何もない。帰れ」


「帰れません、黒神さん。あなたと話す前には」


「話す?」


宗一郎が目に届かない笑みで繰り返した。


「何を話すことがあると思っているんだ?」


「かんなのことです」


娘の名前が宗一郎の顎を緊張させた。


「貴様に彼女の名を口にする権利はない。我が一族に口出しする権利もない。だから最後に言う。帰れ、さもなくば警察を呼ぶ」


胃の中で恐怖を感じた。でも、他の何かも感じた。もっと確固とした何か。


「呼んでもいいです」


視線を外さずに言った。


「でも、その前に僕の話を聞いてください。一人で来たわけじゃありません。かんなが来てほしいと頼んだんです。僕にあなたと話してほしいと。何か言いたいことがあるなら、言ってください。でも、聞いてもらわずには帰りません」


続いた沈黙は濃密で、抑えられた電気で満ちていた。


宗一郎は長い間僕を見つめた。僕は彼の視線を受け止めた。


「よかろう」


刃のような冷たさで言った。


「貴様が望んだものを手に入れた。スペースだ。時間だ。話せ」


これから言う一言一言が重い石のように感じられた。でも、もう後戻りはできない。今さら。


「この機会をくださり、ありがとうございます」


軽く頭を下げて始めた。


「でも、率直に言います。かんなを放っておいてください。きっぱりと」


宗一郎が片眉を上げた。彼の顔は驚きではなく、抑えられた苛立ちを示した。


「放っておけ?」


まるでその言葉が侮辱であるかのように繰り返した。


「貴様は、私の家に来て、私が自分の娘をどう扱うべきかを指図する権利があると思っているのか?」


「もしあなたが自称する父親なら、他人に言われるまでもなく、既に知っているべきことです。でも、それが見えないから、僕はここにいます」


宗一郎が顎を食いしばった。膝の上に置かれた手が拳に握られた。


「貴様が我が一族について何を知っていると思っているんだ? 黒神の名を最高位に保つために我々が払ってきた犠牲について? 何世代も働いてきて、この名字が何かを意味するようにしてきたことについて?」


「おっしゃる通り、そのことは何も知りません」


僕は躊躇せずに認めた。


「でも、関係ありません」


宗一郎の拳が畳を鈍い音で打った。


「貴様、私を侮辱するつもりか!?」


「それが重要じゃないからです」


僕は動じずに続けた。


「あなたは犠牲について、遺産について、黒神であることの意味について話します。でも、かんなは? 彼女が望むものは? 彼女が必要とするものは?」


宗一郎が抗議しようと口を開いたが、僕は機会を与えなかった。


「分かりますか? 僕には、あなたが守っているのは伝統ではないように見えます。恐怖です」


宗一郎が声を張り上げ、部屋中に響いた。


「貴様は私のことを何も知らん!! 私が犠牲にしてきたものを何も知らん!! 長男の宗真は……完璧な後継者だった!! そして私を裏切った!! 一言もなく私を捨てた!! それから凛華、私と同じ性格、同じ強さを持っていた……彼女も私を捨てた!! そして慎二……慎二は私の最後の希望だった!! だが彼さえも……」


彼の声が震えた。一瞬、鋼の仮面にひびが入った。


僕はその名前を少しだけ考えた。かんなの兄と姉の名前だった。


僕は躊躇せず、かんなの父が受け入れることを拒否している残酷な真実を晒し続けた。


「かんなは人生のすべてを、あなたが望むものになろうとして過ごしてきました。自分の欲望、自分の恐怖を窒息させて、家の名が汚れないように。そしてあなたは彼女を見てさえいなかった。後継者しか見ていなかった。物を。娘を見ていなかった」


宗一郎が飛び上がった。彼の影が僕を完全に覆い、一瞬、男が僕を殴るのではないかと思った。


でも僕は動かなかった。かんなの父の目をしっかりと見つめたまま、揺るがなかった。


「貴様は本を何冊か読んだり、映画を何本か見たりしたからといって、私に子供の育て方を指図できると思っているのか?」


宗一郎が吠えた。


「貴様は父親であることを何も知らん!! 私が背負ってきた重みを何も!!」


「その通りです」


僕も立ち上がって言った。


「そのことは何も知りません。でも、一つだけ知っていることがあります。あなたも父親であることを何も知らないということです。父親は子供を囚人にしません。彼ら自身も理解できない期待で窒息させません」


宗一郎が怒りで震えた。でも僕は続けた。今ここで止まれば、すべてが失われると分かっていたから。


仮面の奥から、押し殺された息遣いが漏れた。鋼のような顔も、今は脆く見える。


「かんなは……私に残された唯一のものだった」


僕は彼を見た。怪物ではなく、人間を見た。怒りの背後にある痛みを見た。


「だから、彼女をそう扱ってきたんですね」


保つのが困難だった落ち着きで言った。


「彼女のために最善を望んでいたからではなく。また別の子供を失うことを恐れていたから」


宗一郎は答えなかった。


「でも、かんなは資産じゃありません」


僕は続けた。


「物でもない。遺産を維持するための道具でもない。あなたは義務について話しますが、最も基本的な義務を忘れています。父親であるということを。かんなは人生のすべてを、あなたが望むものになろうとして過ごし、家の名が汚れないように自分の欲望を窒息させてきました。彼女が見えないんですか? あの単調な顔の向こうに、ただ人間でいたいと思っている女の子がいることが見えないんですか?」


宗一郎がかんなを一瞬見たが、視線は僕の目に戻った。


「経験が教えてくれたことは、感情は儚いということだ、小僧」


宗一郎が言った。「小僧」という言葉が侮辱のように出た。


「私はこの帝国を論理と鉄の意志で維持してきた。ロマンチックな理想で世界が動くと信じている小僧に娘の未来を譲るつもりはない」


僕は立ち上がった。一歩前に出て、宗一郎のプレッシャーゾーンに挑んだ。


「脅してもいいです。全力を使って僕を遠ざけてもいい。でも僕は帰りません。あなたよりも頑固ですから、黒神さん。かんながただの装飾品でしかないガラスの檻に戻ることを、僕は許しません」


宗一郎が目を細めた。濃い眉が本物の疑念の表情で寄せられた。僕の決意の中の何かが彼を困惑させた。


「なぜだ?」


宗一郎が、危険な囁きにまで声を落として尋ねた。


「なぜ、私の娘のためにそこまで行くんだ? なぜ、彼女のために貴様の未来を危険にさらすんだ? これはただのプライドか、それとも貴様の執着の背後に何か……病的なものがあるのか?」


心臓が跳ね上がるのを感じた。質問は罠だったが、同時にドアでもあった。


一秒躊躇した。かんなを探して目を向けると、彼女は頭を下げたまま座っていて、まるで最後の一撃を待っているかのようだった。


彼女を見て、疑念が蒸発した。


「彼女を愛しているからです」


空気を切り裂く明瞭さで言った。


「プライドのためでも、理想主義のためでもありません。かんなを愛しています。『黒神家の後継者』でも、『完璧な道具』でもない。誰も見ていないときに笑う女の子を、恐れを持ち、自由でいたいと思っている彼女を。そして、彼女が自分の人生を生きられるために、毎日あなたと対峙しなければならないなら、そうします」


頭を回してかんなを見た。彼女は目を大きく見開いて僕をじっと見つめていた。まるで啓示を受けたかのように。


宗一郎が苦い笑いを漏らした。


「それならなおさら、貴様をかんなの近くに置くわけにはいかん」


僕が一歩踏み出した。宗一郎も同じく。衝突寸前だった。


続いた沈黙は絶対的だった。宗一郎が爆発寸前で、顔が憤慨で赤くなっていたとき、引き戸が開く柔らかな音が緊張を破った。


一人の女性が、宗一郎の怒りさえも凍らせるような優雅さで部屋に入ってきた。淡いピンクの髪を持ち、かんなの目と全く同じ灰色の目をしていた。春の花の模様が入った上質な絹の着物を着ていて、動くたびにそれらが生命を得たかのように見えた。真の家長の存在感を放っていた——叫ぶ必要なく命令できる人。


「もうそれくらいにしなさい、あなた」


女性が柔らかいが反論を許さない声で言った。


「雅……」


宗一郎は縮こまったように見えた。女性の穏やかな視線の前で、権威的な姿勢が揺らいだ。


僕はその女性を観察した……この人が、もしかして……かんなの母親……?


雅は僕に歩み寄り、好奇心を持って観察した。それからかんなを見て、初めて、彼女の目に本物の優しさの閃きを見た。


「私は黒神雅」


軽く頭を下げて言った。


「かんなの母です。そして、あなたがアレンさんね? 使用人が特別なお客様がいらっしゃったと知らせてくれました」


僕は深く頭を下げた。


「お会いいただき、ありがとうございます、黒神雅さん」


雅は宗一郎に向き直り、もはや優しさではなく、鋼のような決意が彼女の目にあった。


「あなたのお父様の過ちを繰り返すつもりなの、宗一郎? 宗真を失い、凛華を失い、慎二を失ったように、かんなまで失うつもり?」


宗一郎が震えた。手が震えていた。


「私は……ただ……遺産を守りたかっただけで……」


「それでどんな遺産なの?」


雅が尋ねた。


「私たちを孤独にさせた遺産? 子供たちを遠ざけた遺産? 私たちに残された最後の子まで奪おうとしている遺産?」


宗一郎が頭を下げた。僕が見て以来初めて、彼の巨大な姿が縮んで、敗北したように見えた。


彼女が微笑んだ。彼の肩に手を置いた。シンプルな仕草だったが、男のすべての頑固さを抜き取ったように見えた。


「この若者は、あなたが決して認める勇気がなかったことを言ったのよ」


彼女が囁いた。


「かんなはもう子供じゃないわ。彼女を見て。本当に見なさい、宗一郎」


宗一郎が娘を見た。本当に見た。手の緊張、目の反抗の輝き、そして何より、僕が彼女を守る方法を見た。


大男が長いため息をついた。何年もの硬直性を運び去るような音だった。


「時は……」


宗一郎が始めた。声はもう疲れていて、以前の権威の痕跡はなかった。


「時は、私のプライドが認めるよりも速く過ぎる。数ヶ月で卒業するな……大学に行くのか?」


かんなが頷いた。


「そうか……」


気まずい沈黙が流れた。宗一郎は結った髪を整え、誰の目も見なかった。口髭が微かに震えた。


「この若者が私に立ち向かうほど頑固なら……君を守るのに必要な意志を持っているのだろう……」


庭に続く扉に近づいた。全員に背を向けて、声が途切れがちに出た。


「宗真は……私の誇りだった。完璧な後継者。そしてある日、何も言わずに去った。手紙だけを残して。『あなたが期待するものにはなれない』と」


声が震えた。


「凛華は……私の鏡だった。私と同じくらい頑固だった。そしてある日、宗真を追って去った。私が間違っていると、名字を超えた何かがあると言った。私は彼女の話を聞かなかった」


宗一郎の声が震えた。泣いていたが、全員に背を向けていたので誰も彼の涙を見ることができなかった。でも、彼はそれを隠そうとしなかった。


「慎二は……慎二は仲介しようとした。私の方法が皆を傷つけていると言った。でも私は……他の二人を既に失っていた。遺産を死なせるわけにはいかなかった。かんなにしがみついた。これまで以上に強く」


曇り空に視線を上げた。以前は威圧的だった姿が、今は巨大な痛みで満ちていた。


「そして、彼女を壊した。兄姉を壊したように。課すこと以外の方法を知らなかったから」


かんなが震えていた。僕は彼女の手を取りたい衝動を感じたが、動かなかった。これは彼女に属する瞬間だった。


「お父さん」


かんながほとんど聞こえないほど小さな声で言った。


「憎んだことは一度もない。一度も。ただ……見てほしかっただけ。私を。後継者としてじゃなく。物としてじゃなく。私を」


宗一郎が泣き崩れた。大男、黒神の遺産の守護者が、子供のように泣いた。肩が最も深いところから引き裂かれたような嗚咽で揺れた。


「すまない」


涙の間に言った。


「すまない。すまない。すまない……」


かんなが立ち上がった。彼に歩み寄り、背中から抱きしめた。宗一郎が振り返り、膝を折って彼女を抱きしめた。


彼女の手の上に手を置き、彼は残された唯一のものにしがみつく者の力でそれを握った。


雅が微笑んだ。小さく、悲しいが、希望に満ちた笑顔だった。


「まだやり直せるわ」


囁いた。


「黒神家としてじゃなく。家族として。ただそれだけ」


宗一郎が頷いた。話すことができずに。


僕は心が締め付けられるような思いでその光景を見ていた。敵対者としてこの家に入り、怪物と対峙する覚悟だった。そして、壊れた男を見つけた。教えられたことを繰り返すことしか知らず、今、おそらく初めて、人間であることを学んでいる男を。


宗一郎が立ち上がった。生涯の重みを肩に背負っているかのようなゆっくりとした足取りで、再び引き戸に向かって歩き、空を見つめたまま、全員に背を向けて立った。


「アレン」


全員に背を向けたまま言った。


「はい」


「貴様は見た目以上に面白い奴だ」


間があった。それから、途切れた声で。


「……かんなの幸せを頼む」


心臓が跳ね上がるのを感じた。


「かんな」


宗一郎が続けた。声が少し厳粛になった。


「私の下でのこれまでの時間が君を傷つけたのなら……許してくれ。老いを感じ始めている。そして、どうやら感情は年齢とともにより強く打つようだ」


それ以上何も言わず、誰にも顔を見せないまま、庭に出て、風に揺れる松の間に消えていった。


かんなが抑えた嗚咽を漏らした。純粋な解放の音だった。


もう物ではなかった。自由だった。


雅がかんなの傍に近づき、手をその手の間に取り、輝く目で彼女を見つめた。


「許してね」


震える声で囁いた。


「私にも責任があるの。もっと早く何かすべきだった。いつもお父様が間違っていると分かっていたけど、対峙する力がなかった。臆病だった。彼にすべてを任せて、宗真、凛華、慎二が去るのを見たとき、それを止めるために何もできなかった。でも今回は……今回はかんなのためにやらなければならなかった」


かんなが首を横に振った。


「お母さんを責めたことは一度もない。一度も。この家で唯一の温かさだったから」


雅が静かに泣き、強く彼女を抱きしめた。それから、離れて、優しさを放つ笑顔で僕を見た。


「彼女を大切にしてね、アレンくん。そして、自分自身も大切にして。あなたもこの家族の一員として場所を得たのよ、知ってた?」


言葉が出てこなかった。ただ頷くことしかできなかった。


雅は来たときと同じ優雅さで退出し、二人だけを残した。


僕とかんなは荒涼とした庭に出た。冬で裸になった植物が、晴れ始めた空に対して灰色のシルエットを描いていた。頬に冷たさを感じたが、気にならなかった。


葉のない木の下で立ち止まるまで、黙って歩いた。


「かんな」


ずっと先延ばしにしてきた言葉がついにその瞬間を見つけたと感じながら言った。


「言ったことは、君の父親を説得するためだけじゃなかった。本当のことだった。君を愛してる。でも……」


一息ついた。誠実さは、いつものように、ナイフだった。


「でも、君だけじゃない。ひめかも、りんも、アヤも、エリザも愛してる。違う形で、でも同じ強さで。これが複雑だって分かってる。社会が期待するものじゃないって分かってる。でも嘘をつきたくない。嘘の上に築かれたものが後で崩れるのは嫌なんだ」


かんなはすぐには答えなかった。


心が沈むのを感じた。


彼女を失った……やりすぎた。


でも、かんなが微笑んだ。小さな、ほとんどいたずらっぽい、今まで見たことのない笑顔だった。


「知ってた」


かんなが言った。


僕は瞬きした。


「えっ!?」


「知ってた、アレン。ずっと前から」


庭を見渡す木製のベンチにかんなが腰を下ろした。僕もその隣に座ったが、まだショック状態だった。


「ずっと観察してた」


かんなが続けた。武装解除するような落ち着きで。


「いつも観察してた。ひめかを、名前を口にするときのあの甘い悲しみで見てるのを見た。りんを、まるで自分の一部であるかのように心配してるのを見た。アヤと、世界に他の誰もいないかのように戦って笑ってるのを見た。エリザと、彼女を理解しようとして、理解されようとして議論してるのを見た。そのすべてが君を作ってる」


何を言えばいいか分からなかった。


「最初は」


かんなが告白した。


「わがままだった。アヤが演劇で告白したとき、胸に嫌な何かを感じた。君を独占したかった。頭がそうあるべきだと、それが普通だと言ってた」


雲が開き始めて太陽の光が差し込む空を見上げた。


「でも、それから理解した。君が所有する物じゃないと。君が自分自身に嘘をつけないと。そして、本当に君を愛しているなら、君をそのまま愛すべきだと。すべてを含めて。分かれた心、不器用な誠実さ、すべてを同じ強さで愛する君の方法を」


目が潤むのを感じた。


「それに気づいたとき」


かんなが続けた。


「エゴイズムが消えた。そしてその代わりに……感謝を感じた。ひめかが受け入れられることを理解させてくれたから。りんが忠誠を教えてくれたから。アヤが愛は挑戦になり得ることを示してくれたから。エリザが理性と心が対立しないことを証明してくれたから。そして彼女たち全員が、それぞれの方法で、私にも教えてくれた。彼女たちを失いたくない。誰も一人にしたくない」


僕は彼女に向き直った。


「かんな……」


「そのまま受け入れる、アレン」


穏やかな笑顔で言った。


「アレンとアレンの分かれた心を。そして、その断片の一つしか持っていなくても、それで十分。アレンが感じているものが本物だと分かっているから。アレンが本物だと分かっているから」


何かが胸の中で解き放たれるのを感じた。安堵ではなかった。感謝だった。畏敬だった。自分が作り出したすべての複雑さの中で、一目で理解してくれる誰かを見つけたという認識だった。


冷たさは続いていたが、空は完全に晴れ、最初の太陽の光が雲を突き抜け、眠っている大地を温めていた。


僕は上を見上げた。


「見て」


言った。


「着いたとき曇ってた。でも今……太陽が出てる」


かんなも空を見上げた。


僕は彼女の手を取った。冷たい指を感じたが、彼女はそれを引っ込めなかった。逆に、驚くほどの力で握りしめた。


「かんな」


言った。


「愛してる」


「私も、アレン」


冷たいのではなく、深い落ち着きで答えた。


そして、冬を破る最初の太陽の光の下で、キスをした。


映画のようなキスではなかった。壮大でもエピックでもなかった。柔らかく、温かく、寒さの後には必ず春が来るという約束のようだった。


かんなの唇は柔らかく、その瞬間に、言ったすべての言葉、すべての告白、すべての約束が一点に凝縮されるのを感じた。


離れたとき、かんなが微笑んだ。僕が認識することを学んだ、あの小さな、いたずらっぽい笑顔を。


「とても長い冬だった」


彼女が言った。


僕は庭、裸の植物、晴れた空を見た。


「でも、もうすぐ春が来る」


そこに、黙って、光が風景を変えるのを見ていた。


これ以上の言葉は必要なかった。二人の間では、すべてが一目で理解されたから。


僕とかんなは、手を繋いで、急がずに庭を歩いた。先にはたくさんのことがあった。卒業。未来。決めなければならない決断。


でも今は、ただそこにいたかった。その瞬間に。すべてが自分の場所を見つけた瞬間に。


「アレン」


かんなが地平線を見ながら言った。


「卒業の後、何をする?」


考えた。一瞬、未知への恐怖が襲ってきた。でも、手の中のかんなの手を感じ、ひめか、りん、アヤ、エリザを思い出した。待っている彼女たち全員を。


「いつも通り」


微笑んで言った。


「彼女たちをがっかりさせないように努力する」


かんなが微笑んだ。


「できないと思う。でも、許すから」


僕はまた笑い、笑い声は松の間に消えていき、冬の最後の残響を運び去った。


五人……ひめか、りん、アヤ、エリザ、かんな。


全員が真実を知っている。全員がそれぞれの方法で受け入れた。


そして今、残されたのは未来だけだった。


卒業が近づいていた。その後、何が起こるか分からなかった。それぞれが自分の道を歩むだろう。


でも、内なる何かが、それが終わりではないと告げていた。


何をするか分からない……でも、一人じゃないことは分かってる。


世界はまだ凍てついたままだったけれど、僕の手に触れる彼女の熱は、どんな春の陽だまりよりも温かかった。

次回―― 第124話「卒業」


一つの時代の終わり。

そしてそれは新たな始まりを告げる終わりとなるだろう。


三年間の終わり。

別れと旅立ち。

そして――それぞれが選んだ未来。


最後の制服。

最後の教室。

最後の春。


卒業式の日、

アレンは仲間たちの姿を見つめながら、

この学院で過ごした時間を思い返す。


レン、エドワー、マリ、朋也、みこ、テオ、テア。

笑った日々も、傷ついた日々も、

すべてが確かにそこにあった。


そして――


ひめか、りん、アヤ、エリザ、かんな。


複雑で、不完全で、

それでも確かに愛していた人たち。


桜の舞う卒業の日、

最後に彼らが辿り着く答えとは――。


さらに、時は流れ。

大人になった彼らの未来も描かれる。


仕事。

夢。

結婚。

そして、

変わっていくものと、

変わらず残り続ける想い。


『Fクラスの英雄 ―アカデミー・ハックウェイク戦記』

ついに完結――。

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