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時を超えた証人

過去は、消えることはない。


どれだけ時間が経っても。

どれだけ形が変わっても。


そこにあった選択も。

そこにあった過ちも。


すべては、どこかで繋がり続けている。


誰かが残したもの。

誰かが引き継いだもの。


そして――


そのすべてを知ったとき、

人は何を選ぶのか。


見届けるのか。

終わらせるのか。


それとも――

同じ過ちを、繰り返すのか。

(サンティ)


オフィスを支配する静寂。コーヒーカップに当たるスプーンのかすかな音と、換気システムの低い唸りだけが響いていた。


最後の署名を必要とする書類の上にペンを置き、しばらくの間、椅子に背を預けた。何十年にもわたって下してきた決断の重みを感じながら。


また冬か……


立ち上がり、ソファへと歩を進める。また一年が過ぎる。


部屋の隅に常備されているコーヒーメーカーからカップに注ぐ。香りが包み込む。自分のものではないような、それでもはっきりと覚えている記憶を運んできた。


座り、両手でカップを包む。思考を漂わせる。


アロン・ウルフリック。


その名前が頭の中で鐘のように鳴り響いた。ひめかの曾祖父。時代を先取りした天才。先を行き過ぎたのかもしれない。


古い報告書、暗号めいたメモ、異星の言語で書かれたかのような図表を思い出す。アロンは非凡なものを創造した。意識を持つデジタル存在。コードと感情から生まれた知性。機械でも人間でも単独では理解できないものを理解するよう設計された。


だが不安定だった。感情の処理が異なっていた。あまりにも文字通り。あまりにも強烈。それがあの最初の襲撃を引き起こした。


アダム・ウォルターとトム・ヴェスパーを思い出す。何十年も前のあのバトル。今アカデミー・ハックウェイクが建っている場所が、データと怒りで作られた存在に破壊された時。オレは古い友人たちの助けを借りて、それを封じ込めた。


だが破壊はできなかった。


懐かしい笑みが浮かぶ。


トム、"M"の血統。アダム、"P"の血統。二人が組んだ時、彼らはそれを奇妙な呼び方をしていた……「M.P.」と。揺るぎない信念を持つ男たち。計り知れない力を持つ男たち。永遠の忠誠を持つ男たち。


アダムとトムは、人間が持つ力……「霊輝」を制御する方法を知る、非常に強力な血統の出身だ。


思考はさらに遡る。もっと昔……最初の友人たちを思い出す。あの「M.P.」、血統の運命を変え、霊輝を制御した者たち。あの世代の「M.P.」は「選ばれし者たち」と呼ばれていた。


オレは彼らを知るのに十分な時間を生きてきた。彼らから学ぶために。彼らができなくなった時、その遺産を背負うために。


そして今、残っているのはオレだ。


カップをテーブルに置き、立ち上がる。街を見下ろす大きな窓へと歩く。


メトロポリスと名付けられたこの街が眼下に広がっている。光と影のモザイク。影に潜む危険を知らずに流れていく命たち。


あの最初の襲撃の後、エーテリアルは倒されたと思った。だがエーテリアル原初は存在し続けていた。潜伏し、待っていた。


それと戦うため、アカデミーを設立した。アロンが残したメモと文書を使った。不都合な真実を示す研究……原初は強い感情を糧にしていた。


若者……彼らの感情は激しく、不安定で、完璧だった。


それがアカデミー設立の当初の目的だった。強い感情的絆を持つ若者たちが集まる場所を作り、原初を出現させ、最終的に破壊する。


だが計画は狂った。


コーポレーション5i、監督を任せた科学者のグループが、疑わしい決定を下し始めた。無許可の実験。データの操作。そして、原初が目覚めようとしているかのような、ゾーンの奇妙な変化についての報告。


これらすべて、ヨルムから得た情報のおかげで知った。最も深い影の中での優れた観察者であり、偉大な友人。


異常が始まってから二年後、すべてが爆発した。正確には、報告によれば、ひめかがアカデミーに入学してから三年目に達した時だった。


振り返り、オフィスの壁に掛けられた鏡を見る。そこに映る顔は人間だった。少なくとも、そう見えた。だがその外見の下には、別の何かがある。オレ自身が作ったもの。


この鎧……この罰。


胸にそっと触れる。


オレは天才だ。それは誰も否定できない。そしてその天才性を使って、生き続けるための技術的な鎧を作った。ほぼ不死身に。だが虚栄心や力への欲望からではない。


罰として。


友人たちを裏切った。最初の友人たちを。重要な瞬間に彼らを一人にした。そして彼らが代償を払った。あの時、 友人たちを裏切った。オレの人生で最初にできた、かけがえのない友人たちを。 重要な瞬間に彼らを一人にした。そして彼らが代償を払った。アダムやトムとはまた別の、オレにとって特別な友人たちだった。


だから不死という罰を科した。常に人類を助けるために。「M.P.」とその未来のすべての世代のためにそこにいるために。贖罪のために……たとえ贖罪が完全には訪れなくても。たとえ訪れなくても、贖罪を求め続ける。


最初の友人たちを裏切ったから……。


だが心の奥底では知っている。彼らはオレを責めないだろう……彼らはそういう人間だから……とても正直で優しい。


窓に戻る。街が眼下に広がる。活気に満ち、生きている。何年も、何十年もかけてその進化を見てきた。帝国が崩壊し再生するのを見た。技術が出現し時代遅れになるのを見た。世代全体が過ぎ去るのを見た。


この街は物語で溢れている……そしてオレ自身も知らない謎で。


だが助けられる限り、そうする。それがオレの目的。贖罪。人生。


アカデミーについて考える。今やただの普通の学校だ。エーテリアルは倒され、システムは解体され、生徒たちは自由になった。


繋がりを断つべきかもしれない……誰か引き継ぐ者を探す。オレにはもう関係がない。


コーポレーション5iも監督が必要だが、すべてを管理することはできない。アカデミーの未来は不確かだが、少なくとも長年繁栄させられる誰かに任せたい。


適任者は誰だろう?


適任者と言えば……。


アレンを思い出す。ヨルムの報告によれば、不可能を成し遂げた少年。アカデミー全体を動かし、教師たちを味方につけ、原初に立ち向かい、ひめかを救った。


普通の少年……並外れたことをした。


彼を近くに置きたい。5iで働いてもらうとか。だがその決断は完全にアレン次第だ。オレは干渉できない。すべきではない。


ため息をつく。息が窓ガラスを曇らせる。外では冬の寒さが感じられる。


また冬……生きてきた多くの冬のうちの一つ。


思考は報告書に戻る。銀太郎が卒業前に送ってきたもの。特に一つのフレーズが記憶に響く。


『デバイスは埋められた。二度と誰も使えないように』


再びため息。


デバイス……あれを回収するのは簡単ではない。


なぜならオレは、ほとんどの者が知らないことを知っているから。アカデミーには、それを探しに来た少年がいた。


魔術師……科学では説明できない力を扱う家系の。


コンピュータに近づき、生徒の記録を検索する。そこにあった。写真、名前、データ。


アレクサンダー・アッシュフォード。


アッシュフォード一族か……面倒だ。


アッシュフォードを知っている。世界中に広がる同盟を持つ、最も強力な魔術師の家系の一つ。そして最も重要なのは、「M.P.」との同盟を共有している。


魔術師には黄金律がある。誰も自分たちの存在を知ってはならない。


だがアカデミー内でのアッシュフォード一族の行動は、非常に大きな潜在的リスクだった。


なぜそんなことを? 実験のため? それとも何か企んでいる?


答えは分からない。


介入すれば、アッシュフォード一族と対立することになる。それは問題を招くだけだ。


デバイス自体は魔法の物体だった。魔力が染み込まされ、制御魔法を発動するようプログラムされていた。画面を見た者を催眠状態にする。


正確にどう機能するかは知らないが、その危険性は理解している。知っていること、報告書、被害者に基づいて推測できる。


アッシュフォードはなぜあのデバイスを欲しがる?


5iの科学者たちがアカデミー内で重要な地位にある特定の人物に施した「記憶の洗浄」も思い出す。クリーンで、損傷のないプロセスだが、脆弱。記憶はまだそこにあり、潜伏し、それらを呼び戻す何かを待っている。


デバイスはそれをできるかもしれない。あるいはもっと悪いことを。


画面を見つめ続ける。アレクサンダー・アッシュフォードの写真が固定されている。


介入すべきだ。さらなる被害を引き起こす前に止めるべきだ。


だができない。


自分自身のルール……原則。


今介入すれば、均衡を破る。


ため息とともに画面を消す。


「介入するかと思いましたよ、サンティ殿」


声がソファから届いた。穏やかで、馴染みのある。


驚かなかった。彼が現れる方法には慣れている。


ゆっくりと振り向く。


そこにいた。自然な優雅さで座り、どこから取り出したのか分からないワイングラスを手にしている。完璧な黒いスーツ、血のように赤いネクタイ、右目にモノクル。そして、あの目……赤く、鋭く、見えるものを超えて見ているようだ。


「何の用だ?」


彼は微笑んだ。謎めいた、何も明かさない微笑み。


「お会いしに来ただけです。前回お話ししてから随分と時間が経ちましたので」


眉を上げる。


「本当に長かったのか? 君にとって時間は相対的だろう」


彼は再び微笑んだ。


「確かに。ですが、私の計算を過小評価なさらないでください。十分な……時間が経過しました」


ソファに近づき、彼の向かいに座る。


「なぜここにいるのですか?」


彼はワインを一口飲んだ。


「お話ししたいことがあるのです」


「何だ? また強力な敵が現れるのか?」


「はい。ですが今ではありません」


眉をひそめる。


「では、いつだ?」


彼はじっと見つめた。


「数年後、レックス・ヴェスパーの血統から『M』が誕生します」


心臓が……今血液を送っているものが何であれ……加速するのを感じた。


「レックス? オレが知っているレックスか?」


「その通りです。彼の子孫は何かをもたらします。その者が生まれた時、動き始める何かを。注意が必要です」


「いつもより曖昧だな。説明しろ」


再び微笑んだ。すべてを知り、何も明かさない微笑み。


「わざとそうしているのです、サンティ殿。ですが今は詳細を心配なさらないでください。その時が来れば、どんな問題にも対処できると分かっていますから」


彼を見つめる。信じられない。


「なぜそこまでオレを信頼する?」


「明白ではありませんか? あなたは天才です。この地を踏んだ者の中で比類なき」


胸に重みを感じる。


「だが天才も間違いを犯す。そしてオレは……」


「それは普通のことです」


彼が遮った。


「あなたは人間です。どれほど天才であろうと、間違いを犯すのは普通のことです、 友よ」


笑った。苦い、だが本物の笑い。


「人間か……そう見なしてくれて感謝する」


彼はあの赤い目で見つめた。そして一瞬、その中に何かを見た。定義できない何かを。


「見なしているのではありません。そうなのです。まだそうなのです」


何と答えればいいか分からなかった。彼と話す時、いつも居心地が悪い。なぜなら彼はいつも的を射るから。いつも聞きたいことではなく、聞く必要があることを言う。


彼は立ち上がり、空のグラスをテーブルに置いた。


「では、失礼します。他に用事がありますので」


頷く。


「気をつけろ」


彼は振り向いた。一瞬、表情が和らいだ。


「逆です。あなたに幸運を。そしてお気をつけて、サンティ殿。あなたは自分が思っている以上に、多くの者にとって重要な存在なのですから」


「そうじゃない……」


「そのように自分を過小評価しないでください、我が友よ」


そして消えた。いつものように。音もなく。閃光もなく。ただ……もういなかった。


オフィスに一人残され、彼がいた空間を見つめる。


名前を持たない者……彼をオレがまだ真の人間だった頃から知っている……だがオレと違い、彼は多くを成し遂げ、すべてを犠牲にした真の英雄……人としての、人間としての名前さえ捨てて……ただ呼ばれるために……


時計。


時計はいつも最も必要な時に現れる。


ため息をつき、立ち上がる。窓に戻り、眼下に広がる街を見る。


レックスの血統から新しい『M』……何を意味する?


分からない。だが一つ分かっている。その時が来たら、オレはそこにいる。いつものように。何十年もそうしてきたように。これから来る何十年もそうするように。


それがオレがここにいる理由だから……助けるため。守るため。贖うため。


再び息が窓ガラスを曇らせる。指で小さな円を描き、それを消す。


また始まる物語……そしてオレは、いつものように、証人となる。


街に雪が降り続ける。冬は続く。


だがオレの心の中で、新しい夜明けへの希望は決して消えなかった。

次回――


アレンはついに最後の試練にたどり着く。


避けられなかった対峙。


守ろうとしたもの。

縛り続けてきたもの。


そのすべてが、ぶつかり合う。


理解か。

拒絶か。


それでも――


言葉にしなければ、届かない想いがある。


そしてついに、

最後の答えが形になる。

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