番外編 ラストEP:怪物の再来
番外編も、これにて終幕となります。
気付けばユニークアクセスも10万を超え、ありがたい限りです。
長きに渡り、本当にありがとうございました。
最後の最後でこれまで以上に長くなってしまいましたが、最後なので全て詰め込まずにはいられなかったので、どうかお見逃しください(笑)。
――――どれほどの長き時が過ぎたのだろう。
神と人の世界では、時の流れは全く異なる。
人の世は時の流れに逆らえず、その流れにただ流されて全ての生命が“死”を迎える運命。
人も動物も植物も、微生物も建築物も廃棄物も、あらゆるものが変化の末に“終わり”を迎え、世界に訪れる最後の時へ向かって流れ往く。
一方の神の世は――――
『善神さん? お勉強があるから、下界から戻ったら私のところに来てと言いましたよね? ね?』
『うっ! ご、ごめんなさい。戻った挨拶がてら、使い魔のみんなも出してあげて他の神々と話をしてたら、話を打ち切るタイミングを見失って……』
『……はぁ、まったくもう。あなたなら、そうなるに決まってるでしょう? 今日は特別な日だというのに……』
――――相も変わらず、平和であった。
そこにも時の流れは確かにあるが、神々はその影響を受けること無く“死”から解放されて暮らしていた。
この時点ではまだ、神々の誰も“死=バグ”だなどと知る由も無いのだから、仕方あるまい。
そんな中、その日はひとつの節目を迎えていた。
『……特別な日? 何かあったっけ?』
「はい! 秘書であるシュリは、善神さまの予定をぜんぶおぼえています! ですが、今日は特に何もなかったとダンゲンします! ……というのはウソです! シュリが忘れているだけかもしれません!」
『シュリは真面目で正直者で、しかも頑張り屋だし、何より可愛いなあ。よしよし、よく出来ました~』
『……善神さんの甘やかし、最近はますます拍車がかかって来てるわね……』
『仕方ないッスよ。善神さんですし』
(そんなますたーも素敵だよ~♪ ぷるん♪)
『……どれだけレベルが上がっても、あなたたちは変わらないですね』
そんないつも通りの光景はともかく、女神アルルの言葉に「何かあったか?」と頭を捻る面々だったが、思い当たることは何も無かった。
すると女神アルルが出したヒントにすら気付かないその体たらくに、傍で聞いていた美咲や魔法神ラーラたちが痺れを切らし、溜め息を吐いて立ち上がる。
「も~、咲兄ってば。しっかりしてよ、レベル“499”にもなったんでしょ?」
『そうだよ~? あたちと“同じ”になるんだかりゃ、しっかりしなきゃ駄目だよ~?』
『……あっ!?』
『そっか! それじゃあ……』
『やっと気付きましたか? そうです、おめでとうございます。これで善神さんもとうとう――――』
美咲とラーラのヒントで、漸く気付き始める面々。
その場にいた者たちが次々と女神アルルを見遣る中、その視線が揃うのを待つように溜めた女神アルルが、滅多に見せない笑みを浮かべてその答えを言い放つ。
『――――中位神の、仲間入りです』
その知らせに、天上界は一瞬シンと静まり返る。
……と次の瞬間、今度は一気に沸き立ち歓声で満たされた。
そのあまりの騒ぎように、その場にいなかった神々までもが飛んで集まってくるほどの事態である。
たった一柱の神が、たった1レベル上がるというだけのこと。
だが、今回ばかりは少し勝手が違っていたのだ。
彼が――――善神・春野咲也が、今日この時をもってレベル500に達するのだから。
それはつまり、彼が――――善神・春野咲也が下位神から中位神へと上がるということでもあるのだから。
それはつまり――――
『……これで、善神さんも権利を得ます。待ちに待ったであろう……』
『やったねお兄ちゃん! これでお兄ちゃんも《種族創造》が扱えりゅようになりゅね! あたちの創った“魔法生物種”みたいに、自分の…………あっ』
『……私が、言いたかったのに。ぐすん』
『ご、ごごご、ごめんなさい、最上位神様っ! 嬉しくてつい……』
『あらら、こんな時でも混沌の気配? 締まらないねぇ、相変わらず……』
――――中位神となった善神・春野咲也にも、かつての魔法神らと同じ権利が与えられるということであった。
中位神となった者が新たに得られる権利、《種族創造》。
それは、かつての“魔法生物種”と同じように。
あるいは、様々な動物や植物、岩石生物や精神生命体と同じように。
これまでに創造された数多の種族たちと同様の新しい種族系統を、下界のあらゆる宇宙へ配置出来る神の権能。
それを待ち侘びていたのは、善神本人だけではない。
当然のことながら、彼の恋人、従属神、使い魔など仲間たちの誰もが心待ちにしていたことでもあったのだ。
――――善神なら、どんな種族を生み出すのだろう?
そんな期待を胸に抱かずにはいられなかったのだ。
『……それで、もう既に考えてあるんですよね? 当然』
『……はい』
『ど、どど、どどど、どんなのにするのッ!?』
『お、おお、おおお、落ち着きなさいよ、カミナさんッ!』
『そ、そそ、そそそ、そうッシュよ、みなしゃん! おちちゅきゅッシュ!!』
(……みんな~? 一回深呼吸しよっか~? 人間になったつもりで、ゆっくり吸って~、ゆっくり吐いて~? ぷる~ん、ぷる~ん♪)
「……流石ね、イチさん。こんな時でも冷静だなんて」
最上位神の言葉に、むしろ動揺して慌てふためいたのは善神よりも周りの仲間たちであった。
そんな状況も、これまで数えきれないほど繰り返して来れば、イチが皆を落ち着かせるというお決まりのパターンも完成されるというものだ。
彼女の声に合わせ、人族の深呼吸を真似した面々は落ち着きを取り戻し、皆まっすぐに善神を見つめた。
その答えに全神経を集中して、ただ彼に視線を送った。
『……俺が創造する種族はね?』
そして自らが思い浮かべる新たな存在について、彼は――――
【――――レベルが500に上がりました】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『…………その答えが、これですか……?』
『はい! どうですか? カッコいいでしょ? ねっ、ニャラ?』
〘ハイ、マイマスタ。ワレ、カッコイイデス〙
『……マジ?』
――――そうして、早速《種族創造》によって創造されたプロトタイプは、どう見ても……ロボットであった。
それも、アンドロイド系のスタイリッシュなものや、某汎用人型のような洗練されたものではない。
コテッコテの角ばったメカ、いかにもなロボットだったのだ。
それを見て皆、ただ唖然とするしか無い。
『……それって、すでに金属生命体がいると思うんスけど……?』
『それか、神じゃなくても下界の文明でも作れるし……?』
『どういう種族なのよ? 見たまんま、“ロボット種”とか? それとも“機械兵種”とか?』
『……フッフッフッ。聞いて驚かないでよ? この種族の名前は……ニャラ、頼んだ!』
〘ハイ、マイマスタ。ワレ、シュゾクハ“怪物種”トイイマス〙
『『『……えッ!?』』』
そして、さらにそのあり得ない種族名に、全員とも開いた口が塞がらなくなってしまう。
わざわざ試作体に発表させるという細かい演出も、その場にいた誰しもが種族名の方に驚き過ぎてスルーされてしまう。
なぜなら、その種族名は……正直言って、忌まわしいと言わざるを得ないものだったから。
かつて下界に危機を招いた――――狂った“魔法生物種”たち。
それを正規の魔法生物種と区別して分類する意味で、敢えて呼んだ名称こそが“怪物種”だったのだから。
だからこそ善神は何のために……敢えてその名を、わざわざ記念すべき自分の創造する種族に?
そんなことをして、いったい何の得が?
そんな疑問が神々の頭の中で目まぐるしく巡る。
『……あたちに対すりゅ嫌がりゃせ……なワケないもんね? じゃあ、なんでその種族名なの?』
「咲兄がそんなことするわけないよ。だからこそ、もう私にも分かんないや……」
『……皆さん混乱しているようですので、説明してもらえますか、善神さん?』
『はいはい、お任せください! ニャラ、先ずは見せてあげて?』
〘ハイ、マイマスタ。デハ、“個体数”ハドウシマスカ?〙
『最初だから、五体でやってみようか?』
〘ハイ、マイマスタ。ワレ、ジッコウシマス〙
そんな意味不明なやり取りの後、神々の目の前で“怪物種”は自らの複製を生み出し始める。
それは、分裂というよりはまるで「分身の術」で、実体のある幻を作り出しているようであった。
だが、善神が何のためにそれを見せたか分からない神々は、やはりキョトンとするしかないのである。
『……コホン。この“怪物種”は、個体としてはニャラ一体だけです。でも、こんな風に実体のある自分の幻影を何体でも生み出すことが出来て、それを下界のどこにでも送り出すことが出来るという特殊能力を持たせてあります』
『……そっか、それは凄いね。でも、何のためなのかサッパリ分からないんだが?』
『それなら普通に創造して、何体でも下界に配置すればいいんじゃない? その説明だとさ、本体の……ニャラちゃん?は、この天上界にずっといる感じになるってことなんでしょ? 折角創ったところにケチ付けるようで悪いんだけど、生物としてはもの凄く不自然で歪じゃない?』
『それでいいんだよ。このニャラは……“怪物種”は、ある目的のために創ったんだから』
『目的? 名前と特徴から推測すりゅに、下界の神話の怪物「這い寄る混沌」を参考にしたっぽいのは想像付くけど? まさか、それ使ってロボット大戦をリアリュにやってみたかった~とか言わないわよね?』
『ニャラの方の予想はその通りだから、流石は魔法神と言わざるを得ないけど。でも、目的の方は全然違うよ。実はね……』
……
……
「――――うわぁ!? モ、怪物が出たぞぉ!!」
「逃げろぉ!! 殺されるぅ!?」
〘ワレ、“殺戮”ヲジッコウシマス。ウイーン、ガシャン、ウイーン、ガシャン〙
「だ、誰か助け……て……」
「か、神様……」
「(「待てぃ! そこまでだ、怪物よ!」)」
〘ギギギ!? ダレダ!?〙
――――そこに颯爽と現れる、雄々しき影姿。
人々の希望に応え、怪物へと立ち向かう救世主たち。
その名は――――
「ああっ!? “魔法生物”が来てくれたぞ!!」
「名持ち様もだ!」
「それだけじゃない! あれは……八天様までいらっしゃる!」
⦅私たちが来たからには、もう大丈夫だ! さあ、観念しろ! 怪物!⦆
〘ガガガ! “勝率”ゼロパーセント! オノレ、ニクキ“魔法生物”ドモメ……〙
――――そうして人々の危機を救い、“魔物”たちは崇められながらも見返りを求めること無く去っていく。
突如として現れ人々を脅かす存在……“怪物”。
だが、人々に絶望は訪れない。
彼らには正義の味方……“魔法生物”たちがついているのだから。
それは神の使いか、星の御心か。
人々がそれを知ることは叶わないが、それでも彼らはその存在を讃え、感謝して生き続けることだろう。
この世から、“怪物種”が滅び去るその時まで。
この星が救われる、その日まで――――
~転生したら魔法生物ですが、なにか?~
――――完――――
……
……
『……って感じかな?』
『なにそのマッチポンプ!?』
『パクリなタイトル止めなさい!』
『失礼な。オマージュと言って……って、それよりどう? いいアイディアだと思わない?』
『「『何が!?』」』
そんな状況に、流石の女神アルルも見ていられなくなったのか。
大きな溜め息を吐きながら、善神の前へと進み出て話に割って入る。
『……説明が下手くそ過ぎます。あなたの意図は理解しましたから、ここからは私が説明しましょう。このままではいつまで経っても話が進みません』
『……はい、すみません。』
『要するに善神さんの狙いは、“怪物種”という存在を上書きしてしてしまおうということのようです』
『「『……上書き?』」』
その説明で、今度は大半の神々が一瞬で意図を理解した。
要点を押さえた説明の上手さは、流石は最上位神である。
『……でも分からないわ。すでに、全宇宙に配置された“魔法生物種”――――というより、狂った魔法生物種である“怪物種”は、全て魔法神様が回収してメンテナンスを施したか、善神の手によって封印されて使い魔化してるじゃない? 世界のあらゆる時間軸で相対的に見ても、未来には怪物種は存在していないのだから……』
『そうデすヨね。怪物種の存在シない未来が確定しテいるノに、どうシて今さラ上書きすル必要が?』
だが、それでもなお疑問は残っていた。
善神が中位神へと至った現時点までで、世界に散らばっていた“怪物種”の回収もしくは封印は完了していたのだ。
現在の下界では、様々な調整が必要でその世界によって時間軸の差異はあれど、どこかの時点で必ず怪物種から解放された未来が訪れると確定しているのだ。
ならば、わざわざ怪物種を思い起こさせる必要など無いというのに。
『……理由、聞きたいですか? 聞いたら全員、呆れると思いますよ』
『「『……え?』」』
『……彼ね、正確に言えば……“怪物種”のイメージを上書きしたいんですよ。その為だけに、自分の《種族創造》の権能を消費して』
『「『……は?』」』
『……ハァ、本当にお人好し。つまりですね、いくら“怪物種”が魔法生物種に戻ったとしても、人々の魂に刻まれた“怪物種”への潜在的恐怖は消えません。それを消すためには、最初から全て作り直す必要があります。今時点で存在が確定している宇宙も生命も消し去って、また一から始める必要があります。だから……』
『……上、書き……? じゃ、じゃあ……?』
漸く全てを悟ったのか、ワナワナと震えて魔法神ラーラが善神と女神アルルを交互に見遣る。
他の神々も、善神の底抜けのお人好し加減を分かっていたつもりだったのだが、今回の件には呆れるしかなかった。
中位神となった神が《種族創造》の権能を行使出来るのは、たったの一度だけ。
それを、そのたった一度の機会を――――
――――善神は他の神が創造した種族の、イメージアップのためだけに費やそうというのだから。
『…………まあ、有り体に言うならば、魔法神のため……ですかね?』
『……へ? あ、いや、俺はただ“魔法生物種”のみんなのた……』
『――――お兄ちゃんッ! 大好きぃぃーーッ!!』
『ぐエェーーっ!?』
そう言いかけた善神のボディに、魔法神が頭から突進する。
感極まったのか、力加減も忘れて全力で……である。
『お、お兄ちゃんだって、創造してみたい生き物とかいっぱいいたでしょ!? それなのに、あたちのために!? 嘘でしょ!?』
『まぁ、確かにその方法なら、世界を作り変えることなく“魔法生物種”への消せない潜在的恐怖が上書きされるでしょうね。なるほど、「幻影」を送り込むのは、いくら倒されても死なないようにですか。本体の「ニャラ」さんが天上界にいる限り、犠牲は実質ゼロ。魔法神の種族が「一つの魂源」を分かち合って生まれるのに対し、今度は永遠に一体だけしか存在しない種族……と。それなりに考えましたね?』
『うええぇぇーーん!! お兄ちゃん、愛じでりゅう!! 幼女しか愛せないド変態でも、あたち、永遠に傍にいてあげりゅからぁ!! なんでもしてあげりゅからああぁぁ!!』
『ゲホッ、ゲホ。い、いや俺はただ、魔法生物種のみんなを好きになってもらえるようにと思っただけ……ってオイッ!? 俺のことそんな風に思ってたの!? 最初に違うって言ったじゃん!?』
『……はい、陥落。恋人一名確定でーす。速報刷って、全員に配っておいてー?』
『あいよーッス。他のメディアにも流しておくッスねー?』
「今なら私めもお付けします。魔法神様に創られたこの身も心も、もはや善神様なしではいられなくなってしまっておりますので……」
『待てい!? あとオスカ黙れい!!』
そんな風にサプライズを受けては、魔法神ラーラも感動に心を奪われるしかなかった。
そして同時に、自分たちのためだと知った使い魔――――“魔法生物種”たちもまた、彼に抱き着かずにいられなくなるのは当然の流れ。
天上界はあっという間にまた騒がしくなり、彼ら彼女らに抱き着かれて押し潰された善神が解放されるまでには、かなり長い年月がかかったとか……かからなかったとか。
『――――それはともかくとして、本当にいいんですか? あなたのことだから、理想の生物像みたいなのもあったでしょう? 最高に可愛くて無敵の生物とか……』
『イテテ……。ああ、それはいいんです。俺が好きなのは、他の神々が生み出した魅力的な生物たちですから。見ていてワクワクして、会って話したらドキドキするような。自分で創っちゃうと、何から何まで分かっちゃってて未知との遭遇みたいなのが全くありませんから。これから先、仲間たちも中位神になってまた新たな種族を創造するでしょうし? それを楽しみに待ってますよ』
『……そういうことなら、良しとしましょう。その“怪物種”の創造、最上位神アルルの名において――――許可して差し上げます』
『やった!』
『お兄ちゃんのバガァ! 大好ぎぃ! うえぇーッ、もう絶対に離ざないー!!』
多くの魔法生物種たちからは解放された善神であったが、未だに胸いっぱいの魔法神ラーラからは抱き締められたままだった。
そんな善神の下に、試作体である「ニャラ」が跪いて首を垂れる。
〘マイマスタ。コレカラヨロシクオネガイイタシマス。ワレ、セイシンセイイ、ツクサセテイタダキマス〙
『なんだかゴメンねニャラ、色々と勝手なこと言って。結局君にだけは辛い思いをさせることになるんだけど……』
〘イエ、マイマスタ。アクマデ“幻影”ガヤラレルダケデスノデ、ワレハノーダメージデス。マイマスタノ“善き心”ハ、ウマレタバカリノワレデモワカリマス。ワレヲキヅカッテクダサリ、ソノ……ウレシイ、デス〙
『……ちなみに善神さん? このニャラさんって、性別はあるの?』
『え? いや、特に決めて無いから無性だけど? でも、どっちかといったらメカメカしいから男性かな?』
『女性にしましょう』
『女性だね』
「女性ね」
『女性デすね』
『女性に決まりね』
(女の子~♪ ぷるる~ん♪)
『なんで全会一致!? どういうこと!?』
〘……ソノ、ハイ。……ポッ〙
『そんな感情のサブルーチン付けたっけ!? アルル様、俺、心当たり無いんですけど!?』
『……おまけでーす。さて、それじゃあニャラさんを試作体から実用体に移行しますよ? 皆さん手伝ってくださーい?』
『素敵な女の子にしてあげるわ! 私の最高のセンスでね!』
『カミナさんはイチさんと遊んでてほしいッス。それより、自分が善神さん好みの魅力的な子に仕上げてみせるッスよ!』
「我々にも手伝わせてください。我々を救う者なのですから、精一杯務めさせていただきます」
⦅クッ! 小僧……ではなかった善神め! 粋なことを……⦆
『天帝まで泣かせるなんて、罪な男ね。でも、それでこそ……あたしの善神よ。べッ、別に一層好きになってなんかいないんだからねッ!』
『任せてお兄ちゃん! あたちたちが最高の一体に仕上げてみせりゅかりゃ! お兄ちゃんはその辺でお昼寝でもしてて~♪』
『創るの俺だよぅ!? てゆーか俺の子、取らないでぇ!?』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――――そんなことがあってから、幾星霜。
天上界には今日もまた、いつもと変わらない平和な時が流れていた。
……そんな天上界の頂で、女神アルルが数多の神々を眺めながら、ふと語りかける。
『……正直、これだけの「時」が流れれば、元・人間の皆さんにはもっと変化が現れると思っていました。このうちの誰彼かは……残念ですが、変化の無い長き時に精神を擦り減らし、心を病んだりするものだとばかり。それこそが、必然的に起こり得る普通の未来の姿だと、私は思い込んでいました。ですが、どうしてか皆さんは誰一人として――――』
『ああ、それは当然よ?』
『――――え?』
即答されたその答えに、珍しく女神アルルの方が疑問符を浮かべることに。
それは最上位神でありながらどうしても分からないことだったのだが、眼前の神々たちはいとも簡単に彼女に答えを齎してくれた。
それは、とても単純で迷いようのないもの。
どんな時も変わらない、彼女たち共通の認識。
『だって、彼は――――』
『善神さんは――――』
『ご主人様は――――』
「殿は――――」
「「主様は――――」」
「「上様は――――」」
「サッキーは――――」
『ハルは――――』
『「さ、咲也さんは――――」』
『マスターは――――』
『「咲也様は――――」』
『咲也君は――――』
『「咲也さんは――――」』
『「サクは――――」』
「「「主は――――」」」
『「「お兄ちゃんは――――」」』
「咲ちゃんは――――」
「咲兄は――――」
『咲也殿は――――』
「ハルノは――――」
〘マイマスタハ――――〙
『春野咲也というひとは――――』
(……ますたーは――――)
『⦅(「――――普通じゃないからね!」)⦆』
『みんなして酷過ぎない!?』
さも当たり前のように声を揃えて発せられたその答えに、善神・春野咲也はショックで涙目になる。
だがその一方で、いつも無表情でいることの多い女神様は――――
『……プッ、アハハハハッ! た、確かにそうでしたね。マトモな範疇で考えようとした私が馬鹿でした。ククッ、アハハハハッ!!』
『アルル様まで!? 酷過ぎるよ、もう…………てゆーか、アルル様が大笑いしてるだとっ!?』
――――そんな世界の物語は、これからも続いて行く。
時に楽しく、時に苦しく、時に笑って、時に泣いて。
だが、優しさと美しさを忘れることなく紡がれた日々は、きっとどこまでもハッピーエンドで。
ありとあらゆる命が輝ける、そんな世界をいつまでも……どこまでも続けて行くことだろう。
いつか辿り着く先の、さらにその先へ。
そして、いつの日か、きっと――――
◆◇◆◇◆◇◆
番外編も、これにて完結です!
ご愛読、ありがとうございました!
◇◆◇◆◇◆◇
コスモス
~善行によるポイントで、異世界を生き抜く!~
―――― お し ま い ――――
長い間、本作をご愛読いただきありがとうございました。
このラスト(というか裏設定)は連載前から妄想していたので、書くことが出来て大満足です。
ラストに投稿したキャラデータについては、作者が忘れてしまわないように書き残すためのものですので、申し訳ありませんがスルーしていただけると助かります(読んでもいいのですが、ネタバレ満載なのでご注意を)。
大体の書きたいことは書き切れたし、投稿数も444とキリが良い(人によっては不吉?)ので大満足です。最後はキャラデータで数を調節することになってしまい、不備が目立って本当に申し訳無いですが。
ボチボチおまけのデータを整えつつ、新作のストックが整ったらまた連載に踏み切ろうと思います。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
いくら感謝してもし足りないですが、最後にこれまで以上に最大限の感謝を申し上げさせていただきます。
読者の皆様に、幸多からんことを!
それでは、またどこか(?)で!




