第五話
<中華人民共和国神華集団 坦桑尼亜石炭公司 第35掘削拠点>
上の連中はナニもわかっちゃいないって大学じゃ教えてくれなかった……なんて愚痴ったトコロでナニも始まらないし終わらない。
人民解放軍後勤工程学院の軍事土木工学部卒業してそのまま飛行機で南沙連れていかれてひたすら潮風浴びながら滑走路やら港湾施設やら付帯設備やらを突貫で作ったこの3年半。一度も故郷(まぁそう呼べるかどうかはアレだけど)に帰れず手紙も出せず、同じ飛行機に乗せられた同期の奴ら(100人くらいはいたな)も別の拠点に移送されるか事故で死ぬか自分で死ぬかでいまや3人。
大体からして准生証なしに産み落とされ、女だからって井戸に放り込まれた浙江省のド田舎生まれが、不妊治療の甲斐もなかった役人夫婦に拾われて、高級中学で才能認められて重慶送られて、そこから10年かかって肩章に星が3つ並んでようやく拠点一つの建設任される身分になったってコト。
「明上尉! 輸送機の準備整いました!」
次は試掘用の機材空輸とダルエスサラームまでの舗装路建設、ゆくゆくは掘削機とかパイプラインのコトも考えなきゃ。これからは兵器だけの時代じゃないってコト、北京の奴らに教えてやらなきゃ、ね。
准生証=出産許可証