第四話
煙は3本に増えていた。おんぼろピックアップで2週間ぶりに戻ったブマワ村ではそのことでちょっとした大騒ぎ。村長のビホンさんが返事の狼煙あげようって騒いでるけどアレどう見ても近所のヤツじゃないと思う。
電気来てたからノートにパラボラ繋いで洋平にお願いしといたヤツが来てないか確認したら来てた。さすがは大手商社。アメリカの民間企業が去年打ち上げた商用地球観測衛星WorldView-4から送られてきたGoogleMapsより数段細かい写真。
日本の事務所のサーバーに届いた重たいファイルを、一旦ドイツの転送サービス経由して、そこから衛星二つ経由してダウンロードするから時間がかかって仕方がない。折りたたみ式のパラボラに差し込む陽の光が、褐色の砂とホコリにまみれた広場の片隅に、細く長い影を描き始める夕まずめ。ふと子供の頃のダイアルアップ接続思い出す。あの頃はあぶり出しみたいでワクワクしたけど……って、
「ナニよコレ」
ブマワ村から北北東40kmくらいの距離にまごうことなき火力発電所の煙突が3基。つい半年前ピックアップで寄り道した時、あのあたりはただの草原だったし、マトモな道路一つ通ってなかった。だのに写真には煙突につながる巨大な建屋とか平屋の施設とか運搬用の車輌とか滑走路まで写っててまるで一大プラントね。
ダルエスサラームから一緒に来たJICAの西島さんに聞いてみる。コレってやっぱり、
「あー、中国資本だね、この規模だと」
港ばかりじゃなくて内陸にまで入ってきてるんですか?
「まだ公にはなってないけど去年あのあたりで埋蔵資源が見つかったとかで、開発に中国系が入ることになったって噂、事務所で聞いたわ。にしてもこんなおおっぴらにかぁ」
つい半年前までただの野っ原だったんですよ。
「……そんなに短期間に?」
ようやく落とせた高解像度版を拡大すると、だだっ広い舗装面に飛行機の出来損ないみたいのが並んでて……なんだっけ? UAV(Unmanned aerial vehicle=無人航空機)だっけ? アメリカが飛ばしてるヤツ。でもなんか形が違うような。
「……中国資本じゃなくて人民解放軍の方だな、コレ」
え? 軍隊ですか?
「まぁ正確に言うと工兵と関連企業の寄せ集めってあたりじゃないかなぁ」
あんなモノ建てて、あんなモノ飛ばして。ナニしようってんだろ? 電気あるんなら分けて、くれるわけなさそうだし……。




