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第93話 マルスヒ平原での戦い 3

 ーーーユリウス視点ーーー


 馬を全力で走らせて数日


 僕達はガガルガに到着した


「ユリウス様! 待ってくださいって!!」


 城に到着して走る僕をティールが掴まえて抱き止める


「離せティール!! 叔父上が! 叔父上がぁ!!」

「だから落ち着いてくださいって!! 慌てて来たからボロボロなんですよ? そんな姿で会うんですか?」

「あっ……」


 言われてみれば……休まず馬を走らせたから土とか凄いついてる……


「叩くだけでもしましょう」


 パンパンとティールが僕の背中を叩く

 僕も肩や腹部を叩く


「本当はシャワーでも浴びてもらいたいんですけどね……」

「そ、それはちょっと……」


 先に叔父上に会いたい


「ユリウス様、バルセ様が今何処に居るのかご存じなのですか?」

「へっ? ……あ、何処だろ?」


 自室かな? 玉座かもしれない


「それも聞いてから落ち着いてから会いましょう」

「そ、そうだな、うん……ありがとうティール」



 取り敢えず近くに居たメイドに聞いたが


「ご、ごめんなさい……わかりません」


 だとさ


 まあ知らないなら仕方ないな

 次だ次


 他のメイドや兵士に聞く


 しかし誰もわからないそうだ


 9人目の兵士に聞いたらやっと玉座には居ないことがわかった



「自室かな?」

「かもしれませんね……医務室の可能性もありますが」

「じゃあ僕は叔父上の部屋に行ってみるよ、ティールは医務室を任せていいか?」

「わかりました……焦らないようにしてくださいよ?」

「わ、わかってる」


 僕は叔父上の部屋に向かった


 ・・・・・・・


 叔父上の部屋にたどり着く


 コンコン


 扉をノックする


「…………」


 無反応


「叔父上ぇ? ユリウスです」


 コンコン


 もう一回ノックする


 しかし反応はない


「居ないのか? いや、もしかしたら中で意識を失ってる可能性も……失礼します!!」


 中を覗いてみよう


 ガチャ


「…………居ないな」


 誰も居ない、ベッドも空だ


「医務室の方が正解だったか……こうしちゃいられない!」


 僕は医務室に向かった


 ・・・・・・・


「あ、ティール」


 医務室に向かう途中の廊下でティールに会った


「あぁユリウス様、バルセ様には会えましたか?」

「えっ? 医務室に居なかったのか?」

「えぇ、自室にも居られなかったので?」

「あぁ、医務室に居ると思ったんだが……玉座か?」


 兵士は玉座には居なかったと言っていたが……もしかしたら今は居るかもしれない


「おや? ユリウス様」


 ユールが通り掛かる


「ユール……ちょうどよかった、叔父上を知らないか?」

「バルセ様でしたら先程食堂にボゾゾと向かいましたよ?」

「えっ? 食堂?」


 僕とティールはお互いを見る

 叔父上が食堂に行くなんて珍しい事だ、いつもは自室で食事を済ませるからな

 それに今は敗走した後で負傷している……そんな状態で食堂に行くなんて……予想外だ


「ありがとうユール、ちょっと行ってくる」

「ええ、あぁティール殿」

「どうしました?」

「帰還した兵達が兵舎に待機しています、もしマルスヒ平原に向かわれるなら彼らも連れて行って下さい」

「わかりました……ユリウス様」

「あぁ、ティール、兵の再編を任せる」


 僕はそう言って食堂に向かった


 ・・・・・・・・


「な、なんだこりゃぁぁぁぁぁぁ!?」


 食堂着いて先ず目にはいったのは食べ物の山だ

 なんだこれ!? こんな量をテーブルに並べるなんて……てか積んでるなこれ!!


「むっ?……ユリウス!!」

「叔父上!!」


 叫び声で僕に気付いた叔父上に呼ばれる

 料理の向こう側から姿を見せる叔父上……あれ?


「叔父上……怪我は大丈夫なのですか?」

「ああ、私は無事だ……ボゾゾが守ってくれたからな」

「そっか……良かった……本当に良かった……」

「こらこら、泣くなユリウス」

「な、泣いていません!! それよりボゾゾは? 礼を言いたいのですが」

「れい、いらない」


 うん? 肉の中からボゾゾの声が聞こえたぞ?


「ボ、ボゾゾ? お前……肉になっちまったのか!?」

「なにいってる」


 ひょいっと肉の向こう側から顔を出すボゾゾ

 山の向こうに居たか、僕は料理の山を迂回してボゾゾの隣に向かう


「ボゾゾ! 叔父上を守ってくれたんだな!…………おま!? それ動いていいのか!?」


 ボゾゾを全身を見て驚く

 だって包帯まみれの血まみれだからな

 頭も、上半身も、下半身もだ!

 これヤバイだろ!?


「だいじょうぶ、ちょっと、あながあいた、だけ」

「それを大丈夫とは言わない!!」

「私も言ったのだがな……それよりも飯を食いたいそうでな」

「めし、くう、からだ、なおる」

「いやいやいやいや!? どんな理屈だよ!?」


 せめて傷を縫おうぜ!?


「ちを、つくる」


 そう言ってボゾゾは料理を食べ始めた

 次々と食べていく……これは、話しかけない方が良さそうだ


「お、叔父上、マルスヒ平原で何があったのです?」


 僕は叔父上を見る


「うむ……それはだな……」



 ・・・・・・・・・


 ーーーバルセ視点ーーー


 パストーレ軍と交戦を開始した


 どうやらルーツやヘルドの軍も交戦を開始している様だ


「かかれ!」


 お互いに軍団を3つに分けた

 それなら先に1つでも軍団が潰滅した方が不利だ

 少しでも早く、目の前の軍団を蹴散らし、味方の援護に向かうべきだな


「むっ!」


 私の目の前に矢が飛んできた


「ぬん!」


 それをボゾゾが弾く


「すまないボゾゾ」

「いい、それより……てき」


 私とボゾゾは矢が飛んできた方を見る


「バルセとボゾゾか……ふむ、これなら楽しめそうじゃのう!!」


 ブライ……パストーレの老将か

 あのオルベリンと戦い、何度も生き残った事で有名な男だ

 どれくらいの強さなのかは知らんが……年寄りだからと嘗めてはいけない

 それだけ戦いの経験が豊富だと言うことだ


「バルセ、さがれ」

「何を言う、私も戦おう」


 私は剣を構える


「だめ、さがれ」


 さっきよりも強く言うボゾゾ


「何故だ? 一騎討ちにこだわる必要はない」

「ちがう」

「むっ?」


「バルセ、まもりながら、たたかえる、あいでじゃ、ない」


 そう言った瞬間にボゾゾはバルディッシュを構えて馬を走らせる


「ふん!!」

「ほっ!」


 ブン!

 ボゾゾが振るうバルディッシュをブライは余裕の表情で避ける


「先ずはお前からか、いいぞ! 少しは儂を楽しませい!!」


 そう言ってブライは剣を抜いた

 左手に剣……右手に弓だ……何故弓を持ったままなのだ?


 その理由は直ぐにわかった


 ブライはボゾゾのバルディッシュを避ける

 避けれそうにない時は剣で軌道を逸らす……む、無駄がない

 そして驚くことに、口で矢をつがえて放ったのだ


「ぬぅ!」


 ボゾゾは顔を反らし矢を避ける

 ブライという男は……剣を防御に利用し、弓矢で戦う様だ


 見ていてわかる……この男は強い

 オルベリンが武力……力で勝利を手にする者なら

 ブライは技術で勝利を手にする者だ


 成る程、これなら確かにオルベリンと戦っても生き残る

 そしてボゾゾが私を足手まといと判断したのもな

 勝てる気がしない……しかし、退くわけにはいかない……私も何かしなくては……


 んっ?


「なんだ? 何か周りの様子がおかしいような……」


 私の兵達は何処に行った?

 いつの間にかパストーレの兵しか居らんぞ!?


「気付くのが遅いぞ!! お主ら! バルセに矢を放て!!」

『おおおおおお!!』


「!?」


 パストーレの兵達が私に矢を放つ

 大量の矢が私に迫る……とても剣では防ぎきれない!


「ぬぅ!!」


 私は急所を庇うために腕で矢を受け止めようとする


 ドスドス!


 矢が刺さる音

 血が飛び散る音が聞こえた


 しかし不思議と身体に痛みはない


「……?」


 私は腕を退け、目の前を見る


「ぐぅ……」

「ボゾゾ!?」


 ボゾゾが私の盾となっていた

 身体中を使って私に矢が当たらないようにしていた


「バルセ、ぶじか?」

「あ、ああ……しかしボゾゾが」

「だい、じょうぶ……」


 ボゾゾは右腕の矢を抜く

 そしてバルディッシュを構え


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 吼えた


 世界が揺れる

 そう感じるほどの威圧感


 ブオン!!


 ボゾゾはバルディッシュを投げる


「ぐぎぃ!?」

「がぁ!?」


 パストーレの兵、数人の首が飛んだ


「バルセ、あそこから、ひけ」

「お主は?」

「あいつ、ころす」


 ボゾゾは手斧を取り出してブライを見る

 私はボゾゾを止めたかった……しかしそんな時間はない、また私が狙われたら今度こそ殺られる


「すまん! 生き残ったらお前の望みを叶えるからな!!」


 私は退いた、馬を走らせて兵の間を抜けた



「……ふむ、バルセは逃げたか……ここで仕留めたかったが仕方ないのぉ……ボゾゾの首で我慢するか」

「……ころす」


 ・・・・・・・・・


 ーーーユリウス視点ーーー


「そして私は自分の兵と合流したのさ」

「……ブライかぁ」


 僕は叔父上からブライの話を聞いた

 噂なら僕も聞いたことがあるけど……そこまでの相手とは……


「そ、それで? ボゾゾは良く生き残れたな?」


 僕はボゾゾを見る


「たたかっていたら、あめがふって、ひえるから、さがった」


 ……えっと……つまり


「雨に濡れるのが嫌でブライは後退したって事か?」

「(コクリ」


 頷くボゾゾ

 な、なんじゃそりゃ……


「今はヤンカが兵を連れてマルスヒ平原に援軍として行っている」

「ヤンカが? アイツ大丈夫なので?」


 ヤンカは全然戦えないだろ?


「不安なのはわかるが……今はそうするしか無くてな……私ももう少ししたら兵を連れて再びマルスヒ平原に向かう」

「叔父上!?」

「カイナスに勝利したのは聞いたが、パストーレに領土を奪われて良い理由にはならないからな、奴等が撤退するまで戦わないとならん」

「しかし、叔父上も戻ったばかりでしょうし……」

「今は戦の最中だ、無傷の私が休むわけにはいかない」

「いいえ! 叔父上は休むべきです!! マルスヒ平原には僕達が向かいます!!」

「それこそ必要あるまい!! ユリウス! お前はまだカイナスから戻ったばかりだろう? ならお前こそ休め」

「その必要はありません! カイナスとはマトモに戦うことなく勝ちましたから!」

「……なに?」


 僕は叔父上に簡単にカイナスの事を話す


「なんと、カイト様はそこまでしていたのか……」

「だから僕達は全く疲弊してません! このまま行けます!!」

「なら私も……」

「叔父上はガガルガの防衛をしていてください!」

「いや私も」

「良いから防衛をしてろ!!」

「!?」


 僕はそう言って食堂を飛び出した



 ………………


「ユリウスが……怒鳴った? 私に?」

「……しょっく?」

「いや……ショック……というより、驚いた……はは、ユリウスが私に反抗した……反抗期ってやつか?」

「……うれしそう」

「ああ、何故だろう……ユリウスが生意気になって……私は嬉しいようだ」

「ちちおや、みたい?」

「ああ、ああ! 息子に反抗された父親みたいだ!」

「……ボゾゾ、わからん」

「だろうな! この喜びは私にしかわからんよ!!」




 ・・・・・・・・


「ティール!!」


 兵舎に行ってティールを呼ぶ


「どうしましたユリウス様? 再編なら間もなく終わりますが?」

「マルスヒ平原に向かうぞ! パストーレの奴等を蹴散らす!!」

「援軍ですね、わかりました……ユリウス様」

「んっ?」


 ティールが僕の前に来る


「取り敢えずこれを」

「えっ?……パン?」

「それを食べておいてください、空腹じゃ戦えませんよ?」


 そう言えば報告を聞いてからマトモに食べてなかったような……


「よく僕が空腹ってわかったな……食堂に行ってたのに」

「付き合いが長いですからね……わかりますよ」


 そう言ってティールは兵をまとめた


 僕はパンを噛る


 ブライ……僕が倒してやる!!














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