第91話 マルスヒ平原での戦い 1
ルーツ達の敗走
その報告を聞いた俺達は急いで帰還する
兵の報告では将達は討ち取られてはないらしいが……
ルーツはマールに撤退し、メットが兵を連れてマルスヒ平原に援軍に行っているそうだ
ヘルドやバルセも同じように撤退
わかってるだけで、今パストーレと交戦してるのは
メビルト
ケーニッヒ
メット
の3人の将の様だ
「もう少しでマールに着くな……」
早く状況を確認したい……
マルスヒ平原の皆も心配だし……
だから俺は提案した
「軍を4つに分けよう」
『4つに?』
野営してる時に俺は言った
アルスとユリウス、ルミルとレムレが首をかしげる
オルベリンとゲルドは『そうですね』っと頷いていた
「全員がマールに行くより、4つに分かれて、マール、ヘイナス、ガガルガでルーツ達の様子を各々が確認するのと、マルスヒ平原に援軍に行くのを同時に果たす」
時間がおしい
「理由はわかったけど……どう分けるつもりなの?」
アルスが聞く
「俺とレムレはマールでルーツと話す、アルスとルミルはヘイナスに行ってヘルドの様子を見てくれ」
そして俺はユリウスを見る
「ユリウスはティールと一緒にガガルガに行ってくれ」
「えっ? 良いんですか!?」
ユリウスが俺を見る
「ああ、心配なんだろ? 顔色が悪いぞ」
敗走の報告を聞いてからユリウスは真っ青になっていたからな
「あ、ありがとうございまーす!!」
「ちょ! ユリウス様!!」
そう言うなりユリウスは走り出した
ティールと恐らくガガルガ出身の兵数人が慌てて追いかける
だ、大丈夫かね?
「コホン、オルベリンとゲルド、それとモルスはこのままマルスヒ平原に向かってくれ」
「援軍ですな」
「わかりました、早速働かせてもらいます」
「っし! 義兄者と一緒なら負ける気がしない!」
戦いに優れたオルベリン達は直ぐに援軍に向かってもらう
「よし、決まったなら早速行こう!!」
アルスが言って解散する
俺達は兵を分ける
そしてアルスとオルベリン達は各々の目的地に向かって行った
……野営してるんだから明日でもよかったのに……いや、急ぎだからな……マールはもうすぐ着くが、ヘイナスとマルスヒ平原は離れてるからな
「レムレ、明日から忙しくなると思うからしっかり休んどけよ?」
「はい」
俺は残っていたレムレに言った
・・・・・・・・・・
翌日
朝早くに目覚めた俺達はマールに向かう
途中で兵を数人オーシャンに行かせた
カイナスに勝利した事と、マルスヒ平原での事を報告させるためにな……もしかしたらもう伝わってるかも知れないが……
「それにしても、シャルスの奴は本当に足が速いな……」
馬で行った奴らより速かった
「彼は獣人ですからね、僕達とは身体の造りが違うそうですよ」
レムレが答える
「ほぉ、やっぱりどっか違うんだな……」
普通の猫と同じ体質なのか?
水とか嫌いなのかな?
「それにしても、お前達は随分と打ち解けてるみたいだな?」
少し前にアルスとレムレとユリウスとシャルスの4人で出掛けてたよな?
「ええ、一緒にオルベリン様の訓練を受けた仲ですし、話すと面白い人ですよ?」
「そっか……」
正直少し不安だったんだよな
シャンバルで慣れてきたとはいえ、獣人はオーシャン……てかノースブリード大陸では化物扱いだ
差別やら偏見やらで大変なことになるんじゃないのかって思ってたんだよな
ま、その心配は杞憂だった訳だ
「確かに、シャルスは今でも色々言われたりしますけど……正直オルベリン様の方が化物ですよ?」
「はは、確かに!」
オルベリンには常識が当てはまらないからな
この間、オーシャンの屋上から飛び降りて地面に着地していたらしいし
そんなこんなで雑談をしながらマールに到着した
・・・・・・・・・
マールに到着して城に入る
ふむ、兵の数が少ないな……
当たり前か、マルスヒ平原で戦ってる者や、負傷してる者もいるのだからな
いつもみたいに警備に多くは配備出来ないだろうな
「カ、カイト様!」
兵の1人が俺に駆け寄る
レムレが兵と俺の間に立つ……パレミル平原での出来事から皆警戒しまくってるな
まあ、当然だよな……寧ろ俺の警戒が足りないのか
「君、ルーツは何処だ?」
「ルーツ様なら玉座の間に……負傷されてるのに全然安静にしてくれないのです!!」
「玉座の間か、わかった」
俺とレムレは玉座の間に向かう
「ルーツさん、無理してますよね?」
レムレが言う
「ああ、恐らく敗走したのを気にしてるのだろうな、アイツは真面目過ぎる……このままだと無理して出撃しそうだ」
怪我してるのなら休めよと言わないとな
色々と何があったのかを聞きたいが……先ずは安静にさせる事からだな
俺達は玉座の間に到着する
兵が扉を開けて中に入る
「兄さん! 何度も言わせないでください! 安静にしないと!」
「駄目だ! メビルトとメットが戦ってるのに……私だけ安静になんて出来ない! カイト様にも顔向け出来ない!!」
そこには必死に動こうとするルーツと
ルーツにしがみついて動けなくしようとするレーメルの姿があった……
レーメル、オーシャンから駆けつけたのか? ならもうレリス達は把握してたと考えるかな
取り敢えずこのまま傍観するのはよくないな
「そんな事は気にしなくていいんだぞ?」
俺がそう言うと、ルーツとレーメルが俺に気づく
「カ、カイト様!!」
「あ、兄さん!?」
ルーツは俺の前に駆け寄る
傷が痛むのか顔が歪む、俺の前で膝をつき
「申し訳ありません!! 役目を果たせず、こうして生き恥を晒してしまい……」
謝るルーツ
「何で謝っているんだルーツ? 戦は常勝って訳じゃないんだ、いちいち負けたことを気にするな」
俺は屈んで膝をついているルーツと目線を合わせる
「それよりも、俺はお前が生き残ってくれた事が嬉しい、よく戻ってきてくれた……」
俺はルーツの頭を抱き込む
「カ、カイト様……」
「マルスヒ平原で何があったのかを聞かせて欲しい……まあ、その前にお前はベッドに入って安静にしろ、そんなに怪我してるんだ、無理をして死ぬとか……許さないからな?」
「は、はい……」
・・・・・・・・
兵にルーツを運ばせてる
その間にレムレに兵の再編を任せる……ルーツから話を聞いてから、俺達もマルスヒ平原に向かうからな
レーメルにも話を聞く……やっぱりオーシャンにもマルスヒ平原の報告が来ていたようだ
レリスは報告を聞き次第、レルガに出撃を命じたそうだ
そのレルガに途中まで同行して、レーメルはマールに来たらしい
マルスヒ平原への援軍にレルガも居るなら、少しは安心だな
さて、そうしてる間にルーツの着替えも終わっただろうから、俺はルーツの部屋に向かう
コンコン
扉をノックする
「どうぞ」
ルーツの声
中に入ると、ルーツはベッドに横になっていた
「最初からそうしてろよ」
俺は椅子をベッドの側に持っていき座る
「す、すいません……」
「それで? 傷の具合は?」
「1ヶ月の安静を口うるさく言われました……」
「そうか、なら絶対安静だな」
無理をして体力を消耗、そこから免疫力が低下して病にかかり
怪我と病のWパンチで死亡……そんなのは勘弁して欲しいからな
「さて、マルスヒ平原での事を話してくれ……出来るか?」
「大丈夫です……」
そしてルーツは語る
・・・・・・・・
ーーールーツ視点ーーー
マルスヒ平原に布陣して9日経過した
このまま何もなければ一度撤退して、兵糧の補充などをしよう
そう考えてた時に……
「来ました! パストーレの軍です!!」
見張りの兵からの報告
「来ましたか! よし! 全軍進軍開始! ヘルドやバルセ殿の軍と足並みを揃えてパストーレ軍を包囲する!!」
私達は進軍を開始する
ヘルドやバルセ殿の軍も進軍を開始したのを確認しながら進む
この速度なら数分で交戦するだろうな
「ルーツ、戦いは我輩に任せて少し下がれ」
メビルトが言う
「いや、私もやりますよ、その為に爆弾を用意したのですから」
「その音で味方が慌てないのか?」
「……まあ、うん、それは……うん」
知らない兵は驚くだろうな
「やはり下がれ、討たれたら士気にかかわる」
「そうしますかね……」
まあ、メビルト達なら大丈夫ですよね?
・・・・・・・
ーーーカイト視点ーーー
「それで後方にさがったのか?」
「はい、足手まといになりますからね」
確かにルーツは戦闘は不向きだ
策で戦場を支配するタイプだ
ルーツとメビルトの判断は間違ってない
「それでも負けた……何かあったんだよな? 敗因はパストーレの策か?」
「色々……としか言えませんね、パストーレ軍が手強かった……というのもありますが……何て言いますか、まるでパストーレ軍を勝たせるために世界が動いた……そう思ってしまうくらい、パストーレ軍に都合がいい事が起きました」
「何があったんだ?」
「それは……」
俺はルーツの話を聞く
どうやら、かなり長くなりそうだな
他の皆はどうしてるのか……もう着いたのか?
それが気になった俺だった