表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/290

第85話 カイナス戦 民の心を掴め

「カイト様! 村が見えました!」

「よし! 全員突撃!! 賊を蹂躙せよ!!」


『おおおおおおお!!』


 兵達の叫び声が響く


 それを聞いて賊達が俺達に気付く

 しかし、手遅れだ

 もう俺達は村に入った

 後は数で押し潰す!


「手が空いてる者は民の保護を!」


 俺は馬から飛び降りて近くにいた賊に剣で斬りかかる


 キィン!


 賊も剣で俺の剣を受け止める

 俺に意識が向いている間に、他の兵士が後ろから賊を斬る


 卑怯とか言わせない、これも戦略だ!


 俺は次の賊に斬りかかる


 そうやって賊の相手をしていたら


「いやっふぅぅぅ!!」


 ザシュ!

 ズクシュ!


「次!」


 シャルスが賊を鉤爪で切り裂いていった

 ……鉤爪使うやついたよ……


「こ、この野郎がぁぁ!!」

「ぐっ!」


 俺とつばぜり合いしていた賊が力を強める

 力負けしそうだな……こんな時は


 俺は左に身をよじらせて賊の剣を流す


「ぬぅぉ!?」


 前のめりになる賊

 剣を振り上げる俺


「はぁ!」


 俺は目の前にある賊の首を目掛けて剣を振り下ろす


 ブン!

 ザシュ!!


「がぁぁぁぁぁ!!」


 少し狙いが外れて、賊の首の付け根に剣がくいこんだ


「がっ! がぁ!」


 座り込んで首の付け根を押さえる賊

 俺はその賊の……


 ザシュ!!


 首を斬った




 初めて、俺は自分の手で人を殺した


 ・・・・・・・


 賊を殲滅した

 今は村の民の手当てや食糧の配給、それと壊された建物の簡単な修理を兵達にさせている


「…………」


 俺は木にもたれながら両手を見る

 洗ったから綺麗に見えるが……今でもヌルッとした血の感触が思い出せる

 それだけじゃない、人の肉……骨を断つ感触……

 いい気分じゃないな


「覚悟はしてたんだがな……」


 戦うことを選んだんだ、人を殺すことはわかってたのに

 てか、今までだって俺の指示で人が死んでるんだ

 自分の手で殺したかどうかの違いだ

 今更こうやって凹むな俺……


「坊っちゃん」

「……オルベリン」


 オルベリンが俺の前に立つ


「坊っちゃん、無理はしなくても良いのですぞ? 坊っちゃんは指示を出して下さればそれで」

「それは俺に安全な所でのほほんとしてろって言いたいのか?」

「そうではありませぬが……しかし、坊っちゃんは戦うのは向いてないかと」

「…………」


 オルベリンが俺を気遣ってくれてるのはわかる

 だけど……


「いや、それでも俺は戦う」

「何故ですかな? 坊っちゃんは指示を出す方が向いていると思いますが……」

「何て言うかな……後ろから指示を出すだけの領主より、皆と一緒に進める領主になりたいから……かな?」

「…………」


 オルベリンが俺を見る

 俺もオルベリンの目をジッと見る


「……なるほどわかりました、ですがもしもの事があっては堪りませんから、必ずワシか兵の側を離れないようにしてください」

「わかった」

 

 その後、民の手当てや配給が終ったのを確認してから、俺達は村を出発した



「あれがカイト様かぁ」


「救世主様だぁ」


「ありがたやありがたや」


 なんか民に感謝を越えて拝まれていたのだが……き、気にしない方がいいよな?


 それにしても救世主ね……侵略者の筈なのにそう呼ばれるとは……ケーミストの悪政がよくわかるな


 ・・・・・・・・・


 ーーーユリウス視点ーーー



 メールノ平原を目指して進軍している僕達

 道中で村を見付けたら食糧の配給や病気の者に薬を渡したりした


「こんなになってもケーミストは民を救おうとはしないんだな」


 僕は村を見渡す


「この様子だと……カイナスに奪われた村も……」


 僕は東を見る

 カイナスに奪われたガガルガ領の村がある方向を


「ユリウス様、この戦を制したら……奪われた村も取り戻せます」


 ティールが僕を励ます


「うん、そうだな……」


 さて、もうすぐメールノ平原だ……もう皆着いてるかもしれないな


 村を出発しようとして……


「んっ? ティール? 何処に行くんだ?」


 僕達はここから南西に向かうのに、ティールは北西に向かおうとした


「ユリウス様、ここから私は別行動です」

「別行動?」

「はい、カイト様の指示で」

「単独でか? 何人か兵を連れていけよ」

「いえ、これは少人数じゃないといけないんですよ、大丈夫です……必ず無事に果たして見せますから」

「…………」


 正直心配だ……でも、ティールがこう言うんだ


「わかった、気を付けろよ?」

「ユリウス様も……では」


 ティールは馬を走らせた


「僕達も行くぞ!!」


『はっ!!』


 さあ、メールノ平原はもうすぐだ!!



 ・・・・・・・・


 ーーーアルス視点ーーー


「これは……」

「…………」

「…………」


 南からメールノ平原を目指していたら……道中の村で酷いものを見つけた

 死体だ……ただの死体じゃない、首吊りのだ


 吊らされて……横に立て札がある

 立て札にはこう書いてる


『ケーミスト様に逆らった者はこうなる』


「見せしめか……おい! この人を降ろしてやれ!」

『はっ!!』


 兵達に死体を降ろすように言う


「……んっ? ルミル? レムレ? 」


 さっきから黙ってる2人を見る


『…………』


「どうした!? 真っ青だぞ!?」


 2人は真っ青な顔色だった


「い、いえ……だ、大丈夫です」


 ルミルが答える


「う、うう……」


 顔を押さえるレムレ


「大丈夫じゃないだろ! どうしたんだ? 僕には言えないのか?」


 僕は2人の前に立つ


「そ、その……」


 ルミルが言いにくそうにしていると


「お、お父さん……僕達のお父さんも見せしめにされたから……」


「っ!」


 2人の父親はケーミストに処刑された

 それは聞いていたが……まさか見せしめにもされていたとは……


 2人は今の死体を見て、父親の死を思い出したのかもしれない


「ルミル、レムレ……な、なんだ……少し休め!」


「で、ですが」


 ルミルが何かを言おうとしたが


「いいから休め! どうせ民の手当てとかで時間がかかるんだ! いいな?」


「は、はい……」


 2人を近くに設置されていた椅子に座らせて僕は兵に指示を出す


 ……ここまで酷いとは


「ケーミスト……」


 見たこと無いが……僕はケーミストを許さない

 友人を泣かせた罪は重いからな!!



 ・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


 野営をしながら進み、漸くメールノ平原にたどり着いた



「お、もう陣がある!」


 俺は望遠鏡を覗いて陣を見る

 うん、中の兵士はオーシャンの兵だな

 つまり俺達の陣だ


「行きましょう坊っちゃん」

「ああ」


 俺達は陣に入る


「カイト様! ご無事でしたか!」

「お疲れ様ですカイト様!」


「ああ、君達もお疲れ様」


 兵達に挨拶する


 馬から降りて奥に行く


 そこには……


「がふっ……」

「次やったら潰すからね!!」

「落ち着けって!」

「あ、カイト様、オルベリン様、お疲れ様です」


「なんだこの状況……」


 ボロボロのユリウス

 ユリウスを蹴ってるルミル

 そのルミルを押さえてるアルス

 俺に気付いて挨拶するレムレ


 カオスだな


「ふむ、レムレ、疲れてるところ悪いがどんな状況だこれは? 把握できないんだが……」


「ユリウスが転んでルミルの胸を揉んで、ルミルがユリウスをボコボコにしたところをアルス様が止めました」


 あらま……


「あ! 兄さん!」

「カイト様!」


 アルスとルミルが俺に気付く


「よう2人とも、取り敢えずルミル……ここまでボコボコにしたんだからそれまでにしておけ」

「わ、わかりました」


 俺はユリウスに近付く


「ユリウス、今の気分は?」

「天国から地獄です……」

「そうか……」


 うわ、弱ってる……

 うん、そっとしておこう……


「皆、無事にたどり着いたな」

「うん!」


 アルスが返事をする


「因みにたどり着いた順番は?」


「ユリウスが先にたどり着いて陣を作ってました、3時間くらい前に僕達も着きました」


「そっか、ユリウス……いつここに着いた?」

「き、昨日の夜です……」


 フラフラと立ち上がるユリウス


 昨日の夜か……


「カイナス軍の姿は見えたか?」

「少し遠いですが……大軍が布陣してるを朝、確認しました」


 大軍ねぇ……


「多分見えると思うので確認してはどうですか?」


 やっと調子が戻ったようだ


「そうだな」


 俺は陣を出て、最前線に行く


「おお、肉眼でも居るのは見えるな」


 遠いが、赤い集団が見える……カイナスの鎧が赤いからな


 望遠鏡を覗くと……うん、やはりカイナスの軍だ

 さてと……後は開戦までどれくらいの猶予があるか……まあいい



「オルベリン」

「はい」


 俺は後ろをついてきていたオルベリンを見る


「ここはもう大丈夫だ、ティールの援護を頼む」

「よろしいのですか?」

「ああ、わかってると思うがティールとお前の作戦が1番重要だからな?」

「ええ、ではワシも行きますか」


 オルベリンはそう言うと口笛を吹く

 するとオルベリンの馬がやって来た



「では坊っちゃん……果たして参ります」

「ああ、頼んだよ」


 俺はオルベリンを見送った


「さてと……」


 こっちもこっちで準備しないとな……










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ