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第83話 ゲルド帰還

 ーーーゲルド視点ーーー


 小生とモルスはゲルナルに帰還した


「さあさあさあさあ! 早く準備しろ!!」


 城に着くと忙しなく動く将『バルンス』が目に入る


「バルンス!」

「んっ? おお! はいはいはいはい!! ゲルド! 久し振り!!」


 バルンスが小生に駆け寄る


「状況を説明してもらえないか?」

「いいよいいよいいよ!! ケーミスト様の指示で全兵力をメールノ平原に布陣させる事になったよ!!」

「メールノ平原に……全兵力を?」


 防衛の兵は残さないのか?


「それそれそれそれ!! 防衛は残さないのか?

 って顔顔!! 皆思ったけど面倒だから黙ってる!! ゲルドが言う? アレに言う?」

「…………いくら何でも主をアレ呼ばわりするな」

「失敬失敬!! ケーミスト様は玉座にドカッと座って……めり込んでるから会ったら?」


 何故言い直した?


「そうさせてもらおう……モルス!」

「はっ!」

「バルンスの手伝いをしてやれ」

「任せてくれ義兄者!! さあバルンス殿!」

「助かる助かる!! じゃあじゃあじゃあ兵に指示を出してもらおうか!!」


 2人は歩いて行った

 さて、小生もケーミスト様に会うか


 ・・・・・・・・・・


 玉座の間に着く

 兵が扉を開く

 小生は中に入る


「ゲルド、参じました」


 ケーミスト様の座る玉座の前で膝をつく

 そして顔を上げる


「久し振りだなゲルド」

「……は、はっ! お久し振りです!」


 一瞬……我が目を疑った

 ケーミスト様が……めり込んでいるのだ……玉座に……


 いや、これは……ケーミスト様が更に肥えられて……玉座が窮屈になったようだ……

 飢饉状態だと言うのに……この方だけは肥えられて……

 小生が走り回ってる間も欲望のまま生きた証拠だ


「貴様がこの2年どうしていたかは知らんが、こうして呼び戻したのだ! 働いてもらおう!」

「畏まりました……それで、小生は何をすればよろしいのでしょうか?」


 小生はケーミスト様を見る


「そうだな……ふむ……」


 ケーミスト様は悩む……

 まさか、何も決めてなかったのか?


「ゲルドはんが戻ってきたって聞きましたで!!」


 グラドスがやって来た


「グラドス……」


 俺は視線をグラドスに向ける

 お前も少し太ってるな……いや、前よりは痩せたか?


「久し振りでんな! 元気そうで良かったで!」

「ああ、お前もな……」


 軽く挨拶をする

 そしてグラドスはケーミスト様を見る


「ケーミスト様! ゲルドはんにはゲルナルの防衛をやってもらいましょ!」


 防衛? 小生を防衛に?


「むっ? 防衛をか?」

「いくら総力をメールノ平原に集めるからって、首都をがら空きにするのはあきまへん! 僅かでも兵を残しまひょ! そして僅かな兵でも防衛出来るのはゲルドはんだけだと思いますん!」

「……ふむ……それもそうだな」

「それに……ゲルドはんに手柄をたてさせるのはケーミスト様も嫌でひょ?」

「ああ! グラドス、良くわかってるな!」


 高笑いするケーミスト様


 ……防衛……小生を防衛に……


「そうと決まれば準備を急ぎましょ! ほら、ゲルドはん!」

「あ、ああ……」


 いや、落ち込むな……防衛も立派な任務だ

 小生はグラドスと共に玉座の間を出る

 出る直前に振り返り、ケーミスト様を見る


「…………」


 ケーミスト様はワインを飲みながらチーズを食べていた

 ……この状況で……


 ・・・・・・・・・


 グラドスと共に歩く

 歩いているのだが……


「グラドス、何処に向かっている? 兵舎は反対側だろう?」

「ええからええから」


 先を行くグラドス……そして1つの部屋に着く


「ゲルドはん、中に入ってもらいまひょ」

「なに? 何故だ?」

「ええからええから!」

「ぬぉ!?」


 ドン! と突き飛ばされて部屋に入れられる


 小生が入室したのを確認したのか扉が閉まる

 扉側を見るとグラドスは居ない

 廊下に居るのか?


 ジャキ……


「…………」


 金属音が聞こえた

 正面に向きなおす


「ヒヒ、悪いねゲルド」


 部屋の奥、窓際にブルムンが立っていた

 そして小生の目の前には8人の兵が小生に槍を向けていた


「ブルムン……これはどういうことだ?」

「あー動くなよゲルド、動いたら問答無用で殺す……ヒヒヒ」


 剣を抜くか?

 いや、その前に兵の槍で串刺しになる

 一か八か部屋を飛び出すか?


「安心しろゲルド、お前の答え次第ではなにもしない」


「……何を答えろと?」


 小生はブルムンを睨む


「単純な事だ……ヒヒ、お前は『どっち側』だ?」


 ……どっち側

 何の話か直ぐに理解した


 そして察した


「ブルムン、貴様はカイナスを裏切ったのか?」

「……っ、そんな殺気を飛ばさないで欲しいな、怖い怖い……ヒヒ」


 剣を抜くブルムン


「ゲルド、答えろって……お前はどっちだ?」

 そして小生に向ける


 どっち……

 ケーミスト様の配下か

 オーシャン側か……


「…………」


 答えが出ない

 迷うことなくカイナス側……ケーミスト様だと言えない


「お前、迷ってるのか?」


「…………」


「…………」


 無言の小生とブルムン


「……お前達、もういい」

 ブルムンが剣を仕舞い、小生の横を通りすぎる

 兵達が槍を下ろす


「……小生を殺さないのか?」


 小生が聞くと


「お前がケーミストに忠誠を誓ったままなら殺したさ、お前が1番の脅威だからな……でも……ヒヒ、どっち付かずのお前なんて何の影響もないからな、全て終わるまでボーとしてろ……あ、自分の事をケーミストに報告してもいいぞ、自分は処刑されるが……もうカイト殿の策は止まらないからな……ヒヒヒ!」


 そう言ってブルムンは部屋を出た


 恐らくブルムンとグラドスは仲間だ

 グラドスもケーミスト様を裏切ったということだ


 ……小生は


「どっち付かずか……」


 ・・・・・・・・・


 翌日

 全ての準備が整った


 ケーミスト様の編成した軍は


 第1軍団


 大将 ブルムン 10,000

 副将 パーツ 5,000

 副将 『カーシウス』 5,000


 第2軍団


 大将 グラドス 10,000

 副将 クラフト 5,000

 副将 『ペンテリウス』 5,000


 第3軍団


 大将 ゴルース 20,000

 副将 『リード・ルーフ』 5,000

 副将 『マリアット』 5,000


 第4軍団


 大将 ケーミスト 40,000

 副将 バルンス 5,000

 副将 『ヤムカ』 5,000


 計120,000人の兵


 そして所持してる5つの都に1,000人の兵を配置し、将を1人ずつ残している


 小生とモルスはゲルナル担当だ

 ゴルースも参戦するのは予想外だ……これもブルムンの案らしい

 ということはカイト殿の策の1つなのだろう


 小生はそれをケーミスト様に伝えていない

 今も伝えるべきか悩んでいる


「行くぞ!! オーシャンの小僧に儂の力を見せてやるわぁ!!」


 行進する軍団


 ケーミスト様が馬車に乗る


「ケーミスト様!」


 小生は馬車に駆け寄る


「なんだゲルド! 貴様は出さんぞ!」

「い、いえ……」


 そんな事わかってる

 小生は……彼に聞きたいのだ


「1つ……質問をお許しください」

「なんだ?」


 馬車がまだ走らないからか、聞いてくれるようだ


「ケーミスト様、貴方様にとって『民』とは……『国』とはなんですか?」


 小生はケーミスト様を見る

 この答えによってはブルムン達の事を話そう


「そんなもの決まっておる! 『道具』だ! 民も! 国も! 儂の欲を満たすだけのな! わかりきったことを聞くな!!」


 馬車が走り出した


「…………」


 小生は見送ることしか出来なかった


 道具……彼はハッキリと言ったのだ


 必死に食糧を得ようと動く民を

 親に心配かけまいと我慢する子供を

 家族を失い、泣き叫んでる者を!!


「そうか……そうか……」


 そして、小生や軍の者達も道具なのだろう


「……ふふ、ふははは!」


 それを聞いてから何かが小生の中で崩れた

 思い出す今までの事を


 そうだ、彼が領主になってから1度も小生は笑ってなかった

 いつもいつも、苦しむ民に心の中で懺悔し、後悔して!

 何故……何故小生は従い続けたのか!


「義兄者……」

「なんだモルス?」


 モルスが小生の前に紙を差し出す


「ブルムン殿が……これを渡せと」

「…………」


 小生は紙を受け取り開く

 そこにはこう書かれていた


『時を待て』


 ……ブルムンは小生がこうなることを見越していたのか?

 思えば長い付き合いだ……


「待てか……訳がわからんが従おう……」


 何かあるのだろう……下手に動いて失敗するわけにはいかない



 もう……小生に迷いは無かった







 


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