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第81話 まじわる

 


 ……あれ?

 俺……どうしたんだっけ?


 確か……額を斬られて……

 あ、その後に気を失って……



 俺は目を開く


「う、うぉぉぉぉぉぉ!? なんだこれ!?」


 目を開いたら変な空間に居た


 真っ暗な空間

 なのに何か光ってるのが頭上を飛んでる……

 真っ暗なのに光ってるってなに? 意味わからん……


「あ、起きましたか?……いや起きたってのとは違うのかな?」


 後ろから声をかけられる


「!?」


 俺は振り返る


 そこには男が立っていた

 見知らぬ……いや、知りすぎた男が


「初めまして……で良いんでしょうかね? 高橋海人さん」

「カイト・オーシャン? お前……カイトか?」

「はい、カイト・オーシャンです」


 そこにはカイト・オーシャンが立っていた

 てか俺の姿が生前の姿に戻っている


「ここは何処だ? なんでお前がいる?」


 俺は真っ先に浮かんだことを聞く


「えっと、ここは貴方の中……っていうのかな? 精神世界って言うべきかな?」


 カイトもよく分からない様だ


「なんで私がここに居るのか……それも正直よく分からないんです……もしかしたら、神様とかが貴方と話す機会をくれたのかもしれませんね」


「俺と?」


「はい」


 そういうとカイトは俺に土下座する

 ……はい!?


「おまっ!? 何して!」

「皆を……オーシャンを救ってくれて、ありがとうございます!!」


 そして礼を言われた


「いや、それは……そうしないといけなかったからだし……礼を言われる事じゃないから! 頭を上げてくれ!」


 そういうことされるの苦手なんだよ!


「で、ですが謝罪もありまして……」

「謝罪?」

「その、私の勝手な願いで貴方を巻き込んでしまいましたので……海人さんには海人さんの人生があったのに……」

「それを言うならお前もだろ? カイト・オーシャンとしての輝かしい未来がお前には『私だとあのまま滅んでいました』あったかも……」


 遮るなよ……てかそんな後ろ向きに考えるなよ……


「人生どうなるかわからないだろ?」

「いいえ、私ではオーシャンは滅んでいました……そう確信してます」


 堂々と言うなよ

 こいつ、弱気なのか強気なのかわかんねえな


「……あ~話を変えよう……俺は今、どんな状態なんだ?」

「恐らく死にかけてます……」

「マジかよ……額斬られただけだぞ?」

「結構な大怪我だと思いますよ?」


 …………そういえばそうだな

 多分血を流しすぎてるんだな……え、かなり危ない状態か?


「安心してください海人さん、こうして貴方の意識がちゃんとあるって事は……蘇生に向かってるって事ですよ!」

「なんでそんなのがわかるんだよ?」

「だって、海人さんはドンドン形が戻ってきてますから! さっきまでぐにゃぐにゃした物体だったんですよ?」


 ぐにゃぐにゃした物体?

 なんだよそれ……俺そうなってたの?


「多分、もうすぐ意識が戻ると思います」

「……お前は?」

「えっ?」

「お前は戻りたくないのか?」


 今なら海人ではなくカイトが、カイト・オーシャンに戻れるかもしれないぞ?


「戻りたくないって言ったら嘘になりますね……アルスやミルム、レリスやオルベリン……会いたい人も話したい人も多いです」

「なら……」

「でも、海人さんの方が待ってる人が多いですよ? ほら!」


 カイトが指差す方向を見る


 そこには光る玉があった

 いつから有った? さっきまで無かったような……


 俺は玉に近付く


 玉の中には


「ティンク……」


 カイトの姿の俺とティンクが一緒にお茶を飲んでいる


 玉の中の映像が変わる


 ティンクと相乗りで馬を走らせた時

 ティンクと一緒に入浴した時

 ティンクと一緒に寝てる時


「彼女が想っているカイトは私ではありません、海人さんです」

「…………」

「それに、私では今のオーシャンを統治なんて絶対に無理ですからね……」

「……お前はどうなるんだ?」


 俺はカイトを見る


「わかりません、このまま消えるかもしれませんし……そのままかもしれませんし……ただ、貴方に伝えることは……」


 カイトは俺の手を取る

 俺の姿が海人からカイトになっていた


『皆と一緒に、幸せになってください』


 ・・・・・・・・・・


「っ!」


 ガバッ!


 俺は飛び起きる


「いっ!?」


 胸元に激痛が走る

 ……なんでこっち?


「……っぁ? ここは?」


 俺は周りを見渡す

 見覚えの無い部屋だ


「ここはパレミル平原の近くの『パレス村』って所の診療所ですよ。」


 後ろから声がした

 振り返ると女性が立っていた

 ……この人は


「『レイミル』……君が治療してくれたのか?」

「それがあたしの仕事ですから」


 レイミル……オーシャンに仕える医者だ

 軍医もやってくれている

 彼女のお蔭で助かった命は多い


「状況を話してくれないか? 俺が倒れてどうなった?」

「そうですね、先ずはカイト様が倒れてから10日経過してます」

「そんなにもか……」

「3日ほど前に心臓が止まった時は焦りましたね」

「……えっ? 止まったの?」

「はい、オルベリン様が心臓マッサージをしたら、再び動きましたが」


 オルベリン……君は命の恩人だ……


「胸元に打撲の痕がつきましたね、肋骨が折れる寸前でした」


 …………オルベリン……


「それくらい彼も必死だったのでしょうね」


「皆の様子は?」

「オルベリン様以外は都に帰還しました、今回の報告と……人手を集める為に」

「人手を?」

「はい、明日にはカイト様をオーシャンまで運ぶ話になってますから」

「ああ、そうだったのか?」

「はい……最悪御臨終でしたからね、城に連れていった方が良いと言ってました」

「……なんか……すまん」


 皆に心配かけたな


「こうしてはいられないな! 皆に……てかオルベリンに起きたことを伝えないと……とと!?」


 立ち上がろうとしたらふらついた


「はぁ」


 レイミルに支えられる


「気を付けてください、まだ起きたばかりなんですから……いつも通りに動けるのは、回復が早くても明日ですよ」

「ご、ごめん……」

「あたしが呼んできますから、寝ててください」

「はい、そうします」


 医者の言うことに従わないとな


 レイミルが部屋を出る


「…………」


『皆と一緒に、幸せになってください』


 カイト……本当のカイト・オーシャンは最後にそう言っていた

 穏やかな表情で……まるで小さな子をあやすように……


「幸せに……か……」


 なあ、カイト……お前は幸せだったのか?

 幸せになれたのか?



「もう、話せないのかね……」


 もしかして臨死体験したらまた会えるのか?

 ……いや、そんなホイホイと臨死体験なんてしたくないが

 

「はぁ……考えるのは止めるか」


 頭がこんがらがるしな


 ……そんな事より


「ティンク……」


 今は……なんか……うん、ティンクに会いたい


 ・・・・・・・・


 呼ばれたオルベリンに泣きながら抱き締められ

 骨がミシミシ言うのを耐えながら状況を聞く


 ブルムン達は食糧を持ってカイナスに帰還したらしい

 準備が出来たら連絡を送ってくるそうだ


「俺を殺そうとした兵は?」

「本当はなぶり殺してやりたかったのですが……」


 俺が倒れる前に許す的なことを言ったから、取り敢えずブルムン達に任せたそうだ


「坊っちゃん……何故あんなことを? あんな男は殺してしまっても構わないのでは?」

「何て言うか……怒れなかったんだよ……アイツ、ずっと怯えてたからさ……」

「坊っちゃん……甘過ぎますぞ、レリスが言うこともよくわかります」

「はいはい、俺はあまちゃんだよ……」

「はぁ……坊っちゃん、貴方の優しさは美徳でもありますが……時には非情に徹してくだされ、他の者に嘗められない為にも」

「……ああ、わかった……頑張ってみる」


 非情に……か……


 ・・・・・・・・


 それから翌日

 オーシャンから駆けつけたレルガや兵に運ばれてオーシャンに帰ろうとしたら


「目が覚めたのなら話は別です、暫くはこの村で休養してもらいます」


 とレイミルに止められた


「しかし、急いで戻らないと……」


 俺が言うと


「カイト様、貴方は一度死にかけたのですよ? 身体の血液もまだ不足してますし……そんな状態で長旅が出来ますか?」

「うっ……」

「貴方が今からやることは、いつもより多目に食事を取り! 1週間程、安静にして! 体調を整えるべきです!! その頃には額の糸も解けますから!」


 そう言われてパレス村で暫く過ごすことになった


 レルガはその事を伝えるために帰っていった

 折角来たのに悪いな……


「はぁ……あー!!」


 俺はベッドの上で枕に顔を埋める


「ティンクに会いたい……今、凄く会いたい!!」


 温もりが……温もりが欲しい!!


 ・・・・・・・・


 その後、レイミルの言うとおりに多目の食事……これいつもの3倍はあるよな!?


「うぇっぷ……」


 キツイキツイ!


 食べたら身体を拭かれて、眠る


 ……これ太らない?



 そんな心配は杞憂だった

 少し脂肪がついたが、一時的なものらしく……直ぐに元の体型に戻るそうだ

 まあ、帰ったら鍛練したりするし……うん


 こうやって1週間はあっという間過ぎて



「馬車に乗るのか俺は?」

「長旅ですからね、先ずは軽い運動からなので乗馬は禁止です」

「そ、そうか……」


 レイミル厳しい……


 オルベリンと再びやって来たレルガ

 それとレルガと一緒に来たレムレを加えた3人

 彼らをメインに兵達が編成され、俺はパレス村を出発した



「額の怪我は治りましたが、傷痕は残りますね」


 馬車に相乗りしてるレイミルが俺の顔を見て言う


「そっか……まあ仕方ないな……」


 油断していた俺の責任だ


「あ、そうだレイミル」

「なんですか?」

「軽い運動ってどれくらいまでだ?」

「そうですね、やはり歩く事からですね」

「……あのさ……ちょっと聞きにくいけど……」

「なんですか?」


 レイミルが首を傾げる


「いや、その……夫婦の営みって大丈夫か?」

「…………あー、やり方によります」


 目をそらされた


「コホン、まあよほど激しくしない限りは大丈夫なのでは?」


「そ、そっか……」


 ティンク……



 ・・・・・・・・・・・


 そしてオーシャンに到着した

 月はもう7月になっていた



「カイト様!」


 レリスが城門で迎えてくれる


「レリス、ただいま」

「もう大丈夫ですか? どこか痛いところは?」

「もう大丈夫だから、ほら」


 俺はクルリと一回転する


「それは良かった……ほんとうに」

「心配させたな、悪いな……」

「いえ、生きて戻られたので……もう大丈夫です」

「あ、あのさ……ティンクは?」

「ティンク様なら恐らく教会で祈られているかと……カイト様が出発してからずっと祈られてますよ……貴方様が負傷したと聞いてからはずっとです」

「ちょっと教会行ってくる」

「あ、カイト様!?」


 俺は教会に向かう

 城からはそんなに離れてないから数分で着くだろう


 ティンク……ティンク


 道を曲がり、人の群れをすり抜けて


 ティンク……ティンク!!


 教会が見える


 扉を開ける


 中には数人の民が座って祈っていた


 俺は中を見渡す

 探していた後ろ姿を見つける


「…………」


 俺は近付く

 声が聞こえてくる


「お願いします……カイトさんを……守ってください……お願いします……水龍様……」


 俺は彼女の左肩に手を置く


「!?」


 触られて驚いたのか彼女は振り返る

 そして俺の顔を見て


「えっ?……あっ、えっ?」


 驚く


「カ、カイト……さん?」

「ただいま、ティンク」


 俺は驚くティンクに微笑む

 ティンクが立ち上がり


「カイトさん!!」

「っと!」


 俺に抱きついた

 俺も彼女を抱き締める


「良かった……カイトさん……生きてる……ひっく」

「心配かけたな……ゴメン」


 俺はティンクの頭を撫でる


「良いんです……帰って来てくれましたから……」

「ティンク……」


 嬉しいことを……ここが教会じゃなかったらキスしまくるところだ


 ・・・・・・・


 ティンクと一緒に城に戻る

 城門にアルスやミルム、ルミルやユリウスが居た


「兄さん!!」

「お兄様!!」


 アルスとミルムが駆け寄る


「やぁ2人とも! ただいま!」

「もう大丈夫なの!?」

「痛い痛いじゃない!?」


 挨拶を返してくれよ……


「もう大丈夫だ、体調も良いしな」

「よ、良かった……」

「もう! 心配したんだからね!!」


 俺は2人の頭を撫でる

 

「ごめんな?」


 ・・・・・・・・


 他にも色んな奴等と話してから自室に戻る

 皆、凄く心配してたな……民も不安だったみたいだ

 演説をして民を安心させないとな


 でもそれは明日だ!


 ガチャ

 自室の扉を閉める

 

「カイトさん、取り敢えず休みましょう」


 そう言って振り返るティンクを……


「ティンク!」

「きゃ!?」


 ギュウ!


 俺は抱き締めた

 力強く……彼女を抱き締める


「カ、カカカカイトさん!?」

「悪いティンク……暫くこうさせてくれ」

「い、良いですけど……」


 俺はティンクの温もりを堪能する


 トクン、トクン


 彼女の心音が伝わる


「あ、あの……カイトさん……当たって……」

「言ったろティンク……『帰ったら続きをしようって』」

「は、はい!! ひゃあ!?」


 俺はティンクを抱き上げてベッドに寝かせる

 そして、俺は彼女に覆い被さる


「死にかけたからかな、ずっと君の事を考えていたんだ……」

「はい……」

「正直ムラムラしてる」

「わ、わかります……」


 赤くなるティンク


「その……良いかな?」


 一応聞いてみる

 

「はい!」


 ティンクは服の胸元を緩める

 彼女の成長途中の胸が僅かに見える


「ど、どうぞ! え、えっと……め、召し上がれ?」

「それ、ヤンユから教わったろ?」

「は、はい……こうしたら喜んでくれると」


 全くアイツは……良くやった!!

 

「そうだな、俺は嬉しいな……じゃあ遠慮なく」


 俺はティンクの顔に顔を近づける

 目を閉じるティンク


 そして俺とティンクはキスをする



 そして……

















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