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第7話 やるべきこと

 サルリラを将にしてから3ヶ月経過した



 サルリラは将として仕事に慣れてきたようだ

 最近は堂々としている



「もっと打ち込むっす!!気合いを入れるっす!」

『うぉぉぉぉぉ!!』


 兵達の士気が高い、うんうん、良いことだ

 決して、アイドルのコンサートで歓声をあげる観客みたいだなーなんて思ってはいないぞ?


「やはりここは……」

「いやしかしだな」


 ルーツとレリスは俺の提案を聞いて上手くいけるかの話し合いをしている

 提案というのは他国との友好を高めるために食料を送るという案だ

 勿論、送る相手はしっかりと考えている


 送る相手として検討しているのは『ベスス』だ

 大陸の南にある領地であり、兵力は4万

 領地も広めなのだが……この領は作物が育ちにくいのだ

 だから常に食料が不足しており、他の領から食料を輸入して何とかしている


 そんな所だからこそ食料はかなりの価値がある交渉材料だ

 しかも今は『リール』と争っていて食料を輸入する余裕がない

 このままでは食料が尽きるだろう……そこにオーシャン領の食料を支援物資として送ればどうなる


 最初は警戒されるかもしれないが俺の目的は友好を高めて同盟を結ぶことだ

 見返りを求めずに送り続ければベススも無下には出来ないだろう

 そして戦争が終わった所で同盟を申し込む

 ベススは安定した食料を

 オーシャンはベススとの協力関係を

 WinWinだ


「まあそう上手くいかないのが世の中だよな……」


 ベススがリールに負けるかもしれないし

 ベススがオーシャンに感謝するとも限らない


「しかし、やってみる価値はある……」


 俺は二人にそう提案してから二人はずっと考えてくれている

 俺の代わりにあーでもないこーでもないと考えてくれている


 いや本当に助かるよ


 そして二人に考えてもらってる間に俺は



「ぐはっ!!」


 空中を飛んでいた

 うん、ぶっ飛ばされた

 誰にって?


「坊っちゃん!まだ腰がひけてますぞ!!」


 オルベリンにだよ


 いや、鍛えてほしいとは言ったけどさ!


「ぐっ……うぉぉぉぉ!!」

「ふん!」


 ドゴォ!


「ぐぁぁぁぁぁ!!」


 何回もぶっ飛ばされるなんて思うかよ!


 因みにヘルドの方は順調に開拓が進んでいるそうだ


 今は新しい村を作ってる最中だ

 完成したら希望者を集って住んでもらおう


 ・・・・・・・


「あー……いてぇ」


 俺は部屋で休んでいた

 外は真っ暗だしな


「オルベリンの訓練嘗めてたわ……加減とか知らないのかよ……」


 いや、生きてるから手加減はしてくれてるのか?


「さて、ステータスは?」


 俺は自分のステータスを見る

 最初に見てからずっと鍛えているんだ、かなり伸びてるだろ?



 武力 12 F

 知性 15 F

 カリスマ 10 F

 内政 16 F


 ……あんまり伸びてないな……あんなに訓練してるんだからどれかはEまでいっててもよくない?


「まあ伸びてるから良いと考えるか」


 カイトでも頑張ればステータスは伸びる

 それがわかっただけいい……頑張ればオールDまでは寿命を迎えるまでいけるか?

 ……カイトの寿命わからねえ!!


「……そういえば俺の身体はどうなったんだ?」


 今、思い出した

 この身体はカイト・オーシャンの物だ

 なら高橋海人の身体はどうなってるんだ?


「…………」


 取り敢えず浮かんだのは


 1 身体は死体として元の世界にある

 俺の魂だけがここに来たんだ……魂の無い身体は死体となってると……


「死因は急性アルコール中毒あたりか?」

 笑えねえ

 


 2 身体は身体で日常を過ごしている

 ここに居る俺は高橋海人の魂の一部だけ入ってるって考えだ

 元の世界の俺はそんな事知らずに日常を生きているって事だな


「だったら誰にも迷惑はかけてないな」


 3 これは夢


「……無いな」


 来た直後に目の前で死んだ兵士の感触

 血の冷たくなる感触


 そしてオルベリンとの訓練で受けたこの痛み!


「今さら『夢でした!』は通じねえぞ?」


 ……止めた止めた!!

 俺は今ここで生きているんだ!

 元の世界の事を悩んでもどうしようもないんだ!


「今は元の世界の事よりこの世界の事だよな」


 明日からまた忙しいんだ……寝よう……



 ・・・・・・




 翌日


「以上がヘルド殿からの報告になります」


「わかった」


 俺は玉座に座ってヘルドの進行状況をレリスから聞いていた


 新しく出来た2つの村の1つが順調に人が増えてるとの事だ


「兵も増えてきたな」

「今日も18人ほど志願がありました」


 これで合計が約5700人だな……それくらいの人数だった筈だ


「どう思う?マールマールに勝てると思うか?」

「戦略や天候、時の運で結果は変わりますよ……確実とは言えません」

「だよな……ベススの件はどうだ?」

「偵察を出しています……その報告次第で交渉するか検討しましょう」

「仕事が早いな、助かる」

「これが私の仕事ですからね」


 レリスは微笑む


「城下町の状況は?」

「平穏そのものです、今月に入ってから犯罪が起きた報告も聞いてません」

「そうか」


 治安が良いことはいいな!!


「そういえばルーツはどうした?」

「ルーツ殿ならヘルド殿の滞在してる村に向かいました、何でも新しい作物の種を手にいれたそうで……試してみるそうですよ?」

「作物の種類が増えるのか、それは嬉しいな」


 場合によっては名物として売れる

 領が潤うな!



 こんな風に内政を中心に発展させて過ごした


 ・・・・・・


 半月後


「報告です!」


 玉座の間に兵が入ってきた


「どうした?ベススの件か?」


 俺が聞くと


「はい!ベススはリールと停戦しました!!食料不足で戦どころではない模様です!」

「よし!レリス!」

「はい、今すぐベススに使者を送れ!!」


「それともう1つ……」


「んっ?どうした?」


 レリスが兵に聞く


「カイナスとガガルガが戦を始めました!!」


「なに!?」


 俺はその報告を聞いて立ち上がる


 ……おいおい、これはチャンスじゃないのか?

 カイナスとガガルガ……この2つがお互いに潰しあってるなら漁夫の利を狙えるぞ……

 いや、それをしたら部下達から嫌われるか?

 それとは別にもう1つ出来ることがある

 カイナスとガガルガが争ってる間にマールマールを攻めるんだ!


 そうしたら戦の後にカイナスとガガルガに攻められる事は無いと考えていい

 だって両方とも疲弊してるからな!!オーシャンを攻める余裕なんて無いだろ?


「レリス!将と兵を集めろ!!ヘルドとルーツも呼び寄せろ!」

「はっ!」


 よしよし!予定より少し早いがいける……いけるぞ!!



「申し上げます!!」


「?」


 レリスが玉座の間を出ようとしたら別の兵が入ってきた


「どうした?」

 レリスが目の前の兵士に聞く


「カイナスから使者が来ました!」

「カイナスから?」


 チラリとレリスが俺を見る


「……通せ」


 俺は玉座に座る

 レリスが俺の側に戻る


「ではお通しします!」


 兵が玉座の間を出る


 ……少ししてから


「使者をお連れしました!!」


 そう言って1人の男を連れてきた


「お初にお目にかかります」


 男は膝をつく


「……楽にしてくれ」


「…………」


 男が顔をあげる

 ……この男は


「小生はカイナスの将、『ゲルド』と申します」

「ほぉ、ゲルド……」


 ゲルドと言えばカイナスのNo.2だ

 ステータスの平均はBと優秀な将だ

 これほどの男を使者にするとは……なんのつもりだ?


「何用で参った?」


 レリスが聞く


「小生はオーシャン領主『カイト・オーシャン』様に援軍の要請に参りました」


「援軍?」


 レリスが首をかしげる


「我が領、カイナスはガガルガと開戦しました、オーシャン領にも助力をしてほしいのです」


「……」


 レリスが俺を見る


「ゲルド殿、我が領も余裕があるわけではないのだが?」


 俺が言う


「承知しております……しかし、貴方は5千の兵力でパストーレの3万の兵を撃退しました……それほどの軍でしたら僅かの兵でも構いません!」


 験担ぎか?

 

「…………少し待ってもらおう」


 俺は考える


 このまま援軍の要請を拒否すればカイナスとガガルガは勝手に潰しあう

 弱った所を叩くのも容易い

 …………しかしカイナスに援軍を送れば?

 ガガルガは兵が多いだけの領だ、だが簡単に全部の領土を奪えはしないだろう……


 …………


「条件が2つある」

「条件ですか?」


 俺はゲルドを見る


「1つは此度の戦で我らの軍が活躍したら領土を少し譲ってもらおう……村1つ分だ」

「っ!」


 ゲルドの顔が強張る


「どうしたゲルド殿?戦に勝てばカイナスは多量な領土を手に入れる、1つくらい軽いものでは?」

「……そうですね…」


「そしてもう1つ、戦が終わった後、我らに攻めこまない事を約束してもらおう……援軍を出して疲弊した所を攻められたくは無いのでね」

「そんな事はしません!」

「悪いがそれを信用するわけにはいかない、私には余裕が無いのでね」


「………っ!」


 ゲルドの目に殺気が込められる……殺る気か?


「……わかりました、主に伝えた後に報告させて頂きます」

「あぁ、良い返事を期待している」

「では失礼します」


 ゲルドが玉座の間を出ていった



「カイト様……あんな無茶苦茶な条件は……」

「そこまで無茶苦茶か?友好を高めた訳でもない相手にいきなり援軍を要請してきたんだ……これくらいはしてもらわないとな」


 てか援軍なんか無くてもカイナスならガガルガに勝てるだろうに……時間はかかるだろうが


「レリス、ヘルドとルーツを呼ぶのは中止だ」

「はっ!」

「それとオルベリンに準備をしておくように言っておいてくれ」

「オルベリン殿にですか?」

「あぁ、もしカイナスが条件を飲んだらオルベリンと3千の兵を援軍として送ろう」


 オルベリンなら活躍してきてくれるだろう


「畏まりました」


 レリスが玉座の間を出た



「さて……ベススとの交渉とカイナスへの援軍……の予定」


 またまた忙しくなってきたな


 ・・・・・・


 三日後、カイナスが条件を飲むとの返事をゲルドが伝えてきた



「オルベリン……任せたぞ?」

「お任せを坊っちゃん、このオルベリンの武をガガルガの連中に見せてやりましょう!」



 オルベリンと3千の兵がカイナスに向かった



「…………」


 俺はオルベリン達が見えなくなるまで見送ってから城に戻った


 戦はオルベリンに任せた


 俺はレリスと一緒にベススとの交渉を成功させないとな















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