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第76話 ふたりの気持ち

 夜……


 俺はティンクに想いを伝える

 そう……決めたのだが……


「よいしょ、よいしょ」

「…………」


 どうしてこうなった?


 今、俺はティンクと一緒に風呂に入っている


 少し前の出来事だ


 ・・・・・・・


『寝る前に風呂に入るかな……』


 食事等を終わらせて夜になったから俺は浴場に向かう


 因みに浴場は自室と同じ20階にあり……なんと俺とティンク専用らしい


 ルスーンが

『夫婦仲を良好に保つ為にも、ふれあいは大事ですからね』

 と言っていた


 だから自室の真向かいに浴場がある


 俺は浴場の扉を開けて入る

 そして服を脱いで浴室に行こうと扉を開けると


『きゃ! あ、カイトさん!』


 ティンクが入っていた


『わ、悪い!』


 俺は戻ろうと振り返ると


 ギュウ

 左手を掴まれる


『あ、あの、い、一緒に入りませんか?』


 ・・・・・・・・


 その誘惑に負けてこうなったんだな……


「お湯を流しますね?」

「あ、ああ、ありがとう」


 背中にお湯を流される

 前は自分で洗った


 しかし困った……

 俺はティンクが居ると思わなかったからタオルを巻いたりしてない

 ティンクもタオルを巻いてなかった


 つまりお互いに隠してないのだ……これは……マズイ


「…………」


 俺は視線がいかないように

 汚れたバベルの塔が直立不動しないように意識を他の事に向けている


 湯船に浸かりながら……


『…………』


 俺とティンクはお互いに無言だ……


 き、気まずい……


「あ、あの、カイトさん」

「ん? 何?」


 ティンクに呼ばれたから返事をする

 視線は動かさない……見たらアウトな気がするから


「い、いえ……何でもないです」

「?」


 ・・・・・・・・


 ーーーティンク視点ーーー


 カイトさんと一緒に入浴を終えて部屋で休みます


「…………」


 今日こそ、わたしを避けてる理由を聞いてみよう

 そう思って湯船に浸かってる時に話しかけましたが


『ん? 何?』


 カイトさんはわたしを見ようとはしません

 いつもなら眼を合わせてから話していたのに……

 や、やっぱり嫌われてしまったのでしょうか……


 カイトさんに嫌われた……

 そう考えるだけで身体が震える


 怖い……

 愛してる人に嫌われる……

 それは父からの折檻よりも、暗い空間よりも……

 どんな事よりも恐ろしい……


 どうしよう……どうしよう……どうしよう……


 目の前がぼやけてくる……


 わたしは……わたしは……


「ティンク!?」

「ふぇ?」


 あれ? カイトさん?


「どうしたんだ!? なんで泣いてるんだ!?」

 心配そうにわたしに言うカイトさん


 あ、わたし……泣いてたんだ……


 ・・・・・・・・・・


 ーーーカイト視点ーーー


 服を着て、部屋に戻って

 いつティンクに話をするか、どう切り出すか……

 顔を伏せながら悩んでいたら


「ぐす……」


「んっ?」


 顔を上げてティンクを見たらティンクが泣いていた


「ティンク!?」


 俺はティンクの側に寄る


「ふぇ?」


 ティンクが泣きながら俺を見る


「どうしたんだ!? なんで泣いてるんだ!?」


 どこか痛いのか!? 俺の知らないところで誰かに苛められたのか!?


「あ……わたし……」


 ティンクが自分の右頬を触り……右手についた涙を見る

 ……自分が泣いてることに気付いてなかったのか?


「どうしたんだティンク? 何か悩みがあるのか?」


 あるなら言ってほしい、ティンクの泣いてる姿なんて見たくない

 彼女には笑っていてほしいから……


「悩み……その、カイトさん……」

「どうした?」

「わたしの事……嫌いになりましたか?」


 ぶわっと涙を溢れさせながらティンクが言った


 ……えっ?

 俺が? ティンクを?


「なに言ってるんだ? 俺がティンクを嫌いになるわけ無いだろ?」


 寧ろ逆だから!


「では、何故わたしを避けるんですか?」

「えっ? 避けてる?」


 …………そう言えば……最近ティンクの顔をマトモに見てなかった

 いつもは、ドキドキしてしまうから顔をそむけていたような……

 あれ、これって避けてるんじゃないのか?


「わたしの事を嫌いになられたのなら、言ってください……わたしは……それならわたしは……」

「ティンク!」

「!?」


 俺はティンクを抱き締めて、ティンクの言葉を遮る

 それ以上は言わせたくない


「違うんだ! 避けてるつもりはなくって! 嫌いになったわけでもなくて!!」


 ああ! 言葉がまとまらない!!


「君を傷つけてしまって! 俺は……ああもう! ごめん!!」


 一旦離して頭を下げる


「あ、えっ?」


 ティンクは状況をのみ込めてない

 俺もテンパってる

 ただ、今、俺の思いを……想いを全て言わないと後悔する

 それだけは理解していた


「ティンク! 落ち着いて聞いてくれ!」

 俺は頭を上げて、ティンクの両肩を掴む


「は、はい!!」


 ティンクが俺の眼を見て返事をする


「俺は、君が好きだ! 愛している!!」

「!?」


 ティンク顔が真っ赤になる

 多分俺も真っ赤だ、顔が……頭が……熱い


「最近避けてしまっていたのは! 君への想いを自覚して! て、照れていただけだ! 心臓はバクバクいうし! 顔は熱くなるし! ところ構わず君を抱き締めたくなるから抑えていただけで! だから……その……照れ隠しなんだよ!!」


「ほ、本当……ですか?」


「こんなことで嘘をつけるほど、俺は器用じゃない!」

「じゃ、じゃあ……わたしは……嫌われては……」

「ない!」


 俺が断言すると


「よ、良かったぁ……」


 ティンクは俺の胸に倒れこむ

 俺はティンクを抱き締める


「その、色々と不安にさせて……ごめん……許してくれ」

「…………」


 ティンクが俺の腕から抜ける


「いいえ、許しません! わたし凄く不安だったんですから!」

「うっ……」

「だから……キスしてください、それで許します♪」


 ティンクはいつもの様にキスを求めた


「ああ、勿論!」


 俺はティンクを抱き締めながらキスをする

 頬でも額でもない、唇に


『…………』


 触れるだけのキスではなく

 深い……深い……キスをする


 ・・・・・・・・・


 何秒経った?

 いや、何分か?

 何時間は無いな


 ただ長く、永く、キスをしていた


 唇が離れる


「ふぁ……なんて言いますか……キスってこんなに幸福感に満たされるんですね」


 照れくさそうに話すティンク


「そ、そうだな」


 俺も答える


「あ、あの……カイトさん……」


「んっ?」


 ティンクが赤くなりながら俺を見る


「その、あの……か、硬いのが……当たってます」

「……あっ」


 今、俺はティンクを抱き締めている

 ティンクの温もり、ティンクの香り

 そしてさっきのキス

 うん……何も感じない方がおかしいよね

 俺の汚れたバベルの塔が直立不動していた


 うん、ティンクのお腹辺りに当たってるね

 普通に存在がバレるね


「わ、悪い!」


 だからって当てられるのは不快だろう

 俺はティンクを離す


「…………」


 ティンクは赤くなっている


 やっちまったな……


「あ、あの……カイトさん……その、わたしで……そうなったんですよね?」

「ま、まあな……」

「えっと……その……い、いいですよ? その……わたしを……」

「っ!?」


 えっ? 今、いいって?


「ほ、本当に良いのか?」


 俺はティンクに聞く


「は、はい!」


「でも、その……抵抗はないのか? 目の前で見せられて……」


 ティンクは目の前で両親の行為を見せられてる

 現代ならトラウマになったりする問題行為だ


「その……不安ではありますけど……それ以上に、カイトさんに抱かれたいんです……わたしだけを見てほしいんです……い、言わせないでください!」


 ティンクは真っ赤になって顔をそむける


「ティンク……」

「あ……」


 俺はティンクを抱き締めて……支えながらティンクを押し倒す


 俺の理性はまだ

『待て、待て、まだだ! まだ慌てる時じゃない』

 っと俺の本能を抑えている


「ティンク、初めてだからうまく出来るかわからないが……」

「は、はい、だ、大丈夫です! わたしも初めてですから!」

「どっちも初めてだな! 痛くしたらゴメン」

「カイトさんが喜んでくれるなら、痛くても平気です」


 出来る限り優しくしよう……


「カイトさん……」

「んっ?」


 ティンクが俺を呼ぶ


「キスして下さい……」

「ああ……」


 俺はティンクとキスをする

 繋がって繋がって……


 唇を離す


 呼吸が乱れているティンク

 俺はティンクの服に手をかけて……ティンクの服を脱がせ

『カイト様! 大変です!!』


 ドンドンと扉が叩かれる


 聞き覚えはあまりない……恐らく兵士の誰かだろう


 てかちょっと待ってよ!

 今から俺はティンクと交わるところだったんだぞ?

 雰囲気にのまれて、勢いに任せたところもあるけどさ!

 俺はティンクを抱きたかったんだよ!

 愛し合いたかったんだよ!


 くそっ! くだらないことだったら怒るからな!


「どうした!」


 俺は扉の外に居る兵士に大声で返事をする


『カイナスがこの都に向けて進軍しています!』


「…………」


 カイナスが?


「兵数はわかるか?」

『5万との事です!』


 大軍だな……

 くっそ! ケーミストめ! 邪魔をしやがって!!


「……ティンク」

「あ、だ、大丈夫です! わたしの事は気にしないで下さい!」


 赤くなりながらも微笑むティンク

 残念そうにしてるように見えるのは気のせい……じゃないよな


「…………今すぐ兵長以上の者達を玉座の間に集めてくれ!」

『はっ!』


 兵士が走り去る音が聞こえた



「はぁ……ティンク」

「はい……んゆ!?」


 俺はティンクにキスをする

 1分

 2分


 最初は驚いていたティンクも、求める俺に答えてくれる


 …………


 唇を離す


「はぁ、はぁ……帰ったら……今度こそ続きをしよう」

「ひゃ……ひゃい……」


 俺は服を着替える……

 寝間着からいつもの正装に


 そして、部屋を出て玉座の間に向かった














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